手軽にクルマをカスタムできるとあって、ステッカーを貼って自分好みに仕上げるのは楽しいものですが、貼る場所によっては車検に通らなくなることがあります。ステッカーを貼るときは、どのようなことに注意する必要があるのでしょうか。

手軽な「ステッカーカスタム」で注意すべきこととは?

 愛車を自分好みにしたいとき、「ステッカー」を貼るのが手軽なカスタムとして人気です。
 
 しかし、クルマにはステッカーなどを貼ってはいけない場所があるというのです。一体どういうことなのでしょうか。

 国土交通省が定める「道路運送車両法」の保安基準で、フロントウインドウと運転席・助手席のサイドウインドウにはステッカー類を貼ってはいけないと明記されています。

 一方、「道路運送車両3法施行規則」の第37条の3(検査標章)では、「自動車検査登録制度(車検)を通過した車両は、『検査標章』を前面ガラスの内側に前方から見やすいように表示すること」という規約があります。

「(車検の)検査標章」とは、ルームミラーの裏あたりに貼られている四角いステッカーです。もうひとつ、フロントウインドウの左上にステッカーが貼られていることもあり、こちらは12ヶ月点検または24ヶ月点検の法定点検が完了したことを表示しているものです。

 では、検査標章を剥がしてしまうとどうなるのでしょうか。

 この場合、いわゆる「非車検」状態となり、公道での走行ができなくなります。違反すれば50万円以下の罰金、さらに違反点数6点が加算され1発免停、前歴がなければ30日間の免停、最悪の場合は6ヶ月の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性もあります。

 これらを考慮すると、ステッカーを貼っていいのは「リアウインドウ」と「ボディ」ということになります。またヘッドライトやテールライト、ウインカーなどの灯火類に被ってしまうのもNGとなります。

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 可視光線透過率70%以上確保でき、かつ視界を妨げないステッカー類やカーフィルムはフロントガラスに装着可能とされています。

 また最近では、例外的に「盗難防止用」のステッカー(警告や盗難防止システム装備の表示など)は、前部(運転席&助手席)のサイドウインドウ下部から100mm以下、または開口部後方から125mm以下の位置に貼ることができるとされています。

ステッカーカスタムはメリット以上にデメリットが多い?

 では、ステッカーの装着によるメリット・デメリットはどんなことが考えられるでしょうか。都内の中古車販売店スタッフのK店長に聞いてみました。

「一番のメリットは、手軽にできるカスタムであることです。また手軽なうえに費用も安価で、最近では市販品だけでなく、自分でデザインできるアプリなどもあります」

 たとえば、ある映画に出ていたクルマにステッカーが貼ってあったから同じように貼りたいという場合や、装着したアフターパーツのメーカーロゴのステッカーを貼るなど、イメチェンして楽しめるということがメリットでしょう。

 一方でデメリットはいくつか想定されます。

「法的に違法になるようなステッカーはNGです。またステッカーを貼ってカッコ良いと思うかは主観の問題でもあり、個人の趣味性が下取り査定などでマイナス評価になる可能性があります。

 そして最大のデメリットは、剥がすときに何かしらボディの塗装面を痛めてしまう危険性があることです。

 綺麗に剥がせたとしても、紫外線や経年によってボディ全体と色の差が出てしまうことも多々あり、ステッカーを貼る際は注意が必要です」(中古車店 K店長)

 下取り査定で評価が下がることがあるといいますが、これはどういうことなのでしょうか。

「基本的に中古車は、次のユーザーに販売することを目的に下取りするわけです。そのため、できれば純正に近い状態であるほど下取りしやすいといえます。

 特に大きなステッカーなどは個人の嗜好による部分が大きいので、純正ステッカー類以外は査定する前に剥がしておくほうが、査定に影響が出にくいでしょう」(中古車店 K店長)

 確かに不必要なステッカーは、次のユーザーにとっては無用の長物以外の何者でもありません。

 ただし、車種や装着されたカスタムパーツメーカーのステッカーなどがあっても査定に影響しないこともあるほか、たとえばスズキ「ジムニー」のようにキャンパー仕様が大流行している車種などは、社外品でもキャンパー風サイドデカール装着などがプラス査定に働くこともあるようです。

「同様に、ラッピングなども下取り前に純正ボディカラーに戻しておいたほうが無難といわれています。

 社外品のホイールやタイヤなどと違い、ステッカーやラッピングなどはプラス査定になりにくいので注意が必要です」(中古車店 K店長)

 結論としては、ステッカーを楽しむのはあくまで個人の趣味による部分が大きいといえます。

 そして十分楽しんだあとは剥がす必要がありますが、うまく剥がすにはコツがいるようです。

「ステッカーは裏面の粘着剤が強力です。ドライヤーなどを使って粘着剤を温めることで剥がしやすくなります。

 ポイントとしては一気にではなく、塗装面を傷めないように慎重に根気強くゆっくり剥がしていくことです。

 最近ではさまざまな剥がし剤が登場し、100円ショップなどでも販売されています。そういった専用の溶剤を使用すると作業効率は一気に上がります。

 ただしアルコール溶剤などが主成分のものは塗装面やコーティングなども痛めてしまいますので、まずは見えない箇所などで影響を確認してから使用することをお勧めします」(中古車店 K店長)

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 ステッカーはデザイン面以外にはメリットが少ないといえますが、個人の判断と自己責任であることを理解したうえで、ステッカーカスタムをおこなうようにしましょう。