自覚があるかどうかわかりませんが、人間は常に先々の記憶に影響を及ぼすように努めています。

たとえば、明日に備えてメモやToDoリストを残したり、スマホを取り出して特別に鮮やかな日没をわざわざ撮影することもそれに該当します。

しかし、それ以外にもできることがあると、記憶を研究しているケンブリッジ大学の認知神経科学の教授であるMichael Anderson博士は言います。

Anderson博士は、New York Timesとの最近のインタビューで、どの記憶を維持するか決定することに加えて、何を忘れるかもある程度コントロールできると説明しています。

その仕組みと、それを試してみる方法を以下にご紹介します。

記憶がよみがえる仕組み

人間の記憶は、Anderson博士のような認知科学者が「検索手がかり」と呼ぶものによって形成されます。

「検索手がかり」とは、生活の中の過去の瞬間、出来事、経験と私たちをつなげる感覚的な手がかりです。

たとえば、ココナッツの匂いがするたびにある休暇のことを思い出したり、ある曲を聞くたびにわかれた恋人のことを思い出すなどがそれに当たります。

そう、「検索手がかり」とは「トリガー(引き金)」と考えられるものです。

忘れたいことを忘れる方法

すでにお察しかもしれませんが、特定の「検索手がかり」や「トリガー」を回避するだけではあまり効果はありません。

いつ別の「検索手がかり」や「トリガー」に遭遇するかわからないからです。

Anderson博士は、代わりに「動機性忘却」と呼ぶテクニックを推奨し、「検索手がかり」を避けるより、「検索手がかり」にもっと慣れることを提案しています。

そうすれば、「検索手がかり」に対する脳の反応の仕方を変えることができます。

ここから先は、2つの選択肢があります。

1つ目は「思考置換」と呼ばれるものです。The Timesの記事から、「思考置換」の働きを示す例を以下に引用します。

姉とひどく口論したせいで、姉に会うたびにそのことを思い出してしまうなら、別のもっとポジティブなことを連想するように意識を集中するように努めましょう。

脳が彼女の顔を見たとき、喧嘩でなく、もっと良い記憶を先に思い浮かべるようになるまで練習するのです。

もう1つの方法は「直接抑制」と呼ばれ、Anderson博士はこれを、「心の中で挙手して、『ダメ、私はそのことを考えたくないです』と言うこと」と説明しています。

忘れたいことを忘れる能力は鍛えることができる

残念ながら、意図的に物事や人物のことを忘れる能力は人によって異なるとThe Timesは報じています。

これは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の観点からは理にかなっています。

PTSDでは、忘れたいのに、過去の衝撃的なできごとに関連する心配事やイメージに悩まされます。

そして、当然のことながら、多くのストレスにさらされていたり睡眠不足だと、動機性忘却の実践はずっと困難になります。

では、心をかき乱す記憶を完全に取り除けないのに、なぜ動機性忘却にこだわる必要があるのでしょうか。

Anderson博士によると、動機性忘却を実践すると、ネガティブな記憶が侵入する範囲を制限できるようになり、ひいては、そうした望ましくない記憶のネガティブな影響を制限できるようになるからです。

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Source: University of Cambridge, New York Times