「ヤミ金融」を営んでいた暴力団元幹部らに高額の送金をさせられた損害は、暴力団対策法に基づき組のトップに使用者責任があるとして、東京都港区の会社と男性役員が、特定抗争指定暴力団神戸山口組の井上邦雄組長らに損害賠償を求めた訴訟の判決が21日、京都地裁であった。池町知佐子裁判長は、井上組長や元幹部ら男性計4人に、請求通り約2億7千万円の支払いを命じた。


 判決によると、原告の男性役員は2020年、金融ブローカーから「京都に最強の資産家がいる」として、当時、神戸山口組系3次団体の組長だった元幹部を紹介され、ブローカーが抱える借金2億5千万円を肩代わりすれば10億円を融資すると説明された。指定口座に送金後、元幹部から「特定の人物による保証が必要」と言われ、融資は受けられず、送金した金も返還されなかった。


 判決理由で池町裁判長は、元幹部の詐欺行為は認められないものの「条件を明確に告げず契約交渉を破棄した」として不法行為を認定。元幹部が「暴力団組織の存在を示して交渉した」とし、井上組長らの使用者責任を認めた。


 暴対法では、組員が指定暴力団の威力を利用して資金を獲得した場合、代表者が賠償責任を負うとしている。原告側の弁護士は「使用者責任を認めた点は評価できる」と話した。