人生を変えたいとき、頭に思い浮かぶのは仕事やお金、健康のことかもしれません。けれどもうひとつ、人生を変えるために重要なのは「家庭生活をよりよくする」こと。『家族全員自分で動く チーム家事』(三木智有 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者はそう主張しています。

もちろん家庭生活は仕事にも、お金にも、健康にも、習慣にも影響を及ぼします。2010年に内閣府が行った調査によると、「生活の満足」は「職務満足」「仕事のパフォーマンス」によい影響を与えている可能性が高いとされています。こうした調査結果を持ち出すまでもなく、家庭内が平和で助け合えているのと、不満を言い合ってギスギスしているのとでは、人生のパフォーマンスが違ってくるのは想像にかたくありません。(「はじめに」より)

にもかかわらず、これまで家庭の運営は女性の課題であるように考えられていたかもしれません。しかし、本来は女性だけに責任がかかるものではなく、そもそも家族の人生にかかわる話。したがって、それぞれの人生がよりすばらしいものになるための話であるべきだということです。

今では当たり前の価値観となったワーク・ライフ・バランスですが、これまでの取り組みや情報は「仕事を効率化させて、家庭時間を増やす」というところで止まっていました。では、そこで生まれた家庭時間をどう活用すれば家庭の運営は心地よいものになるのでしょうか。

本書は、そんな人生を変える家庭生活の改善方法について書いた本です。(「はじめに」より)

著者は、日本唯一の「家事シェア研究家」。2010年に活動を開始し、翌年にはNPO法人「tadaima!」を立ち上げ、本格的に家事シェアを広める活動を始めた人物です。そうした経験を通じて得たノウハウをもとに書かれた本書のなかから、きょうは「チーム家事」の4つのスタイルをご紹介しましょう。

「チーム家事」とは、家事育児がワンオペではなく、チーム化された状態を指すもの。「家事育児をひとりに頼り切らない状態」をつくることが大切だという考え方であり、大きく①シュフ型、②担当型、③ハイブリッド型、④自立型の4スタイルにまとめることができるというのです。

① シュフ型:指示を出して家庭を回す

シュフ型は、家庭の中に家事育児を中心的に担っているシュフ(主婦・主夫)的な役割の人がいて、その人が他の家族に指示(お願い)を出しながら運用しています。

そのため専業家庭や、夫婦での家事スキルに大きな差がある場合、また家事に対してのこだわりが強い人がいる場合になりやすいスタイルです。(26ページより)

このスタイルの運用をスムーズに行うために大切なのは、「どのようなときに自分や家族がストレスを感じるか」を把握しておくこと。シュフ型は、指示を出したり出されたりするときにお互いがストレスを感じることが多くなるもの。だとすれば、指示のストレスを解消すればいいということです。(26ページより)

② 担当型:個人の責任で家事をこなす

担当型は、「掃除はパパ担当で料理はママ担当」というように、それぞれのタスクに担当者を決めている運用方法です。「子どもの寝かしつけは日替わりで担当」「土日はパパが料理担当」のような交代制の場合も含まれます。共働き家庭や、家事の得意不得意で分担をしたい方などは、この担当型で行うことが多いです。(30ページより)

担当型では、担当者の自主性がポイント。自分が担当している家事に責任感を持って取り組めるか、「なんだかんだ尻拭いはパートナーがしてくれる」と甘えながら取り組むかで、満足度は大きく違ってくるということです。(30ページより)

③ ハイブリッド型:ベースはシュフ型、一部担当型

ハイブリッド型は、シュフ型をベースに、部分的に担当型を取り入れているパターンです。たとえば、基本的な家事はママがやっていて指示も出しながら、ゴミ捨てとお風呂掃除はパパが担当している、というようなスタイルです。

じつはわが家も現在はハイブリッド型。僕がシュフ的な役割をしながら、妻が洗濯物と食器洗いを担当しています。掃除は休日の午前中にやることが多いのですが、そのタイミングで娘がトイレ掃除をやり、妻が排水溝の掃除をします。トイレ掃除や排水溝掃除は彼女たちの役割ですが、僕が掃除するタイミングを指示する、というシュフ型マネジメント方法をとっているのです。(34ページより)

ハイブリッド型は、シュフ型と担当型のよいところもリスクも併せ持ったスタイル。パートナーの家事への自主性は高いのに時間がないという方や、自分は家事のこだわりが強いけれど、手放せるところはできるだけ手放していきたいと考えている方にはピッタリだといいます。

うまく運用するためには、全体的なマネジメントについてはシュフ型を参考にしつつ、担当を決めている部分については担当型を参考にするとよいようです。(34ページより)

④ 自立型:気づいた方が、気づいたときにやる

自立型は、それぞれが自分で考えて、必要な家事育児を行うスタイルです。自立型は目指して実現するというよりも、価値観の近い夫婦が自然とそうなっているケースのほうが多いです。一見理想的なスタイルではありますが、他のスタイルと比べて実現がとても難しいのが実状です。

価値観や生活に求めるものなどが近い夫婦、お互いに自然と気遣いができている夫婦、時間的制約が調整しやすい働き方の人たちが自立型になりやすいです。(37ページより)

自立型が破綻するのは、「気がつく人」の偏りが生じたとき。また「気がつく」といっても、どこが家事の発動ポイントになるかはそれぞれ異なるもの。そのため、自立型をうまく運用するためには、「家事育児の発動ポイントのすり合わせ」が大切なのだといいます。

たとえば「自分ばかりが片づけている気がする」というような負担の偏りを感じたのであれば、「寝る前にテーブルが散らかっているのは嫌」「家を出る前には、散らかっていない状態にしておきたい」など、自分がどんなときに「片づけなきゃ」と思うのかを言語化していけばいいのです。

つまりはそれが、自分にとっての「家事を発動するポイント」。同じように相手にも相手なりの発動ポイントがあるはずなので、それを確かめながらすり合わせをしていけばいいということです。(36ページより)


家族や夫婦のかたちはさまざまで、家事育児についても「こうすればうまくいく」という絶対的な答えがあるわけではありません。だからこそ本書を活用しながら、自分たちなりのベストな家事シェアのあり方を見つけ出したいところです。

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Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン