いわゆるトラック業界、物流業界の「2024年問題」は今、どうなっているでしょうか。2年ぶりにパシフィコ横浜で開催された、日本最大のトラック関連見本市「ジャパントラックショー2024」(2024年5月9〜11日)を取材して各方面の声を拾ってみました。

トラック・物流業界の「2024年問題」その課題は?

 昨今、物流業界の「2024年問題」が話題となっています。現状はどうなっているでしょうか。
  
 日本最大のトラック関連見本市「ジャパントラックショー2024」で各社の問題解決に対する取り組みを見てみます。

 まず、改めて2024年問題について紹介しておきましょう。

 国土交通省によると、目的は「自動車運送事業における時間外労働規制の見直し」です。

 トラックドライバーは全産業で比較して、年間労働時間が約2割長く、年間所得額は約1割近く、有効求人倍率は約2倍という状況にあります。

 つまり、重労働の割には給料が安く、成り手が見つかりにくいのです。

 こうした課題について、平成30年6月改正の「働き方改革関連法」で対応することになりました。

 令和6年4月から、労働基準法による、自動車の運転業務の時間外労働について「休日労働を含まず年960時間の上限規制が適用されることになったのです。

 これに加えて、拘束時間なども強化されました。

 厚生労働省がトラックドライバーの拘束時間を定めた「改善基準告示」(貨物自動車運送事業法に基づく行政処分の対象)によるものです。

 具体的には、1日あたりで、それまでの「原則13時間いない、最大16時間以内」から「原則13時間以内、最大15時間以内」。

 宿泊を伴う長距離運行は週2回まで16時間(14時間超は1週間で2回以内)。

 また、1ヶ月あたりでは原則、284時間・年3300時間以内。ただし、労使協定によって、年3400時間を超えない範囲で、310時間まで延長可能としています。

 このように、2024年4月以降は、トラックドライバーが実働できる時間がそれまでよりも短くなるため、物流における輸送能力が落ちる可能性が考えられます。

 これを一般的に「物流の2024年問題」と呼びます。

 今回の「ジャパントラックショー2024」の出展者は、大手のトラック製造メーカー、荷室部分などを作る架装メーカー、タイヤメーカー、ソフトウエア事業者、そしてリサイクル関連事業者など、製品やサービスの供給サイドの人たちです。

 実際に物流事業に携わる事業者の人たちが全国各地から来場して、2024年問題や、電動化など新しい技術やサービスの最新情報を得る機会となっています。

 来場者に直接お声がけすることは今回控えて、主に出店社の関係者と情報交換しました。

 そうした中で、当然ながら「2024年問題」に対する関心は高く、大きなビジネスチャンスであるという意見が多く聞かれました。

 具体的な製品・サービスでは、日野、いすゞ、三菱ふそうが、運行管理についてハードウエア、ソフトウエア、そしてコンサルティングについてのトータルサービスを提供しています。

 稼働できる時間が短くなったことを、物流事業の各工程で効率化を図ることで、これまでと同様、またはそれ以上の稼働率を確保することが狙いです。いわゆる、DX(デジタルトランスフォーメーション)の分野になります。

 その上で、多く聞かれた声は、「中小のトラック事業者では状況にかなり差がある」という点です。

 トラック事業者業界は、一般的にも名前が知られている大手が数社ありますが、多くは中小企業です。

 そうした中小企業では、手書き書類や電話など、旧来の仕事の方法を続けている場合も少なくありません。

 そこへいきなりDXと言われても、投資できる金額にも差がありますし、DXに対応できる担当者を場合によっては新たに雇用する必要があるかもしれません。

 そこで、中小企業向けには、大規模なDXサービスではなく、いわゆるOA機器を導入するというイメージで、まずは「すぐに事業を改善できるところから着手できる」ところから始められるサービスが徐々にですが増えてきているようです。

 また、大手においては、連結車両を導入するなどして、ドライバーひとりが運べる貨物量を増やす試みや、輸送拠点の最適化、そして長距離におけるドライバー交代の的確化などをDXによって実現し始めているところです。

 この他、軽トラックについては、スズキの「SUZUKI FLEET(フリート)」を紹介していました。

 ベンチャー企業のスマートドライブと連携し、シガライターから電源を取るGPS等のデータ収集機器を使い、専用のソフトウエアで車両の運行管理、共有車両の予約管理、アルコール記録などを行う仕組みです。

 特徴はスズキ車だけではなく、様々なメーカーの車でも利用が可能な点。

 同社関係者によりますと、今後はスズキ車の新車機能に組み込むことも視野に入れているといいます。

 そのほか、国は2024年問題への政策パッケージを様々提示しており、そうした政策を基盤として今後さらに、事業やサービスのサプライサイドから商品揃えが拡充することでしょう。

 それをどう活かすかは、物流事業者それぞれの判断となります。

 その上で、大手事業者同士、または中小事業者同士がどのように事業を連携していくのかが、2024年問題解決に向けた鍵となることでしょう。