2022年は大幅に物価が上昇した年になりました。消費者物価指数の年平均は2021年と比べて+2.5%上昇、これは消費増税の影響を除けば31年ぶりのことです。

日常生活に影響する項目での値上げが激しかったのも特徴です。光熱費は+14.8%アップ、食費は+4.5%アップとなっており、値上げの大きな影響を受けました。(参照:総務省統計局)

日本経済新聞の記事によれば、スーパーマーケットの3分の2以上の商品が値札を書き換えているとのことです。いかに日常生活に密着した商品、特に食品の値上げが大きかったかがわかります。

確かに2022年は大幅な円安がありましたが、最近では一服していますし「2023年は値上げはおしまいか」と思っていましたが、どうやらそうはいかないようです。

2022年の物価高、2023年も(残念なことに)継続中

帝国データバンクのリサーチによれば、まだ値上げをしていない企業が多いことなどを受け、2023年にも値上げ傾向は続くとしています。すでに昨年の値上げペースを上回るペースだそうです。

私たちは今までほとんど経験してこなかった「物価高」とつきあうテクニックを学ぶ必要があります

「普通に暮らすと赤字になる」のが物価高時代の怖さ

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物価上昇というのがあまりにも久しぶりすぎて、私たちは「物価が上がる世界の暮らし方」を知りません。30年ぶりと考えれば50歳以下の社会人は大人になってから一度も物価上昇を経験していないことになります。

まず、物価が上昇する時代というのは、「普通に暮らしているとなぜか赤字になる」と覚えておいてください。具体的には、次のようなことが起こっていると言えます。

手取り月20万円で日々をやりくりしていた

物価が5%上昇したら月21万円に生活コストが値上がりする

いつも通りの買い物をしているはずが1万円赤字になる

何もゼイタクなことをしたわけでもないのに、値上がりが行なわれたおかげで、なぜか赤字になっていくわけです。

これは怖い話で、普通に買い物をしてお会計をしていても、値札が高く貼り替えられているので、出て行くお金がじわじわ増えていくわけです。そうなると基本的には3つの対策を考える必要があります。

  1. 月21万円(つまり1万円多く)稼いで赤字にならないようにする
  2. 月20万円で暮らせるよう(つまり1万円少なく)工夫して赤字にならないようにする
  3. 月20.5万円稼いで、月20.5万円で暮らし、赤字にならないようにする

3つ目のように、両方組み合わせて対策をするのもアリですが、いずれにせよ「収入を増やす」か「支出を減らす」ことと向き合っていくのが物価高時代のテーマとなります。

最初にしっかりチェックしたい「4月の給料の増加幅」

多くの企業では、4月に少し給料が上がると思います。これは多くの会社は3月末決算であり、会社の年度末と昇給タイミングが一致しているためです。

このとき、昇格とは関係なく全社員の賃金水準がアップすることがあります。ベースアップといわれるものです。物価が上昇する時代では、物価上昇率に見合う給与アップをしなければ実質マイナスになってしまうため実施するものです(会社によっては定期昇給(年齢が高まるごとに少し給与が増える)と組み合わせて行なうこともあります)。

企業の体力や業績動向などによって、賃上げの有無・幅は異なってきますが、大企業では5%くらいの賃上げが実現するケースもあるそうです。2022年度の値上げ分をカバーし、かつ2023年度に値上げがあってもその一部はカバーできるというイメージでしょうか。

この春は、多くの会社がベースアップに踏み切ると思われます。まずは会社の説明をチェックし(あるいは労働組合の説明を聞き)、どれくらいの上げ幅となっているかよく確認しましょう。

給料がアップしなかった場合

このとき、問題が1つあります。今年給料がアップしなかったか、1〜2%くらいしか増えなかった場合です。この場合、「来年こそは上げてくれる」のか「そもそも会社に体力がなくて無理」なのか、冷静に見極めたいところです。来年度も賃上げゼロだったら、5%くらい給料が減らされたのと同じになってしまうからです。

金額が減っていなくても「実質的に減った」というのは、物価上昇時代の給料の注意点です。あまりにも増えない場合は、本気で転職を考えたほうがいいかもしれません

そしてもう1つ、自分自身が高い人事評価を受けて昇格・昇給を果たすこともあります。これは全社員同時ではなく、個々人に行なわれるものですが、こうした昇給のチャンスがある人は、その機会をしっかりつかみとれるよう、仕事を頑張っていきたいものです。

