さらに市民が参加しやすい仕組みづくりを進めたい。

 刑事事件に市民感覚を反映させることを目的とした裁判員制度が、導入から15年を迎えた。

 最高裁によると、今年2月末までに裁判員と補充裁判員を務めた人は延べ約12万4千人に上る。成人年齢の引き下げに伴い、昨年から審理に加わることになった18、19歳では少なくとも26人も裁判員を務めた。

 経験者を対象にした調査では、ほとんどの人が「よい経験だった」などと肯定的だったとし、戸倉三郎最高裁長官は「安定的かつ順調に運営されている」と会見で自己評価した。

 ただ、候補者のうち辞退した人の割合は23年に67%で、10年以上も60%台で高止まりしている。

 背景には審理期間の長期化がある。初公判から判決までの平均審理期間は23年で14・9日。導入した09年の3・7日間と比べ4倍になった。事前に争点を絞り込む公判前整理手続きの平均期間もほぼ4倍に膨らんでいる。長期にわたれば、仕事や家庭の都合で関わりにくくなるのは当然だろう。

 国は「裁判員休暇制度」の導入を呼びかけるが、23年度に実施した委託調査によると、導入済みの企業は50・4%。小規模企業ほど普及していない。

 「市民感覚の反映」に、幅広い立場の人の参加は不可欠である。審理の迅速化をはじめとする環境整備がいっそう求められよう。

 結審後も評議の経過や発言内容を口外できない守秘義務について、見直すべきとの声も強い。

 裁判員が何をしているのか理解が広がらず、経験を共有できる機会が乏しい主因とされる。裁判官の関与、誘導といった問題点も見えにくくしている。個人の特定につながる内容以外は語れるよう、透明性を高めてはどうか。

 心理的負担も課題だ。京都アニメーション放火事件で裁判員を務めた会社員は、死刑判決を出した後に「一人の命を終わらせる重みが押し寄せた」と明かした。

 裁判員経験者の有志は今月、死刑について十分な理解がないまま評議に参加しているとして、死刑の執行停止を求める要望書を法務省に提出した。

 長い歴史を持つ米国の陪審員制度では、市民は有罪か無罪だけを判断し、量刑は裁判官が決める。結審後の守秘義務はない。

 裁判員制度を持続可能な仕組みにするには、幅広い議論と不断の見直しが欠かせない。