現在、人気モデルはSUVが多くを占め、街でもSUVを見かけることがかなり増えました。一体なぜSUVが人気なのでしょうか。

なぜ「SUV」ここまで増えた?

 このところ、街でSUVを見かけることが激増したと感じている人は多いことでしょう。
 
 日本の新車乗用車販売における昨今のSUV比率は、なんと約6割。10台の乗用車が売れたらそのうち6台がSUVと聞けば、街でSUV見かけることが増えていることも納得できます。

 この6割という数字は、コンパクトカーから全長5mを超える大型の乗用車まで含むもの(軽自動車は含まず)。

 これまでセダンやハッチバック、ステーションワゴン、そしてミニバンに乗っていたユーザーが多くSUVに買い替えているというわけです。

 では、SUVのメリットはどこにあるのでしょうか。

 まず、SUVに乗るたびに実感できるメリットのひとつが、高い乗降性でしょう。

 SUVは地面に対する着座位置がセダンやハッチバックよりも高く、その高さによって乗り降りする際の姿勢変化(身体の動き)が少なく済みます。

 乗り込む際には、沈み込むような身体の動きとなるスポーツカーと比べるとSUVのほうが楽に乗り降りできることはイメージできると思いますが、それはセダンやハッチバックに対しても同様なのです。

 特に「クロスオーバーSUV」と呼ばれる、本格的なオフローダーほど背が高くないSUVにおける乗り降りのしやすさは抜群。一度知ってしまえば、もう背の低いタイプのクルマには戻れないかもしれません。

 そして、SUVは運転においても楽なことがあります。それは道路と駐車場の境目などにある細かい段差を気にしなくて済むこと。

 SUVはタイヤの径が大きく、また地上高(地面と車体の間隔)も広めです。

 そのため、SUV以外のタイプに比べると段差などで車体の下を擦る可能性が少なく、小さな段差に気を遣わなくていいから楽なのです。

 同様に、降雪地域に住む人にとっては、車体下の雪が障害となってスタックする確率が減るのも大きなメリットと言えるでしょう。

 また、着座位置が高いことから道路を走っているときに周囲が見えやすいのもポイント。

 かつてと比べて背が高いクルマが道路上に増えた今、見晴らしがいいSUVは運転しやすさにもつながります。

 さらに、乗員にとってダメージポイントが近くなる「側面衝突」に対しても、様々な安全対策がなされてきています。

 たとえば、ハイエンドセダンのメルセデス・ベンツ「Sクラス」やアウディ「A8」では、そうした側面衝突の安全性を高めるために、横から衝突されそうになるとレーダーで検知して瞬時に車高を上げて自車のダメージを減らす機能が設定されています。

 わずか数センチ車高を上げることにより、衝突エネルギーをドアに集中して受けるのではなく、サイドシルと呼ばれる車体脇下の頑丈な部分で受け止めることで、エネルギーを分散させ、一部が集中的につぶれるのを防いで乗員を守るというアイデアです。

 セダンなど背の低いクルマに比べると、SUVが側面衝突時に乗員へのダメージを減らしやすい傾向にあるのは、それと同じ理屈です。

 車高が高いことで、そもそもサイドシルも高い位置にあるので、SクラスやA8が側突直前に車体を持ち上げるのと同じ効果があるのです。

 それらがSUVのメリットと言っていいでしょう。

人気のSUV 意外にも「デメリット」も

 もちろん、SUVにはメリットだけでなくデメリットもあります。たとえば駐車場を選ぶことがあります。

 全高1550mmを超える一般的なSUVでは、ミニバンやSUV対応ではない機械式立体駐車場へ入庫できないことが、ウィークポイントとして挙げられます。

 たとえ自宅が機械式立体駐車場ではないとしても、出かけた先などで機械式を使うことがあるユーザーは、駐車場の選択肢が狭まるのは使い勝手の低下につながります。

 また、一般論として、車両重量がかさむうえ背の高さから空気抵抗も悪化するSUVは燃費も悪い傾向にあると言えます。

 技術の向上によって年々改善されていますが、走行距離が伸びるユーザーはそこも心配する必要があるでしょう。

 一方、走行性能でいえば、走りを求める人のなかには「背の高いSUVは走りの安定感がもの足りない」という意見もあるかもしれません。

 それはたしかに否定できない部分でもあります。しかし、車両開発技術の向上によってほぼ解消されており、多くの人は気にする必要のない領域の話とも言えます。

 もちろん差が完全になくなったわけではないので、敏感なドライバーなら感じるかもしれませんが、そういったドライバー以外は気にする必要はないでしょう。

 さらに、コストパフォーマンスの話をすると、一般的にSUVは車両価格が高くなりがちなのです。

 たとえば同じボディでハッチバックとSUVを作り分けているスバル「インプレッサ」と「クロストレック」が分かりやすい例でしょう。

 同じボディではなくても、トヨタのセダン「カローラ」とSUVタイプの「カローラクロス」を比べても、やはり後者のほうが価格帯が高いことが確認できます。

※ ※ ※

 SUVがこれだけ増えている現状を「一時的なブーム」と考える人も多くいることでしょう。

 しかし、乗り降りが楽なことや運転しやすいことなどSUVのメリットを考えると、いちどSUVの良さを知った人が“SUV以外のボディタイプ”へ移るケースは少ないかもしれません。

 つまり、このままSUVが乗用車の定番になる可能性は、十分に考えられるのです。