「ふと見ると舟がひっくり返っていた。救助された人はとても寒そうで、別の舟の乗客が携帯カイロをあげたり、上着を貸したりして助け合った」。観光客に人気の京都・保津川下りの舟が転覆した28日の事故。目撃した客が当時の様子を語った。

 転覆した舟の後続の舟に乗っていた米国在住の渡辺美智子さん(59)によると、事故現場付近までは穏やかに運航していたが、急流にさしかかったところで、乗っていた舟の船頭や客が騒ぎ始めた。気が付くと転覆した舟が目に入った。

 転覆した舟につかまっていた人は、渡辺さんの乗っていた舟が救助。岸辺に自力で上がった人もいた。

 はぐれた娘を探している様子の男性もいた。渡辺さんは「男性が『助かったか』と叫んだら、娘らしい声で『いるよ』と聞こえた。男性は本当にうれしそうで、思わず涙してしまった」と振り返った。

 救助された乗客や、渡辺さんら他の舟の客は事故から4時間以上がたった28日午後3時半ごろ、京都市・嵐山にある終点近くに到着。多くの人は、毛布にくるまり疲れた様子だった。