国内外で活躍する太鼓芸能集団「鼓童」(新潟県佐渡市)創設メンバーの一人で、名誉団員の藤本吉利さん(73)=京都府京丹波町=が京丹波町役場で講演した。資金も知名度もなかった初期の苦労や、それでも自身を引きつけてきた太鼓の魅力を紹介。「地球に踏ん張り、宇宙に音を届ける。神と人をつなげられる」と語った。

 藤本さんは、津軽地方の民謡などを初めに演奏。しなやかなばちさばきで重い音を響かせながら、艶のある歌声を披露した。

 講演では、須知高時代に和知太鼓に熱中したと振り返った。卒業文集に「太鼓で世界を回りたい」と書いたという。いったんはホテルに勤めながら演奏を続け、22歳で佐渡島の太鼓集団に参加。「非日常を見せないと、人を感動させられない。鬼にならなければいけなかった」と、厳しい稽古を明かした。

 1981年に仲間と鼓童を結成。当初から力を入れた海外公演は「お金がなく、航空券を片道しか買えなかった。現地で交渉し、出演が決まったので帰国できた」と回顧した。

 世界的に活躍した後の2017年に京丹波町に帰郷。和知中の授業で太鼓を教えている。「できることで町に恩返しをしたい。生涯たたいていく」と意欲を語った。

 質疑で演奏の心構えを問われ、祭りとの密接な関係を踏まえ「譜面を見ながらでは神様と通じない。暗記し、祈るように天へと響かせている」と語った。

 町教育委員会が主催する年間講座「町民大学」の初回として、9日に約70人が聞いた。