「コップのフチ子」生みの親

 近年、至る所で見掛けるカプセルトイ。そんなカプセルトイ業界に衝撃を与えた商品「コップのフチ子」をご存じですか?

「コップのフチ子」は、文字通りコップなどのふちに飾ることを想定して作られたフィギュアです。2012年7月の発売当初からSNSで拡散され、多くのユーザーから絶大な支持を受けて、累計出荷数2500万個と大ヒットを記録した人気キャラクターシリーズです。

 今回、「フチ子」の生みの親で、玩具の企画・デザインから製造・販売までを行うカプセルトイメーカー「キタンクラブ」の代表取締役・古屋大貴さんに、誕生秘話などについてインタビューしてきました。

 斬新なアイデアでカプセルトイファンたちに衝撃と夢を与え続ける「キタンクラブ」の実態に迫ります!

「キタンクラブ」の代表取締役・古屋大貴さん

「コップのフチ子」誕生秘話

 大ヒット商品「コップのフチ子」の誕生。それは、古屋さんが漫画家タナカカツキさんの作品が好きで、「カツキさんと一緒にカプセルトイの商品作りをしたい」と考えたのがきっかけでした。

「カツキさんの友達の友達までの距離に縮まったタイミングで、カツキさんのオフィスにお邪魔することになったんですが、当時カツキさんは『水草水槽』の作家としても活動されていて、雑誌『BRUTUS(ブルータス)」(マガジンハウス)で連載をしていた背景もあり、オフィスが水槽だらけだったのは印象的でした。初回の打ち合わせでは、カプセルトイ市場で売れているものをざっくばらんに話すくらいで、水槽の話が大枠を占めていましたね(笑)」(古屋さん、以下同)

「続く2回目の打ち合わせは、水草水槽屋で集合して、その時も水槽の話をメインにしていました。お店を出るときにカツキさんから、本題であるカプセルトイのデザイン案を渡されました。カツキさんからもらったデザイン10案を社内で検討し、その結果『フチ子』が商品化まで進みました。『キタンクラブ』で一番ヒットした商品であり、累計出荷数2500万個の売り上げと群を抜いています」

売れるカプセルトイとは? 斬新なアイデアはどうやって生まれる?

 近年、ますます盛り上がりを見せているカプセルトイ。このブームの理由や背景について、古屋さんはどのように分析しているのでしょうか。

「日本に限らず世界的な流行としてファッションやデザインといった分野で、1980〜90年代のスタイルがここ10年くらい牽引(けんいん)している印象があります。いろいろなモノのデザインやトレンドに対して、ノスタルジーを好む傾向の人が増えている点が、カプセルトイブームにも直結しているのではないかと捉えています。そして、ユーザーたちに加速度的に広まるツールとしては『フチ子』も含めて、SNSの力が相まっていると感じています」

 多くの人から注目を集める、つまりヒットするカプセルトイとはどのようなものだと古屋さんは考えるのでしょうか。

「(既成の)概念が崩れた時だと思います。目新しいモノや、刺激を与えてくれるモノ、“普通”から逸脱している突飛(とっぴ)なモノに対して、ユーザーが盛り上がりを見せる傾向にあると思っています」

 ほかでは見たことがないような、想像の斜め上を行くアイデアが魅力の「キタンクラブ」のアイテムたち。このような発想が生まれる背景には、どのような努力があるのでしょう。

「アイデア出しのスタイルとしては、月初に10人ほどのスタッフが集まってブレーンストーミング会議をしています。その場にいるスタッフたちの間で『ワッ!』と湧いたアイデアを商品化するという感じです」

 スタッフ一人一人が、モノ作りに対して「やりたい!」という熱量の強いメンバーが集結していると話す古屋さん。そして、世の中のトレンドがさびる前にスピーディーに商品化まで進められる環境が整っていることが「キタンクラブ」の強みだと教えてくれました。

(LASISA編集部)