愛車をパトカー風にカスタムすると、どのような違反になるのでしょうか。

「パトカーもどき」どこからが違反?

 福岡市で、赤信号を無視したクルマがタクシーと衝突して人身事故を起こし、乗車していた2人の男が逮捕されました。
 
 事故時、男らが乗っていたクルマは覆面パトカー“風”にカスタムされ、赤色灯を点灯させて赤信号を無視して走行したと言います。では、このように一般車両をパトカー風にカスタムして走行すると、どのような法令違反に当たるのでしょうか。

 福岡県警中央署は2024年5月8日、緊急走行する覆面パトカーを装って交差点に進入し、人身事故を起こした2人の男を自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の疑いで逮捕しました。

 警察によると男らは2月17日の未明、福岡市中央区で、乗用車に取り付けたサイレンを鳴らし赤色灯を点灯させながら赤信号の交差点に進入、左から来たタクシーと衝突して運転手と乗客の計4人にけがをさせたとしています。

 なお、事故当時は車を所有する男が運転、もう一方の男が助手席に座り、交差点に進入する際には助手席の男が窓から腕を伸ばして赤色灯を設置したほか、車内マイクで「交差点に進入します」などと呼びかけていたと言います。

 2人は前方を走行していたパトカーを追っていたとみられ、「警察の職務質問を見たかった」などと供述しています。また、同署では赤色灯やマイクの入手経路などについても調べているとしています。

 実は、今回のように偽のパトカーを走行させる事案は過去にも発生しており、2020年には札幌市中央区内において、赤色灯をつけた“ニセ白黒パトカー”を走らせた男2人が書類送検されています。

 では、一般の乗用車をパトカー風にカスタマイズし赤色灯を点灯して走行すると、どのような法令に違反するのでしょうか。

 まず、一般車両に赤色灯を装着して公道を走る行為は道路運送車両法違反に当たる可能性があります。

 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第218条では、パトカーや消防車、救急車といった「緊急自動車」以外の車両は赤色灯を装着することが禁止されています。

 ドラマや映画などではパトカーに似た「劇用車」が使われますが、撮影地まで劇場車を運転する際は赤色灯部分にカバーをかけて、周囲から見えないような措置がとられています。

 さらに、公道で劇場車の撮影をしなければならない場合は、警察に道路使用許可を取った上、交通規制で一般の交通と遮断された状態にする必要があります。つまり、基本的には赤色灯を付けた一般車両が公道を走ることは難しいといえるでしょう。

 ただし公道ではなく私有地で使用することは可能であり、事故や交通違反を抑止する目的で赤色灯の付いたダミーパトカーが私有地内に置かれている光景も全国各地でみられます。

 また、車体に「○○県警」や「POLICE」など警察を示すロゴを入れることも禁止されています。

 これらのロゴを入れると刑法第166条第2項の「偽造公記号使用罪」に抵触するおそれがあります。

 私有地に置かれているダミーパトカーについては、ロゴをよく見ると「POLICE」ではなく「○○パトロール」と書かれているなど、法令違反に当たらない工夫がされています。

 そして、パトカーの赤色灯とサイレンによく似た装置を備え付けることに関しても、各都道府県の道路交通規則で禁止されているケースがあります。東京都道路交通規則を例にみると、第2章第8条「運転者の遵守事項」の第13号では次のように規定しています。

「令第13条第1項各号に掲げる自動車以外の自動車若しくは原動機付自転車を運転するときは、緊急自動車の警光灯と紛らわしい灯火を点灯し、又はサイレン音若しくはこれと類似する音を発しないこと。」

 条文中の「令第13条第1項各号に掲げる自動車」とは緊急自動車のことであり、一般車両を運転する際には緊急自動車とよく似た赤色灯を点灯したり、サイレンを鳴らしたりしてはいけません。

 ちなみにクルマを白黒にペインティングすることは違法ではなく、警備会社の社用車や防犯パトロールカー、一般の乗用車などでも時折見られます。

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 このように、パトカーに類似したクルマを運転すると、道路運送車両法をはじめさまざまな法律に抵触するおそれがあります。

 警察車両のマニアのなかには、赤色灯やサイレンアンプを装着するなど、本物の警察車両に近づけるべく、リアリティを追求したカスタムを施す人もいるかもしれませんが、公道を走行する際は法令を守ったクルマで安全運転に努めることが大切です。

 また、仮に私有地内にダミーパトカーを置く場合であっても、事前に管轄の警察署などへ確認や相談するほうが安心です。