スズキは2023年1月26日に「2030年度に向けた成長戦略説明会」をおこないました。そこでは今後の電動化戦略が語られましたが、欧州に投入予定のBEVラインナップシルエットに「ジムニー」らしきものが発見されました。
あれ? これジムニーじゃない? 謎のシルエットに注目!
なにかと話題のスズキ「ジムニー」。2023年1月12日にインドでは待望だった「ジムニー5ドア」が世界初公開されました。
その2週間後となる1月26日にはジムニーのEV化を示唆する発表がありましたが、どのような内容だったのでしょうか。
2022年末辺りから、スズキのHEV(ハイブリッド車)やBEV(電気自動車)に関する話題が活発になっています。
というのも、現状のスズキ市販車ではマイルドハイブリッド車がメインで、フルハイブリッド(ストロング式)はソリオシリーズしかなく、クルマの電動化の波に乗り切れていないイメージがありました。
そんななか、同社は2023年1月26日におこなわれた説明会で「2030年までの製品計画」を発表。
そこで、2030年度までに6台のBEVを日本に投入するとしており、2023年度中に第一弾モデルを展開。スズキが作成した発売予定のBEVは、日本向けとして「ワゴンRシリーズ」や「エスクード」、「ハスラー」、「エブリイ」と見られるシルエットが写されていました。
さらに欧州では2030年度までに5台のBEVを投入するとしており、2024年度中に第一弾モデルを展開するとしており、欧州向けの資料では「ワゴンR」や「グランドビターラ」のほか、SUVらしきシルエットもあり、なかでも注目なのは「ジムニー」と分かるシルエットが入っていたことです。
ジムニーに関しては、前述のとおりジムニー5ドアがインドで発表されています。
しかしその前に、一部メディアが「HEVがラインナップされるのでは?」と報じていましたが、AUTO EXPO2023のカンファレンスでは、それに触れられることはありませんでした。
しかしその直後ともいえるタイミングで、まさかのジムニーの電動化の予告です。
ここでおさらいですが、ジムニーは世界でもすっかり希少となった本格派のオフロード四輪駆動車で、ラダーフレーム構造にリジッドアクスル式サスペンション、サブトランスファー付きパートタイム4WDという伝統的なメカニズムを持っています。
高い悪路走破性や耐久性を確保するため、日本では200万円未満という車両価格ながら、手の込んだメカニズムが採用されています。
しかし、堅牢ながら重量のある構造、サブトランスファー付き4WDというメカが、ハイブリッドシステムとのマッチングを難しくしているのも確かです。
仮に同社が現在持っているマイルドハイブリッドシステムを使うとしても、4WDローでの制御はどうするのかなど、さまざまな疑問が浮かびます。
では、BEVであればどうなのでしょうか。
完全な電動車であれば、エンジンとモーターの組み合わせ(制御)を考慮する必要から解放されます。
またラダーフレーム周辺のスペースを上手く使えば、大容量バッテリーの搭載も不可能ではありません。
ジムニーの伝統となる駆動方式はどうなるのか?
気になるのは駆動方式ですが、現状のような4WD、しかもサブトランスファー付きというわけにはいかないかもしれません。
EVの4WDといえば日産「アリア」が搭載する「e-4ORCE」が思い浮かびます。同システムは前後駆動輪軸上にそれぞれのモーターを持つ2モーター方式ですが、ジムニーに採用するとなるとミスマッチな気がします。
もちろん、ジムニーの前後デフの位置にモーターを置けば可能かもしれませんが、その場合は制御系が複雑化し、重量も増加します。
漏れ伝わってきた話によると、ジムニーEVはバッテリー容量を25kWh以上、航続距離でWLTC300kmを目指しているといわれており、そうなるとますますラダーフレーム構造の同車では軽量化とバッテリーの配置が重要になるはずです。
現状のジムニーの駆動系、そして燃料タンクの位置を上手く使い、より実用的な(航続距離が長い)EVレイアウトにしてくるのではないかというのが筆者の予想です。
この場合、後輪駆動ベースの4WDではなく、1モーターで前輪駆動というのが現実的です。
ちなみに、ジムニーHEVの可能性もまだないとはいえません。
そもそもこの話は、海外メディアがスズキ・オーストラリアの上層部におこなったインタビューの中から出てきたもので「2024年中にオーストラリアでジムニー5ドアとHEVの発売がある」という発言によるものです。
さまざまな制御の問題は別として、もしHEV化が実現すれば、日本でもヒット車になることは間違いありません。ただし、この話はHEVとBEVの誤認という可能性もあります。
蛇足ではありますが、2023年から2024年にかけて、世界の市場にスズキがEVを発売した場合、ジムニーの長納期が縮まる可能性があります。
現状の納期の長さは、CAFE規制による生産台数調整があるともいわれているからです。
となると、オフロードをガンガン走りたいというジムニーユーザーにも、電動化はメリットがあるわけです。
いずれにせよ、にわかに騒がしくなってきたジムニー。まずは、一刻も早い日本の5ドアの発売に期待したいところです。