すっかり主流となったSUVにおいて、売れまくっているのがトヨタ「カローラクロス」です。コンパクトとミドルの中間とも言える絶妙なポジションを確保し、セダンやコンパクトカーからの乗り換え組を中心に支持を集めています。

良い意味で“平均的”なのが「カローラクロス」の魅力

 今や新車の半数近くがSUVという日本市場ですが、そのなかでも、日本の道路事情にマッチするコンパクトSUVの人気は衰えていないようです。
 
 そんなコンパクトSUVのなかで確実に販売台数を伸ばしているのが、トヨタ「カローラ」シリーズ初のSUVとして、2021年に日本デビューした「カローラクロス」です。

 トヨタには「ヤリスクロス」や「ライズ」といったコンパクトSUVがすでにあり、ミドルクラスには「RAV4」などが存在するなか、コンパクトとミドルの中間を埋めるカローラクロスの絶妙なサイズ感は、セダンやコンパクトカーから乗り換えるユーザーのニーズにもマッチし人気を集めています。

 カローラクロスの魅力とはどのようなところなのでしょうか。

 歴代カローラもそうでしたが、カローラクロスは良い意味で平均的なモデルだといえるでしょう。

 オフロード色が強すぎるという個性があるわけでもなく、その一方で安全装備や居住空間、走行性能、扱いやすさ、SUVらしい適度なロードクリアランスを確保するなど、いかにもカローラらしい都市型SUVと言えます。

 全長4490mm×全幅1825mm×全高1620mmのボディは、コンパクトSUVとしては大きめですが、ミドルクラスの「RAV4」からはひと回り小さいサイズで、「扱いやすいSUV」を見事に実現しています。

 パワートレインも同様に、ハイパワーなターボエンジンなどは搭載されず、1.8リッターハイブリッドとガソリンエンジンを用意し、2023年の改良では排気量が1.8リッターから2リッターに置き換わりました。

 なお、ガソリン車は2WDのみ、ハイブリッド車は2WDと4WD(E-Four)が設定されます。ガソリン車に搭載されるトランスミッションミッションは一般的なCVTと、身構えて乗る必要はありません。

 カローラクロスは、SUV風味のカローラなのでしょう。個性派SUVと比較すると大人しいと言わざるを得ませんが、逆に日常で不満を感じる場面も少なく、はじめて乗ってもなじみやすく、今までのトヨタ車と同じ感覚で乗れるというわけです。

 価格は218万4000円〜345万9000円と比較的お買い得。そんなバランス感覚の良さと敷居の低さが、「流行は最低限押さえたいけど、目立ちたくない」という日本人的な発想に寄り添う、新しくも古典的なSUVといえるのではないでしょうか。

カローラクロスオーナーはどう評価?

 実際のユーザーはカローラクロスについてどう思っているのでしょうか。

 ネットでの反応を見る限り、おおむね共通しているのが「サイズ的にちょうどいい」や「コスパがいいSUV」「どんなシーンでも使える」といった使い勝手の良さを評価していること。これはメーカーの戦略通りの評価と言えそうです。

 また、都内の中古車販売店のK店長も、このサイズ感が非常に好評だと教えてくれました。

「SUVは欲しいけれど、駐車場の大きさで諦めていた人やはじめてマイカーを所有する初心者の人がカローラクロスを購入されましたが、ちょうどいいサイズだとおっしゃっていました。

 感覚的には初代や2代目までのRAV4に近いイメージかと思います」

 よくある話ですがSUVは見た目の割に積載性が良くありません。車内高は十分あるのですが、走破性などを考慮してリアのオーバーハングが短めなスタイルなのが影響しています。

 ネットの評価を見ても「荷物が載らない」や「リアシートを倒してもフラットにならない」などの意見が。ただ、RAV4並みの容量(487L)は確保しているので、必要十分とはいえます。

 ただ細かい収納も少ないため、「ゴミ箱やティッシュを置けない」など荷物が多いときは不満に感じる場面もありそうです。

 内装の質感は華美な加飾はなく、シンプルなブラック一色。後席も広いとは言えないようで、「後部座席が狭い」という意見が多いようです。

 一方で、操縦性や燃費はおおむね好評のようです。

 多人数乗車や荷物多めといったSUVらしい使い方すると燃費が悪化しやすい傾向にあるようですが、パワフルでないぶん「扱いやすい」という側面を好意的に捉えているユーザーが多く、運転がしやすい点はメリットとなっています。

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 結論としては、カローラクロスはワイルド感には欠けるものの、カローラブランドならではの扱いやすさ、華美でないぶん飽きの来ないシンプルなインテリア、充実した安全装備など総合的には満足度の高いクルマと評価できそうです。