「キャンプ」や「車中泊」を楽しむアウトドア派に最適なクルマが、かつてマツダから販売されていました。一体どんなモデルなのでしょうか。

ミニバンの屋根に「テント」を標準装備!?

 コロナ禍をきっかけとして爆発的に広がったキャンプブームですが、現在は一段落を迎え、落ち着きを見せつつあります。
 
 しかしそれでもソロキャンプを趣味とし、週末には車中泊を楽しむという人は少なくありません。
 
 そんな「キャンプ好き・車中泊好き」な人に最適なクルマが、かつて日本で販売されていました。

 そのクルマとは、1995年にマツダが発売したミニバン「ボンゴ フレンディ」です。

 同車は全長4620-4655mm×全幅1690mm×全高1960-2090mmと、扱いやすいミドルサイズの車体に3列シートを搭載。家族や友達同士で遠出するための「レジャー基地」を開発コンセプトとし、乗員全員がゆったりとくつろいで過ごせるように、室内空間は広々と設計されています。

 搭載するパワーユニットには、2.0リッター直列4気筒ガソリンエンジンと2.5リッターV型6気筒エンジン、2.5リッター直列4気筒ディーゼルエンジンの3タイプを用意していました(モデル途中でV型6気筒エンジンは廃止)。

 そんなボンゴ フレンディが何よりも画期的だったのは、「オートフリートップ」と呼ぶ機能を標準で搭載するグレードが、量産車として初めて用意されていた点です。

 このオートフリートップというのは、ルーフが電動で大きく開閉し、テントのような居住スペースが出現する仕組みのことで、いわばクルマに「屋根裏部屋」が追加されるようなもの。

 ボタンひとつで出現する「2階」は見晴らしもよく、床はクッション敷きで、大人2人が横に並んで寝ることも可能なスペースになりました。

 またこのスペースの横の窓には虫除け網まで備わっていたので、まさにテント感覚で気軽に利用でき、アウトドアでの遊びを楽しむユーザーにとっては大変便利なクルマだったのです。

 ちなみに、上のテント部分との往来には、1・2列目シート間の天井に設けられたホールを使います。

 さらに、そのホールが塞がっている時でも飲み物など受け渡しできるよう、便利な小窓も装備されていました。

 そのほかハイパースライドシート、電動ロールカーテンなど使い勝手を高める装備も充実しており、ユーザーに寄り添った設計は、実際のオーナーから「よくできている」と高く評価されました。

 そんなボンゴ フレンディですが、もちろん通常ルーフのグレードも存在し、ルーフスポイラーを備えた特別仕様車やエアロパーツを装備した限定モデル「シティランナー」なども展開。

 2000年代に入ってからもマイナーチェンジを実施し、細かな改良を行ないますが、残念ながら2005年11月に生産終了となりました。

※ ※ ※

 現在でも、オートフリートップと同様の仕組みの「ポップアップ式テント」を備えるキャンピングカーは存在しますが、この仕組みを特別仕様車などではなく通常モデルとして用意した点がマツダの慧眼でしょう。

 ボンゴ フレンディは、キャンプブームや車中泊が注目される今こそ人気となるモデルであり、20年ほど時代を先取りした存在と言えるのかもしれません。