社説:年内の学力入試 多様な選考へ高められるか

京都新聞6/16(月)16:00

 文部科学省が2026年度入学の大学入試から、これまでは認めていなかった学力試験の年内実施について、小論文や面接、実技検査などと組み合わせる場合は可能とした。

 「年内入試」と呼ばれる総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧推薦入試)では、既に一部の大学が学力試験を課して問題視されてきた。今回、文科省は現状を追認し、これまで2月以降としてきた一般入試の年内実施を実質的に解禁した形である。

 制度の複雑化が、受験生の過度な負担や高校の教育現場の混乱を招かないよう、関係機関には十分な配慮を求めたい。

 少子化に伴う受験生の獲得競争の激化で、年内入試で早期に入学者を確保しようとする流れが加速している。

 入学者全体に占める割合は03年度では4割だったが、23年度はほぼ半分を占める。

 京都でも京都工芸繊維大と京都大が本年度の入試から、3月に実施していた一般入試の2次試験後期日程を廃止し、その分の募集人員を総合型や学校推薦型などに振り替える。

 年内入試での学力試験を文科省が認めた背景には、「書類や論文、面接だけ(の総合型選抜など)では学力を十分に審査できない」とする大学関係者の声や世論があるようだ。

 実際、1990年代に始まったAO入試が2021年度入試から総合型選抜に改称する中で、撤退する大学もみられた。

 年内入試にも学力試験を入れることが、より多面的な評価につながるのかが問われよう。

 学力偏重になり、多様な人材の受け入れを大きな目的としてきた意義が失われるなら、単なる大学入試の前倒しだろう。高校の授業にもマイナスの影響を及ぼしかねない。

 文科省は、調査書などの書類に加え、論文や面接と組み合わせて丁寧に評価しなければならないというが、どう担保するのか。適切な年内入試に向け、第三者機関によるチェックが必要との指摘もある。

 各大学の個性を尊重しつつ、入学者の「青田買い」に陥らない手だてを考えてもらいたい。

 近年の入試は、大学や学部学科ごとに選抜方式、試験科目が細分化され、受験生は早期の志望先決定と対策を迫られがちだ。

 それに沿い、高校側も知識やテクニックの詰め込み型授業の色合いを強めていると指摘されている。

 年内入試の比重の高まりは、年明けの一般入試の枠を減らし、倍率を上げて「偏差値」という尺度による難易度を保ち、ブランド力を維持したいという大学側の思惑も透ける。

 大学の公共性や役割、内外の環境変化を踏まえつつ、各大学は「受験生本位」の入試とし、豊かな学びにつなげる姿勢が欠かせない。

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