最近、SNSでは新車発表前に画像がリークされる事案が増えています。このように個人が情報漏洩することはどのような罪になるのでしょうか。

一体どこから情報が漏れるのか?

 ツイッターやインスタグラムなどのSNSでは日々タイムリーな情報が投稿されています。
 
 そのような中、発売前の新車についての情報が流出するケースも起きていますが、このような情報漏洩行為は一体どのような法律に抵触するのでしょうか。

 SNSではリアルタイムの情報が手に入るだけでなく、手軽に情報発信ができるため多くの人が利用しています。

 その利便性の一方で問題となっているのが企業の持っている情報の漏洩です。

 2017年には日産自動車(神奈川県横浜市)の取引先の部品メーカーに勤務していた男性が、未発表の新型車の写真2枚をツイッターに投稿したとして神奈川県警に書類送検されています。

 また、最近でも発表されていない新車のカタログ画像や工場内で撮影したとされる写真がマスコミやSNSにリークされるなど、情報漏洩が疑われる事例もたびたび発生しています。

 では、このような情報漏洩行為はどのような罪に当たるのでしょうか。

 まず、抵触する可能性のある法律として不正競争防止法が挙げられます。

 不正競争防止法とは企業同士の公正な競争を妨げる行為を禁止する法律であり、一例としては有名メーカーの商品パッケージに酷似した商品を販売する行為や会社従業員が入手した営業秘密を外部に持ち出す・第三者に流出する行為などが禁じられています。

 未発表の新型車の写真をSNSに投稿するといった行為は不正競争防止法のうち「営業秘密の侵害」に当たる可能性があり、個人に対しては10年以下の懲役もしくは2000万円以下の罰金という比較的厳しい罰則が設けられています。

 ただし企業の情報がすべて「営業秘密」に当たるわけではなく、「1.秘密として管理されていること(秘密管理性)」、「2.有用な技術上または営業上の情報であること(有用性)」、「3.公然と知られていないこと(非公知性)」という3つの要件に該当するものが「営業秘密」と呼ばれます。

 具体例を挙げると、1.についてはアクセス制限がかけられている情報や「マル秘」と記載されている書類などを指します。

 2.は設計図や製造ノウハウ、顧客名簿、販売マニュアルなど事業に活用されているもので、3.は一般では入手できないものを指します。

 企業の情報を取り扱う際には十分な注意が必要といえるでしょう。

 さらに未発表の新型車の写真をネット上に公開することは、偽計業務妨害罪にも抵触する可能性が考えられます。

 偽計業務妨害罪は刑法第233条で「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と規定されています。

 写真をネット上に公開することにより、企業の広告宣伝業務が妨害されるため、この法律に抵触するおそれがあるのです。

SNS投稿だけじゃない…情報漏洩の可能性はどこに?

 またSNSに投稿していなくても、スマートフォンで撮影した写真が何らかの原因で流出する危険性も考えられるため、そもそも重要書類の撮影、コピーなどを安易に行わないことが肝要です。

 過去にはSNSへの流出ではないものの、元日産自動車社員の男性がサーバーコンピューターにアクセスし、発売前の車両の販売予定価格などのデータをコピーして持ち出していた事案。

 さらには別の元社員の男性についてもモーターショーの企画書などをコピーし不正に持ち出したとしてそれぞれ不正競争防止法違反で検挙されています。

 経済産業省には「営業秘密の保護・活用について」という資料が存在します。

 ここでは、情報漏洩ルートとして多い順に「現場従業員等のミスによる漏洩」や「中途退職者(正規社員)による漏洩」、「取引先や共同研究先を経由した漏洩」などが挙がっており、関係者を介した情報漏洩が多く行われている実態が明らかになっています。

 企業内でも情報漏洩リスクを十分に周知する必要があるといえるでしょう。

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 会社に関係する写真や情報などをSNSに投稿すると場合によっては企業の「営業秘密」と判断され、不正競争防止法違反として検挙される可能性があります。

 この場合、重い罰則が科されるだけでなく、企業が情報漏洩によって受けた損害賠償を請求することも想定されるため、リスクを十分に理解しておくことが大切です。