競争率が高い世の中において、“選ばれる”ことはなかなか難しいことです。ところが、自分と同じくらいの努力しかしていないように見えるのに、なぜか要領よく選ばれてしまう人も一定数存在するもの。

そのためモヤモヤした思いが残ってしまったりもするわけですが、できれば「なにが違うのだろう?」という疑問を解消して納得したいところです。そこで参考にしたいのが、きょうご紹介する『ビジネスコンペ300戦無敗 選ばれ続ける極意』(井下田久幸 著、朝日新聞出版)。

著者は日本IBMを経てITベンチャーに転職後、幾多の苦難を乗り越えながら、マイクロソフトなどの競合を相手にコンペで300戦無敗という結果を残してきたという実績の持ち主。そうしたなかで「選ばれ続ける」経験を培ってきたということで、本書ではそうして得た「選ばれ続ける」ための秘策を言語化しているわけです。

興味深いのは、「選ばれ続ける」人たちには共通する部分があると指摘している点。

それはその最中には「選ばれる」ことを意識していなかったということだ。結果として、あとから振り返ったら「選ばれ続けて」いたということだ。

その最中には、自分が最大限に能力を発揮することに集中していたということだ。(「はじめに」より)

自身が300戦無敗を続けたときも同じで、「よし、次も無敗記録を継続させよう」などということは微塵も思わなかったのだとか。ただただ必死に活動し、自社の強み、価値をお客様に役立ててもらおうということだけを考えていたというのです。

あとから振り返った時、結果として無敗記録というご褒美がついただけだったと振り返っていますが、たしかにそういうものなのかもしれません。

そんな考え方に基づく本書のなかから、きょうは第2章「2種類の目標を立てよ――『選ばれ続ける人』の行動」に焦点を当ててみることにしましょう。

「選ばれない」率を減らす工夫をする

「強い者が勝つのではない。勝った者が強いのだ」

という言葉が流行った。

これを「選ばれる」というテーマで置き換えて言うならば、「有能な人が選ばれるのではない。選ばれた人が有能なのだ」ということだろう。(66ページより)

営業系の職種ではよく引き合いに出されるフレーズであるようですが、会社から「結果がすべて」「売った者勝ち」「お客様に選ばれた者が勝ち」などといわれるあまり、コンプライアンス違反をしてまでも結果を出そうとした営業を何人も見てきたと著者はいいます。

結果にこだわることを強いるから、その場しのぎの点数稼ぎに走ってしまうのでしょう。しかし、「その場をなんとかする」ことしか考えていないわけですから、それでは実力がつかなくて当然。気づいたときには、「選ばれない人」に成り下がってしまう可能性も少なくないわけです。

その場は何とか「選んでもらえた」としても、長続きはしない。

また失敗から学んで成長していく経験もできなくなる。その場だけ「選ばれる」ことにこだわったせいで、そのあとには、ずっと「選ばれない」人ができあがってしまうことになる。(67ページより)

したがって「選ばれ続ける」人になるためには、「選ばれない」率を減らす工夫を絶えずしていくことが大切。「選ばれない」経験をしたときには反省し、そこから学んで、「同じミスをしない人」になる必要があるということです。(66ページより)

「選ばれる人」は「結果目標」と「行動目標」の2つを持っている

「選ばれない」体験をした際には、なにがいけなかったのかを考え、次のチャレンジではそれを繰り返さないことが重要。とはいえ、その過程において挫折してしまうこともしばしばあるものです。そこが悩みどころであるわけですが、著者によれば「選ばれる」人は、挫折して終わらせないため“目標の持ち方”を工夫しているそう。

きっと多くの人は、「結果目標」だけを持ち、それを頼りに頑張り、その結果に達したかどうかだけで喜んだり、意気消沈したりしているのではないだろうか。

しかし、「結果目標」以外にも、併せて「行動目標」を用意することで、無暗に意気消沈することを避けることができる「行動目標」を持つことで、より具体的な反省材料を見つけることができるようになってくるのだ。(68ページより)

なお、「行動目標」を立てることには、2つの効果があるといいます。

1つは「結果目標」は、他人に「選んでもらえる」ことで達成できることが多く、偶然性にかなり依存した目標だということだ。

この「結果目標」を実現するために必要だと思われる「行動目標」を立てることで、自分だけで実現できる目標に落とし込むことができるようになる。(69ページより)

その結果、“なにをしたらいいか”も明確になり、なにより他責要素がなくなります。そのため集中しやすくなるメリットも大きいわけです。

2つ目は、挫折から回避するための心理的効果だ。

励みにするために「結果目標」はとても大事だが、本番が終わり、結果が「選ばれた」にせよ「選ばれなかった」にせよ、自己評価は、「行動評価」と見合わせることが肝心だ。

こうすることで、自分が原因ではない要因で落ち込むことを回避することができる

また、次回以降のチャレンジに生きて来る。もし「選ばれなかった」としても、もし「行動目標」を達成していたのなら、やるべきことはやったのだから、落ち込む必要はない。(70ページより)

つまりは「結果目標」を目安にしながらがんばり、終わったら「行動目標」で自己評価をする。そうした切り分けが大切だということです。(68ページより)


「選ばれるにふさわしい」と自覚できる程度には努力したつもりなのに、なぜか選ばれなかったというような経験は誰にでもあることでしょう。しかし重要なのはそこから先、つまり「挫折をどう乗り越え、“選ばれる人”になること」であるはず。だからこそ、もしも本当に“選ばれる人”になりたいと感じるなら、本書を参考にしてみるべきかもしれません。

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Source: 朝日新聞出版