黒潮大蛇行“終息”でカツオは獲れなくなる?発生後7年間で漁獲量は“15倍”に増えていたが、マグロは“減少”する可能性…“不漁”だったキンメダイ、サバは?【高知】
KUTVテレビ高知6/7(土)6:00

黒潮大蛇行“終息”でカツオは獲れなくなる?発生後7年間で漁獲量は“15倍”に増えていたが、マグロは“減少”する可能性…“不漁”だったキンメダイ、サバは?【高知】
「黒潮大蛇行が、終息する兆しがある」と、5月に気象庁から発表されました。カツオやマグロなど豊富な魚がとれる高知では、大蛇行の「終息」で漁獲量は減るのでしょうか?それとも増えるのでしょうか?調査機関に聞きました。
「黒潮大蛇行」って?
「黒潮」は、日本の南岸に沿って流れる海流です。世界でも有数の流れが強い海流で、流速は速いところで毎秒2m以上、運ばれる水の量は毎秒5000万トンに達し、その流れの変化が、船舶の運行や漁業、沿岸の潮位に大きな影響を及ぼしています。
その「黒潮」は時折、紀伊半島〜東海沖で日本列島から大きく離れて流れることがあり、これが「黒潮大蛇行」と呼ばれています。

気象庁は、黒潮が以下の2つの条件を満たして流れる時を「黒潮大蛇行」と判定しています。
①本州最南端の潮岬(和歌山県)で、黒潮が安定して岸から離れていること
②東経136度〜140度の東海沖で、黒潮の流れの最南下点が「北緯32度より南」に位置していること
気象庁は1965年から観測データを取っていて、観測を開始した1965年以降で黒潮大蛇行は6回発生しています。黒潮がいったん大蛇行を始めると、多くの場合は1年以上持続しますが、今回の大蛇行は2017年8月に発生し、2025年4月時点で「7年9か月」続いていて、過去最長となっています。
黒潮大蛇行が発生すると、高知県沖を流れる黒潮は、西の足摺沖では岸に近づき
、東の室戸沖では岸から離れます。カツオはもちろん、マグロ、サバ、キンメダイなどなど…様々な魚が豊富に獲れる高知では、黒潮大蛇行が漁業にどのような影響をもたらしていたのでしょうか。

高知の海や水産資源の調査研究を行う「高知県水産試験場」は、黒潮大蛇行の漁業への影響を調べるために、大蛇行が始まる前と後の各7年間の、年間平均漁獲量を比較しました。
【比較の期間】
◆大蛇行が始まる前 :2010〜2016年
◆大蛇行が始まった後:2018〜2024年
※2017年は「移行期」のため除外
大蛇行が始まった後、カツオは“15倍”、マグロは“17倍”の漁獲量に
カツオの「一本釣り漁」では、大蛇行発生後の漁獲量が、発生前と比べて約1.9倍となりました。
◆大蛇行前(2010〜16年):年間平均712.0トン
◆大蛇行後(2018〜24年):年間平均1,350.9トン
もっとすごいのが、カツオの「定置網漁」。高知県東部の室戸市佐喜浜などの大型定置網漁では、大蛇行発生後の漁獲量が15倍以上になっていました。
◆大蛇行前(2010〜16年):年間平均2.0トン
◆大蛇行後(2018〜24年):年間平均31.4トン
この結果について、高知県水産試験場は「カツオにとって好ましい条件がそろったことが要因だ」と分析しています。大蛇行が発生すると、暖流である黒潮が土佐湾沖で高知から離れたり、逆に高知へ近づいたりを繰り返します。これによって、暖かい海水が沿岸近くまで入り込み、暖かい海を好むカツオの群れが来遊しやすくなったのではないかということです。
同じ理由で、暖かい海を好むキハダマグロの漁獲量も、大蛇行発生後には約17倍と大きく増えています。
◆大蛇行前(2010〜16年):年間平均6.8トン
◆大蛇行後(2018〜24年):年間平均117.1トン
カツオもキハダマグロも、“過去最長”の黒潮大蛇行の期間中に、漁獲量が大幅に増えました。では、大蛇行が「終息」してしまったら、カツオやキハダマグロは獲れなくなってしまうのでしょうか?
終息したら、マグロは“減少”の可能性、カツオは“未知数”
高知県水産試験場によりますと、「黒潮大蛇行が終息した場合、キハダマグロの漁獲量は減少する可能性がある。ただ、カツオの漁況がどう変化するかは未解明な部分が多く、予測は難しい」ということです。
キハダマグロは「大蛇行の発生時に漁獲量が増え、終了時に減少した」という明確なデータがあるということです。しかし、カツオは豊漁になるパターンが様々あり、大蛇行とは逆の「黒潮小蛇行」で漁獲量が増えたというデータもあるのです。
「黒潮小蛇行」は、黒潮が九州の南東で沖に向かって大きく膨らんで流れ、黒潮の流れと岸との間に「冷水域」を伴うときの現象です。高知でいうと、大蛇行とは逆に、西の足摺沖で岸から離れ、東の室戸沖で岸に近づく海流となり、このとき土佐湾沖で黒潮の内側域が西向きに大きく開いて、土佐湾の流れが滞留します。

