最新の自動車関連技術の展示会である「人とくるまのテクノロジー展2024」が、2024年5月22日〜24日の3日間、横浜市のパシフィコ横浜で開催されています。

550社以上の企業が出展 自動車の今と未来を体感!

 最新の自動車関連技術の展示会である「人とくるまのテクノロジー展2024」が、2024年5月22日〜24日の3日間、横浜市のパシフィコ横浜で開催されています。

 同展示会は、自動車メーカーだけでなく、部品や材料、計測機器、シミュレーター、エレクトロニクスなどの自動車開発製造に関わる550社以上の企業が出展し、自動車の今、そして、未来を垣間見ることができます。そのため、毎年、日本中から自動車産業に携わる多くのプロフェッショナルたちが来場します。

 初日となる22日には、「ヴァレオジャパン」「市光工業」「フォルヴィア」「ジヤトコ」によるプレスカンファレンスが実施され、最新技術の紹介が行われました。各社により行われた出展内容から注目の展示品の一部を紹介しましょう。

日本初公開のEV非接触充電システムや世界最小のナイトビジョンカメラも!

 フランスを本拠地とする世界最大級の自動車部品メーカーのひとつである「ヴァレオ」の日本法人「ヴァレオジャパン」のブースでは、EV向け技術とADAS(先進運転支援システム)技術などが展示されています。

 日本初展示となるEV非接触充電システム「ヴァレオ イニーズ エア チャージング システム」は、約3kHzの超低動作周波数を使うことで、より軽量かつシンプル、そして安全性を高めたのが特徴です。充電器本体と車両装置も小型となっています。

 さまざまな国で使える互換性を確保できる設計で、電力出力は7kW〜22kWに対応し、EVのバッテリーから電気を取り出し、電力網インフラとして活用できるV2Gにも対応しています。

 日本でも乗用車への装備が標準化されているADASについては、サーマルカメラによる世界最小かつ最も高感度な自動車向けナイトビジョンカメラが展示されました。

 熱を検知し、温度分布を可視化できるサーマルカメラの強みを生かし、歩行者、動物、車両、道路の端部などの検出能力を飛躍的に高めたとしています。また可視光カメラを組み合わせるシステムも開発されており、可視化性能を高め、LiDARやレーダーなど他のセンサーと組み合わせることで、物体の検出能力を強化できるとしています。

 今後ニーズの拡大が期待される二輪車向けのシステムも展示されました。電動化のためのモーターシステム「48Vスモールモビリティモータージェネレータ」は、最大8kWの48V空冷式モーターで、都市向け小型モビリティ用のものです。同製品は、海外市場向けとして、搭載した電動バイクが近い将来登場する予定とされています。

 また二輪車向けのADASも開発されており、単眼カメラによる「アドバンスド・ライダー・アシスタンスシステム」は、前方の障害物警報や前方車両接近警報を発することを可能にしています。今後は、車線逸脱防止支援システムや道路標識認識システム、オートハイビームなどの機能も追加していくとしています。

 四輪車へのADASの普及が交通事故低減につながっているのは多くの人が認識するところだけに、予防安全機能が二輪車にも拡大することが期待されます。

LEDデジタルパネル、HDライティング、路面描画プロジェクションマッピングで、次世代の自動車照明を提案

 日本の自動車向けライトメーカーとして有名な「市光工業」は、現在、ヴァレオグループの企業として活躍しています。今回の展示では、LEDデジタルパネル搭載のフロントライティングシステムやHDライティング、路面描画プロジェクションマッピングなどを紹介しています。

 LEDデジタルパネル搭載のフロントライティングシステムは、中国のEV自動車ブランド「ZEEKR 007」に採用されるもので、ヘッドライトレンズの高さがわずか15mmの超薄型バイファンクションエッドライトと1700個以上のLEDで構成された2つのデジタルパネルを備えています。優れた照射能力を備えるのはもちろんですが、LEDライトを変化させることができ、ライティングでフロントマスクの印象を変えることができます。

 HDライティングは、ヘッドランプの照射範囲を数万ピクセルに分割し、個別に制御する技術です。これによりハイビーム時の部分的な消灯で、ライトによる視界を高めた状態のまま、対向車ドライバーや歩行者などの幻惑を避けるなどができます。

