2023年12月23日に警察庁は、クルマに貼り付ける「保管場所標章」を廃止する方針を決めました。これまで「当該自動車に保管場所標章を表示しなければならない」と定められていましたが、なぜ廃止となるのでしょうか。

なぜ廃止される? 貼らなきゃダメなステッカーだったのに

 車庫証明の手続きをすると「保管場所標章」と呼ばれる丸いシールが交付されますが、実はこの標章は今後廃止されることが決まっています。
 
 では、一体なぜ標章を廃止するのでしょうか。

 新車を購入したときや、クルマの名義・住所変更をするときは、基本的にクルマの保管場所(車庫)を警察に届出する必要があります。

 具体的には、自家用の登録自動車は保管場所証明書(車庫証明書)の手続きを、自家用の軽自動車は保管場所届出手続きをそれぞれおこなうことが決まっています。

 それらの申請が終了するとクルマの所有者に対し、車庫証明書などの書類に加え、「保管場所標章」と呼ばれる円形のシールが交付されます。

 この標章にはクルマのイラストのほか、「東京都 〇〇区」「〇〇警察署長」などのように地域や署長名が表記され、発行した警察署が分かるようになっています。

 なお、保管場所標章は「自動車の保管場所の確保等に関する法律」(通称:車庫法)によって自動車に表示することが義務付けられており、クルマの後部ガラスなどに貼付するのが一般的です。

 警察庁によると、2023年中は全国で約877万枚もの保管場所標章を交付しています。

 このように自動車を所有している人にとっては馴染み深いものといえますが、保管場所標章は今後廃止されることが決定しています。

 元々警察庁は2023年12月21日に保管場所標章を廃止する方針を明らかにしました。

 そして今回の2024年5月17日の参議院本会議において車庫法の改正案が可決・成立したことによる措置で、法律の公布後1年以内に施行されます。

 では、この保管場所標章を廃止する背景には一体どのような事情があるのでしょうか。

 そもそも、保管場所標章が制度化したのは1991年(平成3年)のことです。

 当時は道路を車庫代わりに利用する「青空駐車」が横行しており、駐車車両への衝突による死亡事故が相次ぐなど、問題視されていました。

 そこで警察は車庫法を改正してクルマの所有者に保管場所の届出をさせた上、クルマに標章を貼り付けることを義務付け、きちんと保管場所があるクルマか否かを見た目で判断できるようにしたのです。

 また当時は、標章を交付した警察署に照会することで保管場所の迅速な調査を可能にするという目的もありました。

 結果、この対策が功を奏し車庫法違反に当たる青空駐車は年々減少しています。

 警察庁が公表しているデータによると、1991年中の車庫法違反の検挙件数は5万9632件でしたが、2022年中は943件(車庫とばしを除く)まで減っています。

 このたび保管場所標章を廃止するに至った理由として、警察システムの進化により、クルマのナンバーからすぐに所有者や保管場所などを照会できるようになったことが挙げられます。

 最近は保管場所標章を貼付していないクルマも散見される中、ナンバーのみで詳細な情報が分かるため、標章はお役御免になったといえるでしょう。

 加えて、上記のように青空駐車の摘発件数が減少していることも廃止の要因といえます。

 また、これまでは保管場所標章の交付に際して1枚500円の手数料がかかっていましたが、標章が廃止されればクルマの所有者の金銭的負担や警察職員の事務負担が減少するものとみられます。

 ただし、あくまで廃止されるのは保管場所標章のみで、車庫証明書などクルマの保管場所に関する手続きはこれまでどおり続けられます。