新しく始まった特集『「好き」だけ残して、シンプルに生きる』は、ライフハッカー[日本版]の新コンセプト「WORK FAST, LIVE SLOW.」を体現するようなキーパーソンのインタビュー集です。

第4回は、Zアカデミア学長で、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部長など数多くの肩書を持つ伊藤羊一さんのインタビュー。今回は前編です(後編はこちら)。

伊藤羊一(いとう・よういち)

Zホールディングス株式会社 Zアカデミア学長/武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長

日本興業銀行、プラスを経て2015年よりヤフー。現在Zアカデミア学長としてZホールディングス全体の次世代リーダー開発を行う。またウェイウェイ代表、グロービス経営大学院客員教授としてリーダー開発を行う。2021年、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)学部長就任。代表作に50万部超えのベストセラー『1分で話せ』(SBクリエイティブ)。ほかに『1行書くだけ日記』(SBクリエイティブ)『ブレイクセルフ』(世界文化社)など。

のっけから特集タイトルを否定するようですが、「自分が好きなことを選び続けた結果、今の場所にいる」という感覚は、実はまったくなくて。

とにかく目の前の仕事をがむしゃらにやっていたらこうなった。そんな感じです。

今ではZアカデミアの学長、グロービス経営大学院の客員教授、2021年に新設した武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の学部長などいろいろやっていて、「伊藤さんはすごいですね」なんて言われることもあるけれど、とんでもない。全然すごくないです。

社会人になりたての頃は、暗黒の時代を過ごしていたんです。

出社拒否になった銀行員時代、見出した仕事の「原点」

就職活動の頃は、ちょうどバブル絶頂期。もともとコミュニケーションが苦手だった僕でも、銀行への就職がすんなり決まりました。

でも、なぜ仕事をしなきゃいけないのかよくわかっていなかったし、同僚や上司との人間関係もうまく築けなかった。そんなある日、取引先で突然吐き気に襲われたんです。

それ以降、毎朝出社しようとすると吐き気が襲ってきました。完全に精神をやられていたのですが、当時はメンタルヘルスに対する理解が乏しかった時代。しばらく出社拒否で休んだあと、毎朝吐きながら、 なんとか仕事をこなす毎日でした。

転機となったのが、あるマンションデベロッパーへの融資案件。時代はバブル崩壊直後で、その会社にとってもバブル後、初の開発案件でした。僕はまだメンタル不調に苦しんでいる中でしたが、どうにかやってみようと、自分なりに動き始めたんです。

でも自分だけじゃどうにもならないから、とにかく社内でいろいろな人に相談しまくりました。そうしたら上司が「まずは俺を説得してみろ」って、壁打ち相手になってくれたんです。

そのデベロッパーの経理部長もすごくいい方で、まだ何のスキルも力もない僕になぜか期待してくれて、いろいろ情報をくれました。先輩たちにもたくさん助けてもらいました。

多くのサポートのおかげで融資が通り、無事マンションが竣工。現地を見に行ったんですが、そのとき中から笑顔の家族連れが出てきたんです。それを見た瞬間、感動しちゃって。

ああ、仕事ってこういう笑顔に貢献するためのものなんだなって気づきました。今でもそれが僕の仕事の原点になっています。

「できる」が増えれば「意思」になる

大事なことは「好きか嫌いか」ではなく、とにかく目の前の仕事に精を出すということだと思っています。

与えられた仕事を一生懸命やっていれば、そのうち成果が出る。成果が出てきたら、お客さんに「ありがとう」と言われる。それがうれしいから、さらに仕事に精を出す。その繰り返ししかないと思っています。

成果を出すというのも、最初からゴールを設定してそこに向かって走る、なんてことじゃなくて、もうただひたすらに、がむしゃらに。そうしたらいつの間にかここまで来ていた、そういうもんじゃないかなと。

「Will, Can, Must」って言葉があって、「Will」はやりたいこと、「Can」は自分ができること、「Must」はやらなければいけないこと。最初から「Will」がある人はいいですけど、ほとんどの場合そんなものはない。

だったら、「Must」を一生懸命やって、結果「Can」が増えると周りから喜ばれる。そこから「Will」につながって、そこで初めて既成概念にとらわれない自分なりの方法が見えてくるんだと思います。

チャンスをつかむセンスの育て方

数多くの教鞭に立つ伊藤さんも、もともとはコミュニケーション下手だった Photo: 伊藤羊一さん提供

ガムシャラにやっていると、当然、うまくいくことといかないことの間をいったりきたりするわけです。その中で、物事を察知するセンスが鋭敏になってくる。

チャンスが訪れる局面って誰にでもあると思うんですけど、センスが鋭敏になっていると、このチャンスに気付けるんですよね。

僕のこれまでのキャリアって、すべて人とのつながりでできている。銀行からプラス株式会社という文房具やオフィス用品を取り扱う企業に転職した時も、オーナーと出会って「この人はすごい!」って感動したのがきっかけでした。

そういった人との出会いも、目の前の仕事にまい進するからこそ、巡ってくるものではないでしょうか。

銀行員時代のマンションデベロッパーへの融資の話にしても、僕が必死に奔走していたからこそ、上司も取引先の担当者も助けてくれた。やる気のない人間になんて、誰も手を貸してくれませんから。

ロジカルシンキングの衝撃

よく「伊藤さんが変わったきっかけは?」と聞かれるのですが、ひとつ大きかったのは、ロジカルシンキングができるようになったこと。「この問いに対する答えはこれだよね」ということを、筋道立てて考えるスキルが身についたんです。

プラスに勤めていた時、もう30代後半でした。物流を担当していたんですが、それまでの銀行の仕事とは180度違うので、どうしたらいいのかまったくわからなくって。でも経験者の先輩方は、一発で答えを導き出すんですよね。

経験しているから答えが出る。それで僕は頭で考えて、同じ答えを出そうとしました。でもそれには、むちゃくちゃ時間がかかるんです。これでは永遠に差は埋まらない。

「それならグロービスに行ってみなよ」って、友人がすすめてくれたんです。今では僕も講師をさせてもらっているビジネススクールなんですが。

そこの講義では、まず一つのテーマについてみんなで意見を出し合う。そのあと講師が生徒から出た発言をグルーピングしていくんです。で、「つまり、皆さんが言いたいのは、この3つに分かれますよね」って、ロジカルシンキングを活用することできれいに整理されちゃって。

もう、ビックリ。「頭のいい人は、こうやって考えてたのか! ずるいよ!」って思って(笑)。そこから勉強を始めたんです。

量をこなせば仕事のキャパシティは広がっていく

僕はスクールに通ったけど、踏み出す一歩って、何もたいそうなことじゃなくていいんです。

毎日歯を磨くくらいの感じで、「メールは来た瞬間に返す」「いきなり要件に入らないで、まず『お疲れ様です』から始める」「毎日メールボックスの未読フォルダを空にしてから帰る」とか、そんなことでいい。

なんでも繰り返していけば、それが習慣になるものです。来た案件はすべて「YES!」と言って引き受ける、というのも、まず取り組めることかもしれない。僕の場合、引き受けてから「さあどうしよう」って困ることも多いんですけど(苦笑)。

でもその繰り返しで、自分のキャパシティは確実に広がっていくと思います。

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▼後編はこちら

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