2024年全日本ラリー第5戦「モントレー2024」が、2024年6月7日から9日にかけて群馬県安中市を中心に開催されました。

今年のモントレーは碓氷峠の旧道をほぼ全線に渡ってステージとして使用

 全日本ラリー第5戦「モントレー2024」が群馬県安中市を中心に開催されました。

 レースはかつて赤城山、榛名山、妙義山の上毛三山を舞台に開催されていたことから、フランス語の3つの名峰、mont tresのラテン語表記Montresという名称で親しまれることになりました。ちなみに、高崎駅の駅ビルもモントレーと言います。

 昔からラリーが盛んだった群馬県からは、数多くのドライバー、コドライバーが生まれ、世界を舞台に活躍する選手も多く輩出しました。

 今年は安中市をベースとして、東日本選手権や群馬ラリーシリーズで以前から使用していた林道に加え、今回一番の目玉である、国道18号碓氷峠の旧道をほぼ全線に渡ってステージとして使用し、国道を占有してのラリーは日本で初めてのことで大きな話題となりました。

 安中しんくみスポーツセンターをスタートした競技車はSS1塩ノ沢峠へ向かいます。

 オープニングステージを制したのは勝田範彦・木村裕介組のGRヤリスRally2でした。0.4秒差で地元群馬の新井大輝・松尾俊亮組のファビアR5が続きます。続くSS2八倉峠で勝田・木村組に0.5秒差を付けた新井・松尾組はここから快進撃が始まります。

 注目のSS3旧碓氷峠で新井・松尾組は6分52秒8のタイムを記録。サービスを挟んだSS4旧碓氷峠では9.1キロのステージでSS3の自身のタイムを7.5秒も上回る6分45秒3を記録し、このステージ2番手の奴田原・東組に6.3秒もの大差をつけ、総合2位の勝田・木村組には11秒のリードを築きました。

非力な車で格上の車をカモにするという、まるであのマンガのような展開!

 この旧碓氷峠で最も注目を浴びたのがJN-5クラスの嶋村徳之・小藤桂一組のヤリスでした。

 1.5リッター以下のFF車で競われるこのクラスは、ヤリス、GRヤリスRS、マツダ2などが参戦していて、ベテラン、若手が入り乱れて接戦が続くクラスです。

 嶋村選手は去年まで東日本選手権や、群馬ラリーシリーズを中心に参戦しつつ、中部近畿選手権や全日本ラリー選手権にスポット参戦してきました。今年から若手選手を多く輩出してきたMATEX-AQTEC RALLY TEAMに所属しています。

 自ら所有するランサーからチームが所有するヤリスに乗り替えたことで走らせ方の違いに戸惑い、本来の実力を発揮できていない今シーズンですが、ようやく走りにキレが戻ります。旧碓氷峠の1本目SS3で、なんと総合13位のタイムを記録したのです。

 JN-4はおろかJN-3クラスのタイムをも上回り、JN-2クラスに肉薄するタイムでした。2本目のSS4では自らのタイムを2.3秒上回り、JN-5クラス2位の大倉聡・豊田耕司組のGRヤリスRSに21.4秒のリードを築くことに成功します。

 碓氷峠の下りで非力なクルマで格上のクルマをカモにするという、まるであのマンガのような展開に同じクラスに参戦する選手達からも驚きの声が上がり、さらには本来の実力をようやく見せ始めた嶋村選手への賞賛の言葉も聞かれました。

 嶋村・小藤組は地元群馬で勝たないと後がないというプレッシャーを跳ね除け、ラリーを通してクラス首位を譲らず、全日本ラリー初優勝を飾りました。今シーズンは笑顔を見せることが少なかった嶋村選手が久々に見せた笑顔が印象的でした。

ベテラン コドライバーですらも恐れたマキシマムアタックを超えたアタック

 Leg1最後のSS6八倉峠は最近の全日本では珍しくなったナイトステージになりました。ライトポッドが闇夜の山道を照らしながら走り去るさまは独特の雰囲気があって、私はナイトステージが大好きです。

 JN-1勢が出走する頃はまだ陽の光も残っていて、補助灯無しの選手もいましたが、JN-2がスタートする頃には日没もすぎて闇夜のステージになりました。

 そのJN-2クラス、SS6を制したのは大竹直生・竹藪英樹組のGRヤリスでした。

 ここまでクラス5位6位を行ったり来たりしていた大竹・竹藪組ですが、SS6でフルアタックを開始、クラス2位のHYOMA・伊藤克己組のGRヤリスに13.4秒差をつけ、クラス4位に浮上します。