 さらにライトが照らす前方路面上に、レーンガイドやナビゲーション表示を投影することや、車両前方の横断者の足元を強調することで、ドライバーに発見しやすくさせることもできるそうです。

 また路面描画プロジェクションマッピングは、ヘッドライトで路面に進行方向を示すなど自動車の動きを示すことで、歩行者や二輪車など他の道路利用者とのコミュニケーションを図り、事故の予防につなげるものです。市光工業では、走行音が静かなEVや死角の多いトラック、バスなどの大型車にも効果的な安全機能として紹介しています。

視線移動を減らし、安全性を高める次世代メーターパネル「スカイライン イマーシブ ディスプレイ」

 フォルヴィアは、欧州の大手部品メーカーであるフランスの「フォルシア」とドイツの「ヘラー」が合併して生まれた世界第7位の自動車技術サプライヤーです。

 同社の最大の目玉といえるのが、新たなメーターパネルシステム「スカイライン・イマーシブ・ディスプレイ」です。同システムは、既存のメーターパネルとヘッドアップディスプレイに代わるものとして開発され、フロントウィンドウ下側に情報を表示することで、道路とディスプレイ間の視線移動を減らし、より安全な運転環境とするものです。

 薄型でダッシュボードを横断する形となるディスプレイは、3つの表示パネルを組み合わせているのが特徴です。視野角に合わせて、速度やADASなどの重要な安全情報は200ppiのTFTディスプレイ、インフォテイメント情報は60ppiのミニLEDディスプレイ、環境照明や障害物警報などは12ppiのLEDライトタイルディスプレイに表示します。

 これは目的に合わせて表示パネルの解像度を最適化することで、コストを抑えるだけでなく、ドライバーの伝達情報を選別化し、より直感的な理解につなげることを目的としています。また情報をダッシュボード上部に表示することで、フロントガラスや専用スクリーンに表示するヘッドアップディスプレイと同様に視線移動を抑えられるので、デザインのシンプル化にも貢献します。

 同システムは、優れたアイデアとして、今年1月に米国ラスベガスで行われた世界最大の電子機器類の展示会「CES2024」で「イノベーションアワード」に輝いています。EVなどの電動車や自動運転技術との親和性の高さから、自動車メーカーの関心は高く、近い将来に搭載車が登場しそうです。

電動車向けユニット500万台体制へ!「X-in-1」と「超小型e-Axle」を公開

 日本の大手トランスミッションメーカーであるジヤトコは、2030年までに電動車向けユニットの年間生産台数500万台を達成することを目標として掲げており、その大きな一歩となる電動パワートレイン「X-in-1」や「超小型e-Axle」などを紹介しています。

 今後のビジネスの中核とされる「X-in-1」は、日産の次世代電動パワートレインで、主要な駆動部品の共用化と構成部品のモジュラー化などで、30%のコストダウンと、レアアース使用率1%以下のモーターを採用していることが特徴です。

 EV向けの「3-in-1」とe-POWER向けの「5-in-1」の2種類があり、既に生産ラインも完成間近とされています。どのような日産車に搭載され、現行システムに比べ、どのくらいの進化が実現するのかにも注目が集まります。

 さらに独自製品としての目玉は「超小型e-Axle」です。EV普及のカギを握る小型車に向けた電動パワーユニットで、軽自動車から小型車への対応が可能として、同イベントでは、軽自動車搭載をイメージさせるモックアップが展示されています。

 また新規事業として、中国の電動二輪ドライブユニットメーカー「浙江九洲新能源科技有限公司」と共同開発を進めている電動バイク用2速自動変速インホイールモータードライブユニットを国内初展示するなど、電動ユニットに積極的に取り組んでいることをアピールしています。

最新技術から未来の技術まで、クルマの進化が凝縮

 このように多くの自動車関連企業が最新技術を披露する「人とくるまのテクノロジー展」には、市販化目前の最新技術から近い将来の実用化に動き出した未来の技術まで幅広く展示されており、まさにクルマの未来が凝縮されています。

 新技術の展示では、各社共に電動化を含めた環境対応や、より安全性を高める運転支援機能が大きな柱となっています。これ以外にも、くるまのニュースでは、会場で見つけたクルマの未来についての情報を順次お届けしていきます。