人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、自らの体を攻撃する自己免疫反応を抑制するための「制御性T細胞」と同等の機能を持つ細胞を作製したと、京都大などの研究グループが6日付の米科学誌電子版に発表した。人のiPS細胞から作製したのは世界初といい、移植後に問題となる拒絶反応の抑制などに今後役立つ可能性がある。

 制御性T細胞は体外での増殖が困難とされる。京大の金子新教授は、今回開発した手法で同様の細胞を比較的容易に増やせると説明。課題はあるとした上で「自己免疫疾患や免疫関連疾患に広く使われるような、免疫細胞治療への第一歩になった」としている。

 iPS細胞から免疫機能の司令塔となる細胞を培養。そこにタンパク質など四つの物質を用いた試薬を与えたところ、制御性T細胞と同等の機能を持つ細胞を作ることに成功した。

 この細胞に、骨髄移植後などに起こる合併症「移植片対宿主病(GVHD)」の原因物質に結合する人工タンパク質を追加。免疫不全状態のマウスに投与した実験で、GVHDの進行を抑制する効果が得られた。