自動運転車両の試乗会で、スバルが自動運転車を世界初公開しました。運転支援機能「アイサイト」で世界をリードする一方で、自動運転研究に関する発表があまり見られなかったスバルになにがあったのでしょうか。

「アイサイト」で世界の高度運転支援システム(ADAS)をリードしてきたスバル

 2022年9月29日と30日、東京都の臨海エリアで自動運転車両の試乗会が開催されました。

 2014年より産学官連携のオールジャパン体制で研究を進めてきた実証実験プロジェクトの集大成となるもので、自動車メーカーのみならず部品メーカー、大学などが様々な試乗車や展示車を出展しました。

 そのなかでも特に目をひいたのが、世界初公開されたスバルの「自動運転実験車両」です。

 スバルが自動運転車の存在を認めて、実験車両を世界初公開しました。

 スバルといえば「水平対向エンジン」「シンメトリカルAWD」、そして「アイサイト」が特徴のブランドとして知られています。

 なかでもアイサイトは、最近はどこのメーカーも標準装備が当たり前になってきた高度運転支援システム(ADAS)の分野で、他の自動車メーカーを常にリードしてきた存在です。

 ただしスバルはこれまで、「アイサイトは、あくまでも運転支援であり、自動運転とは考え方が違う」という姿勢を貫いてきました。

 そのため、技術に関する事業計画や新車の記者発表、さらにコロナ禍になってから実施されたアイサイト開発者と報道陣とのオンライン意見交換会などの場で公開した資料のなかでも、自動運転車という具体的な表記は使っていません。

 また、自動運転車の実験車両が存在することを対外的に詳しく発表したこともありませんでした。

 では、なぜスバルはこのタイミングで自動運転車を公開したのでしょうか。

 その実態について、スバル関係者から詳しく話を聞きました。

 まずは、自動運転車が公開された場所についてですが、東京お台場の特設会場で行われた「SIP-adus試乗会」です。

 この“SIP-adus”とは、戦略的イノベーション創造プログラム(略称「SIP」)の、オートメイテッド・ドライビング・フォー・ユニバーサル・サービス(略称「adus」)を指します。

 国が、関係省庁や自動車メーカーなどオールジャパン体制で、様々な分野の研究開発を短期集中的に行うSIPの枠組みに、国が自動運転を選定したのです。

 SIP第一期は2014年6月から2019年3月まで実施され、またSIP第二期は第一期を1年重複して2018年4月から2023年3月まで進められているところです。

 スバルもSIPに参加していて、例えばお台場で実施中の信号機の情報(信号機の色と、色が変わるまでの時間)をクルマに送信するシステムと、車載カメラで信号機の色を把握するシステムとの違いを検証する実証などを行っていたといいます。

 その際に使用していたのが今回公開された自動運転車で、そのほかにもスバルの開発本部がある群馬県の市街地や高速道路、そして北海道にあるスバルのテストコースなどで自動運転車を実走させた研究開発がこれまで着々と進んでいたのです。

 実証試験中は今回公開したようなカラーリングはしていませんので、周囲に気づかれなかったのかもしれません。

 今回、SIP-adusが9年間の活動を終了するのを機に、報道陣向け試乗会の場で自動運転車の存在を明らかにすることになり、目立つカラーリングを施したのです。

「アイサイト」と「自動運転」は似ているようで目的が違う!?

 SIP-adusの自動運転実験車両をじっくり見てみましょう。

 ベース車両はスバルのコンパクトクロスオーバーSUV「XV」。特徴はカメラの数です。

 画像認識できる範囲が前方120度に対応するステレオカメラ、同じく前方に60度の単眼カメラ、さらに側方用に運転席と助手席の、いわゆる三角窓の横とサイドミラーの下部にそれぞれ1つの単眼カメラ、そして後方に単眼カメラがあり、合計8個の画像認識用カメラで全包囲に対応しています。

 さらに、多くの自動運転車が採用している、レーザー照射で周囲の物体の距離や形状を把握するLiDAR(ライダー)をルーフ前方に装着しているのが特徴です。

 こうしたデバイスを使う「自動運転車システム」について、スバルが提示した資料には、次のように表現されています。

「車両認識に加えて、歩行者・自転車、信号灯色を認識するため、車両側ではDNN(ディープ・ニューラル・ネットワーク)を用いたマルチカメラでの周囲認識を開発しました」

 DNNでは、車載コンピュータのシステムに対して、「教師データ」と呼ぶ大量のデータを様々な階層で覚えさせていきます。教師データとは、クルマの場合は、クルマの形を座標で示すことなどです。

 教師データからシステムが機械学習することで、これから先に起こるであろう現象を予想するというプロセスを踏みます。

 こうした自動運転車に対して、量産型のアイサイトは、カメラを通じて得たデータから画像を認識し、走行中にどのようなリスクがあるのかをドライバーに知らせ、またアクセル、ブレーキ、ハンドルなどの操作系を制御するものです。

 アイサイトは自車の周辺(特に前方)で起こっていることをできるだけ早く把握して、ドライバーとクルマの安全を守ることが目的です。

 つまり、これから先に起こるであろうことを予測して走行するという自動運転車とは、技術的には近い関係にあるものの、根本的な目的が違うと考えるべきでしょう。

 その上で、この自動運転車の自動運転レベルについて、スバルは「基本的には明示していないが、レベル2以上という表現が妥当」と説明します。

 レベル2とは、運転の主体がドライバーで、さらに高度なレベル3になると運転の主体がシステムに移る、という解釈が一般的です。

 レベル2までが高度運転支援システム、そしてレベル3以上が自動運転という区分けで説明する場合もあります。

 ただ、スバルがいう「レベル2以上」とはそうした意味だけではなく、「既存のアイサイトとは別の発想」というニュアンスが含まれているように感じます。

 なぜならば、現行の次世代アイサイト(最新版「アイサイトX」を含む)は、れっきとした高性能なレベル2なのですから。

 また、スバルを含めて、他の自動車メーカー、ベンチャー、海外の部品メーカー、そして大学などの自動運転実証チームも、仮にレベル3を超えたレベル4相当の技術を持っていても、SIP-adusでのお台場実証では運転席に技術者がいる状態でのレベル2での走行という解釈になっています。

 このほか、スバルはすでに発表している、自社サーバを使った車車間通信によって、自動運転車、またはアイサイト装着車が高速の合流地点でスムーズに走行できる実験についてもパネルなどで紹介しました。

 今後、量産型アイサイトが凄い進化も見せるのかもしれない…。

 そんな期待が高まる取材でした。