今年の値札と来年の値札、頭の中でアップデートが必要

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もう1つの対策は節約。1万円値上がりしたなら1万円生活コストを削ればなんとかやりくりできるわけです。

お店の値札をよく観察してみると、値上げの影響が現れはじめています。たとえばお菓子。スーパーやドラッグストアの棚を覗いてみてください。

ちょっと前までは「税込100円」あるいは「本体価格98円」のような商品がけっこうありましたが、最近では減ってきていることに気づくはずです。

もはや「お菓子は100円でおつりがくる」というイメージではないのです。わが家も子どもにお菓子を買いに行かせるとき「100円渡せば買えるだろう」と考えないようにしています。だって「108円だったから買えなかった…」と泣いて帰ってくるのはかわいそうですからね。

こういう「10〜15%くらいの値上げ」がまさに「頭の切り替え」が必要なところです。いつもどおりカゴにぽいぽい放り込んでお会計をするたび、数百円多く払うことを繰り返し、気がつけば月に1万あるいはそれ以上出費が増えていくのです。

家計簿アプリは必ず活用する

オススメは家計簿アプリの導入です。銀行やクレジットカードの利用履歴を自動で吸い取って記帳してくれるタイプのアプリなら、負担も軽く家計の「見える化」が実現します。Zaim、マネーフォワード ME、Moneytreeが代表的なアプリです。

自動記帳してみて、あなたの予想より1万円食費が高かったなら、まさにそれが値上げの影響ということになります。

ネットの買い物で安値をリサーチするのと同様に、スーパー、ドラッグストア、ディスカウントストアの価格にも意識を向けてみましょう。

また、「買わなくてもいいもの」を買わないクセをつけるのもいいでしょう。なんとなく買ってなんとなく食べているお菓子は、そもそも買わなければ支出も減るだけでなく、あなたの体重も減るかもしれません。

ただし、物価高が何年も続けば節約にも限界があります。「支出は1円も増やさないままずっとやりくりする」と無理をしすぎないようにしてください。

実質マイナス。増えない「定期預金」対策もマスト

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最後にもう1つ。物価上昇がスタートした今の時期に怖いのは「安全・確実」にお金を増やす手段であったはずの定期預金です。

物価上昇が年2.5%あったということは、定期預金の金利も同じくらいなければ実質マイナスです。しかし、現在の金利はまだ低いままです。メガバンクの金利は年0.002%となっており(執筆時点)、「安全だが、確実に実質マイナス」になってしまっています。

預金金利は随時改定されていくので、将来的には物価上昇率程度に高まりますが、今はその端境期です。また国のマイナス金利政策が終わっていない関係もあり、この「実質マイナス」がしばらくは続くことになります。ここは要注意です。

対策1. 金利上昇→新しい金利の定期預金に振り替える

対策は2つあります。1つは、高金利になったタイミングで預け替えをすることです。半年から数年程度のタイムラグであればなんとかカバーできますから、今後金利が上昇した場合は「年0.002%で5年定期」のような長期縛りはせず、新しい金利の定期預金に振り替えます。3カ月定期や6カ月定期にしておき、自動的に金利がアップデートされていくようにするのもいいでしょう。

対策2. 「投資」を資産管理に組み込む

もう1つの方法は、物価上昇率を上回る利回りを期待し、「投資」を資産管理に組み入れることです。一般論としては株式投資などのリスク資産の上昇率は、賃金上昇率(これと物価上昇率、預金金利は近しい数字となる)を上回るため、投資資金は物価上昇を上回る有力な資産の置き所です。

ただし、短期的には元本割れする可能性があることは含んでおきましょう。全額を投資にいきなりシフトするのではなく、部分的に投資し「実質マイナスだけど元本割れしない定期預金」+「元本割れする可能性もあるけど中長期的には物価以上の利回りを得る投資」の組み合わせを考えてみるといいでしょう。


私たちにとっては未知の領域である物価上昇ですが、世界的には年3〜5%くらいの物価上昇がずっと続くのは標準的です。デフレが続いていた日本も、こうした流れに無関係ではいられないということなのでしょう。

ぜひ早い段階で「物価高の時代に慣れる」感覚を身につけていってください。

山崎俊輔

フィナンシャルウィズダム代表。ファイナンシャルプランナー。夫婦で共働き、共家事、共育児しながら子どもふたりを育てている。

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Source: 総務省統計局, 読売新聞オンライン, 日本経済新聞, 帝国データバンク