かつてはカスタムの定番だった「ステアリング(ハンドル)交換」ですが、近年は交換する人が減少してしまいました。なぜ人気は下火になってしまったのでしょうか。ステアリング交換のメリット・デメリットとはどのようなことなのでしょうか。

ステアリング交換がしづらくなった理由とは?

 ひと昔前は、アルミホイールの交換と同じくらいポピュラーなカスタムだった「ステアリング交換」ですが、近年は交換している人をあまり見かけなくなってしまいました。
 
 人気の高かったステアリング交換が、下火になってしまったのはなぜなのでしょうか。

 ステアリングとは、一般的に「ハンドル」のことをいいます。諸説あるものの、自動車開発や整備に関わるエンジニアなどは、ドライバーが触れる円形のパーツをハンドル、そのハンドルから伸びるシャフトや制御機構などを含んだ操舵システム全体をステアリングと呼んでいるようです。

 ちなみに、世界的には「ステアリングホイール」と呼ばれており、これが省略されてステアリングなったというのが現状です。

 ステアリングを交換する人が減ったのは、進化したがゆえの事情があるようです。現役整備士のT氏に聞いてみました。

「ステアリング交換のニーズ自体はまだあると思います。それでも交換する人が減ったのは、エアバッグの搭載が一般的になったうえに各種操作スイッチが配置され、さらには運転支援システムの各種センサーなどが内蔵されるなど、高度かつ複雑化した純正ステアリングと同等の機能を持たせた社外品がほとんどないからです。

 つまり社外ステアリングに交換することで、エアバッグやオーディオなどの操作を諦めなくてはいけなくなるというわけで、高度な運転支援システムを搭載しているのに、わざわざ使えなくする人はいません。

 その結果、ステアリング交換する人が減ったものと思われます」

 確かに、いざというときにエアバッグが正常に作動しないのは困りますし、ハンドルを握った状態で音楽のボリュームを変えられるのは便利です。

 また、安全運転をアシストしてくれる、高額な運転支援システムをわざわざキャンセルする人もほとんどいないという訳です。

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 以前はステアリング交換で径を小さくしてスポーティにしてみたり、ウッドステアリングで高級感を演出したものです。

 クルマが進化して便利になった反面、カスタムの自由度が下がってしまうのは、時代の流れとして仕方ないことなのかもしれません。

ステアリング交換はメリットよりデメリットのほうが多い!?

 エアバッグ搭載が一般化される前のクルマでよく見られたステアリング交換ですが、メリット・デメリットには何があるのでしょうか。

「まず考えられるのは、デザインが違うことによるドレスアップ効果があります。

 また純正のステアリングの外径や太さから、より自分好みに合わせたものに交換することで、ハンドリングのレスポンスの向上が見込まれます。

 一般的にステアリングの外径が小さくなるほどに、クイックな操作性を体感できます」(T整備士)

 ただし、大きなメリットはデザイン面くらいで、あとはデメリットといいますか、弊害や障害が多いといいます。

「まずは、エアバッグの問題です。同じ車種のグレード違いによる純正ステアリングの交換ならまだしも、社外品に交換するとエアバッグが使えなくなる可能性が高いとされています。

 エアバッグが作動しないようにバッテリーを外す必要があり、そうなると各種センサーもキャリブレーション(初期化)されてしまいますし、インジケーター(警告灯)が消えなくなる症状もあります。そうなると車検に通らなくなる可能性も考えられます」(T整備士)

「もうひとつの弊害が任意保険です。エアバッグ有りで契約している場合、変更手続きも必要ですし、エアバッグ無しになれば保険料も高くなります。

 そのほかステアリングに付いていたAV機器操作やハンズフリー機能なども使えなくなります」(T整備士)

 ここまで話を聞いた限り、現代のクルマではステアリングを交換するメリットよりもデメリットのほうが多いことは明白です。

 では、エアバッグ付きの純正ステアリングが劣化してしまった古いクルマなどはどう対処すべきなのでしょうか。

「好みの問題もありますが、今は握り心地の良いハンドルカバーがたくさん販売されています。

 純正機能を犠牲にすることなく手軽に装着でき、高級感やスポーティなイメージを演出できるメリットもあります。

 純正ステアリングを交換する前に、好みのハンドルカバーを探してみるのも良いかもしれません」(T整備士)

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 エアバッグをはじめ、さまざまな機能を盛り込んだ純正ステアリングを交換するメリットが現在ではだいぶ少なくなってしまったようです。

 その代わりとも言えるハンドルカバーですが、以前は「滑る・太すぎ・操作しにくい」というものも多かったのですが、最近では部分的にカバーするタイプや、外径こそ変わらないものの、握りやすさを考慮したデザインで操作性が向上したものなども登場しています。

 何より、自分で手軽に装着できるのも魅力的。ステアリング交換が難しくなった今、ハンドルカバーでイメチェンを図るのも良さそうです。