 大竹選手は2018年にラリーデビューし、2021年にJN-3クラスのチャンピオンを獲得し、2022年からはトヨタの育成プログラムに参加、フィンランドをベースにヨーロッパのラリーに参戦していました。今シーズンから全日本ラリーに復帰し、JN-2クラスのサブカテゴリーに参戦を開始します。

 ここまで第2戦唐津でのクラス3位以外は目立った成績を残せず、本来の走りができていなかった大竹選手ですが、ようやく本領を発揮します。

 Leg2の1本目SS7を3位、SS8を2位でクラス3位に浮上、ようやくライバルの背中が見え始めます。

 監督からの「勝利指令」が出たLeg2の2ループ目、SS9でさらにペースを上げトップタイムでラリーを通して初のクラス首位に浮上します。最終ステージ、SS10のスタート前の「マキシマムアタック(マージンを削ってペースを上げて走行すること)を超えたアタックで、あんな怖い思いをしたのは初めてだった」というコドライバー竹藪選手の言葉が全てを物語っているようでした。

 これまで数多くのドライバーと組み、国内外のラリーに参戦してきたベテランコドライバーが覚悟を決めてスタートした最終SSでもアタックを敢行、クラス首位を守り全日本復帰後初めての勝利を飾りました。

 JN-2のサブカテゴリーに登録する大竹車はJN-2の規定よりも改造範囲が狭く、使用できるタイヤも違います。そのハンデを乗り越えての勝利は賞賛に値するでしょう。海外武者修行の成果は確実に表れています。再び世界を舞台に活躍する姿を見てみたいと期待させてくれる走りでした。

危機一髪!? 新井・松尾組がスタート前にタイヤに刺さる釘を発見!

 大竹・竹藪組が限界を超えたアタックを敢行したLeg2のグランマキムラというユニークなステージ名が気になった方もいるかもしれません。関東の林道好きドライバー、ライダーにはお馴染みの御荷鉾スーパー林道を使用するこのステージは、群馬戦として親しまれている群馬ラリーシリーズでよく使用される道です。

 その群馬戦が開催される際、集落からほど近いギャラリーポイントにいつも観戦に訪れるキムラばあちゃんの名前が由来となっているのです。ステージ名は基本的には地名が付けられることが多いのですが、たまにこのような特色のあるステージ名がつけられることもあるので、ステージ名に注目してみるのも面白いかもしれません。

 SS9終了時点で2位の勝田・木村組に26.6秒差を付け首位を守り続ける新井・松尾組は、最終ステージSS10を前に余裕の表情も見せつつ出走準備に余念がありませんでしたが、タイヤのエア圧を確認していた新井選手がタイヤに突き刺さる釘を発見! 急遽タイヤを交換することになりました。

 タイムコントロールへ進入する時間は決められていて、その時間に間に合うようにエア圧チェックや、ハンスやヘルメットなどの準備をするのがスタート前の流れです。今回は遅着することもなく無事にスタート、最終的には2位に30秒の大差をつけ今シーズン3勝目を飾りました。

 次戦からのグラベル2戦への意気込みを聞くと「部品のこともあり壊せないし、心配事は多い」と語る新井選手。全日本のグラベルラリーには初参戦となるGRヤリスRally2勢に対して、実績は豊富なファビアR5ですが、体制的には圧倒的に不利な立場です。

 チャンピオン獲得には残り全戦フルポイントでの勝利が必要と話す新井選手ですが、次戦からの北海道グラベル2連戦に向けて、ファビアを仕上げて可能な限り消耗させずに最終戦を迎えることがチャンピオン獲得への道筋となります。

次戦からは北海道に舞台を移してのグラベルラリー

 前述の通り、次戦からは北海道に舞台を移してのグラベルラリーとなります。まずは7月5日から7日にニセコ周辺を舞台に開催されるARKラリー・カムイです。

 いわゆるクロカン4駆が参戦する選手権外の併設クラス、XCRスプリントカップ北海道にはマツダからCX-5の参戦も発表されました。

 例年通りであればギャラリーステージも設定されるので、過ごしやすい気候の7月のニセコなのでぜひ観戦に出かけてください。ただし、虫刺され対策は万全に!

[Text/Photo:山本佳吾]