この、流れが滞留した海域にカツオの群れが多く来遊したときには、カツオが長く土佐湾内に居着くため、“豊漁”となるということです。
また、規模が大きめの黒潮小蛇行は、春先の3月〜5月に発生することが多く、この時期は土佐湾へ多くのカツオが来遊する「初ガツオ」の季節であるため、小蛇行の発生とカツオ来遊のタイミングがうまく噛み合うと、小蛇行が解消するまで土佐湾周辺でカツオが豊漁となることがあります。
こうしたことから高知県水産試験場は、「大蛇行が終息したとしても、カツオの漁獲量が変わらない可能性を否定できない」としています。
カツオとマグロのように、大蛇行発生後に漁獲量が増えた魚がある一方で、逆に漁獲量が減った魚もあります。それは、キンメダイ、ゴマサバ、ソウダガツオです。

不漁だったキンメダイ、サバ、ソウダガツオ(メジカ)は回復するかも…!?
大蛇行発生後の漁獲量は、年間平均で、ソウダガツオは約5割、キンメダイは約4割、ゴマサバは約3割に減少しています。
【ソウダガツオ(メジカ)】…約54%に減少
◆大蛇行前(2010〜16年):年間平均3766.6トン
◆大蛇行後(2018〜24年):年間平均2019.4トン
【キンメダイ】…約41%に減少
◆大蛇行前(2010〜16年):年間平均324.2トン
◆大蛇行後(2018〜24年):年間平均132.6トン
【ゴマサバ】…約27%に減少
◆大蛇行前(2010〜16年):年間平均365.9トン
◆大蛇行後(2018〜24年):年間平均98.8トン
これらの不漁は漁業者が減少したこともあるということですが、「大蛇行」の影響としては、次のような理由が考えられるといいます。
【大蛇行発生で漁獲量が減少した要因】
▼暖かい海水を運んでくる黒潮が蛇行して沿岸から離れたことで、水温が低下し魚の回遊ルートが変化した
▼黒潮の流れが滞ったことで栄養が豊富な海洋深層水が流れてこなくなり、漁場が悪化した(キンメダイ)
▼海流が弱まったことで、エサとなる生き物が滞留して飽食状態となり、漁に使う撒き餌を食べなくなった(メジカ)
高知県水産試験場によりますと、大蛇行の終息によってこれらの要因が解消され、漁獲量が回復する可能性があるということです。
ただ、これらは、あくまでも大蛇行の前と後を比較した”結果論”。黒潮大蛇行が終息したからと言って、すぐに7年前の海に戻るわけではないので、高知県水産試験場は、引き続き調査を続けていくとしています。
なお、黒潮大蛇行の「終息の兆し」は5月9日に発表されましたが、気象庁は「大蛇行が見られない状態が3か月以上続けば、終息したと判断する方針だ」としていて、「終息」の判断は8月ごろになりそうです。




