歩道を歩いていたら車道を走ってきたクルマに水をかけられたという経験のある人もいるでしょう。服や持ち物が濡れてイラッとすることも多いですが、ドライバーに交通違反は適用されないのでしょうか。

ただ水が跳ねただけじゃない…道交法違反になる?

 例年6月は全国各地で梅雨入りするため、雨が続き道路にも多くの水たまりができます。

 そのため、歩道を歩いている際に走ってきたクルマに水や泥をかけられた経験のある人も少なくないでしょう。
 
 このような状況において、ドライバーに交通違反は適用されないのでしょうか。

 2023年6月2日から3日にかけて各地で大雨による注意警報が出ています。

 場所によっては河川の氾濫や交通機関にも影響が出ているようです。

 また前述のように6月は梅雨入りするため雨に遭遇する機会が増えます。

 そうすると、道路にも多くの水たまりができるため、歩道を歩いている際に走ってきたクルマに水や泥をかけられる可能性も高まります。

 実はこの水はね行為に関しては、ドライバーが守るべき事項として道路交通法第71条第1号に以下のような規定があります。

「ぬかるみ又は水たまりを通行するときは、泥よけ器を付け、又は徐行する等して、泥土、汚水等を飛散させて他人に迷惑を及ぼすことがないようにすること。」

 つまり、クルマで泥や水たまりのある場所を通過する際には速度を落として歩行者などに泥や水をかけないよう注意する必要があります。

 2016年にJAFが実施したクルマの水はねに関する調査では、クルマの速度を時速20km程度まで下げても歩道へ水はねするという結果が出ています。

 この水はね行為には罰則として5万円以下の罰金が設けられているほか、警察に「泥はね運転違反」として交通反則切符を切られれば、普通車で反則金6000円(違反点数なし)が科されます。

 しかし警察がタイミング良くこの違反を見つけるケースはそう多くないことに加え、歩行者側もとっさのことなのでクルマのナンバーや車種を覚えられず、実際にこの違反でドライバーを検挙するのは難しいのが現状です。

 また仮にクルマのナンバーや特徴を控えて警察に届け出た場合でも、クルマが徐行していなかったことを立証するのは難しいうえ、実際に運転していたドライバーを特定できないこともあるため、「泥はね運転違反」での検挙はなかなかハードルが高いといえるでしょう。

バシャっと水はね被害に…! 被害者はクリーニング代を請求出来るのか?

 では、交通違反として捕まえられなくてもドライバーに汚れた服や鞄などのクリーニング代を請求することはできるのでしょうか。

 クルマのドライバーがその場で停車し、水はねをしたことを認めればクリーニング代を負担してもらえることもありますが、多くの場合、クルマは現場から走り去ってしまいます。

 そのため、水はね行為を受けた際には立ち去るクルマのナンバーを控える、写真・動画を撮るなど相手を特定する証拠のほか、衣服や鞄などが汚れた状況を撮影する、クリーニングの際の領収書を保管しておくなど、クリーニング代を請求するための証拠を集めておくことが大切です。

 ただしクリーニング代を請求するという理由で警察にクルマの所有者を特定してもらうことはできないため、弁護士に依頼してクルマの所有者や使用者を照会してもらわなければいけません。

 クルマの所有者が判明したとしても、相手が「自分は運転していない」、「覚えがない」などと主張してクリーニング代の支払いを拒否することも考えられます。

 さらに弁護士に照会を依頼するにもお金がかかるほか、対応する時間や証拠集めなどの手間を考慮すると泣き寝入りする人が多いのが実情です。

 納得はできないかもしれませんが、歩行者側も水はね行為に巻き込まれないよう、歩道のうち車道から離れた部分を歩く、レインコートの使用や持ち物に雨よけカバーをつけるといった工夫をしたほうが良いといえます。

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 走ってきたクルマに水をかけられても、ただちにドライバーを交通違反で捕まえたり、クリーニング代を請求するのは難しい現状があります。

 雨の日や、雨が降った後に水たまりができている場合、クルマのドライバーが道路状況に注意することはもちろんですが、歩行者も水たまりの場所を意識して通行するといった自衛手段をとると良いでしょう。