京都大iPS細胞研究所などの研究グループは、ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の細胞から血小板をつくる装置を大型化することに成功したと発表した。培養装置の容量が従来の5倍以上となり、ヒトiPS細胞由来の輸血用血小板の商用生産へ向けた課題を克服できたという。研究成果が17日、国際学術誌に掲載された。

 少子高齢化に伴って将来的に献血ドナー不足が見込まれることなどから、研究グループはヒトiPS細胞を用いた血小板作製を研究。生体内では血液細胞の一種である巨核球に血液の流れによる刺激が加わることで血小板ができることから、iPS細胞由来の巨核球に同様の刺激を与える培養装置で血小板を作製する手法を確立していた。

 ただ、従来の装置は培養液の容量が最大8リットルで、200ミリリットルの輸血パッケージを作るために4〜5基の装置が必要だったという。濃縮作業の工程を安全に進めるため、装置の大型化を課題にしていた。

 同研究所の江藤浩之教授、岡本陽己研究員らは装置メーカーと協力し、45リットルサイズの開発に着手。従来と同じ設計のままでは刺激が不足して生産効率が低下したため、培養液をかき混ぜるブレードを2枚から3枚へと改良した。血小板の品質を維持したまま、高い生産効率が期待できるという。

 江藤教授は「装置の大型化で作業工程のヒューマンエラーが減り、製造コストも下がる。大量製造への道筋ができた」と話している。