リモートワークによる運動不足に悩む人が増えていますが、重い腰がなかなか上がらないというのが人情というもの。それなら、文字通りまずは「腰だけ」上げてみませんか?

この「『立つこと』から始める運動習慣」特集では、座りっぱなしがもたらす深刻な健康被害をお伝えするとともに、まずは「立つ」という最小単位の行動から運動習慣を始めることを提案します。もちろんそれ以降のステップアップとなる運動も含め、ぜひお試しください。

第4回は、アスリートを中心にトレーニングや栄養、生活習慣に関する指導を行なう寺田健太郎さんが登場。「立つこと」に興味を持った読者の皆さんがもう少し本格的に運動したいと思った時、運動経験がなくても着実な効果を得られる運動法や生活習慣のポイントを教えてもらいました。今回は前編です。

寺田健太郎(てらだ・けんたろう)

日本体育大学大学院修了、柔道、水球、カーリングといった多岐にわたる競技の日本代表選手のトレーナーを担当し、東京オリンピックで金メダルを獲得した阿部兄妹のトレーナーも務める。柔道整復師、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、NSCA-CSCSなどの資格を保有。2019年には神奈川県クラス別ボディビル選手権大会70kg以下級で準優勝。運動、栄養、休養に関する豊富な知識を生かして自らも鍛え上げている。現在は「ACTIVE RESET」「STUDIO BAZOOKA」などでパーソナルトレーナーとして指導を行なう。

「運動・食事・睡眠」の正しい知識が大切

東京2020オリンピックで柔道金メダルに輝いた阿部一二三・詩選手。そんな彼らのトレーナーという大役を担ったのが今回お話を聞いた寺田さん。体に関する多くの資格を保有しながら、ボディビルダーとしても大会に出場して実践するアスリートです。

パーソナルトレーナーとして一般向けに指導を行なう中で感じるのが、「多くの人が基礎ができていない状態で取り組み続けてしまう」ということ。

「とにかく筋トレすれば筋肉がついて理想の体になる」と自己流でトレーニングを始めてしまうと、運動しても効果が出にくく、理想とは違う体へと向かってしまいます。また、健康を目的とする場合も、基礎ができていないとかえって体を傷めてしまう事態につながりかねません。

結果、せっかく抱いた「運動したい」「体を変えたい」という気持ちが消沈してしまってはもったいないですよね。

身につけたいのは、自分の目的にあわせた正しい運動法。さらにその運動の成果を高める「食事と睡眠」の知識も知っておきたいところ。

運動・食事・睡眠。この3つをあわせて意識することで相乗効果が生まれ、「運動を楽しめるだけでなく、見た目も変わり、仕事のパフォーマンスも上がる。そんな良いサイクルが生まれますよ」と寺田さん。

運動・食事・睡眠の3つから、今回はまずメインとなる「運動」について解説します。

どんな体になりたい? 目的別の「適切な運動法」

「体を鍛えたい」と寺田さんの元を訪れる人の目的は、大きく以下の3つに分けられます。もちろん、それぞれ運動のアドバイスも変わってくるのだそう。

目的に応じた適切な運動法

1. 筋肉を大きくしてムキムキの体になりたい

→有酸素運動は極力やらずに、筋トレなどの無酸素運動を

2. とにかく脂肪を落としたい・痩せたい

→有酸素運動をメインに行ない、筋トレは週1〜2回程度に

3. 筋肉量を残しつつ、脂肪を落としたい

→筋トレを中心に行ないつつ、毎回軽い有酸素運動を取り入れる

「有酸素運動」とは、歩く、走る、泳ぐ、自転車を漕ぐ、縄跳びといった、長時間継続して行なう運動。

有酸素運動は「20分以上やらないと意味がない」などと聞くことがありますが、10分など20分に満たない運動でもちゃんと効果はあるのだそう。

特に体脂肪を落としたい人は、「20分以上の時間を確保できないからやらない」という選択ではなく、「10分でも歩いて移動する」「エスカレーターよりも階段を使う」といった選択をするだけでも良いでしょう。

また「無酸素運動」は、全力もしくはそれに近い力で、筋肉を短時間使う強度の高い運動で、筋肉量を増やし、基礎代謝を高めるもの。

スクワットや腕立て伏せなど、いわゆる「筋トレ」が無酸素運動の代表的な一例です。

また、短時間で消費カロリーを増やすことが可能になる「HIIT(ヒート)」と略される高強度インターバルトレーニング(High Intensity Interval Training)は、無酸素運動と有酸素運動の合わせ技で、時間がない中でボディメイクをしたい人には必見の方法。

ライフスタイルにあわせて、どのようなメニューが継続しやすく、効率的に体を変えられるのかを考えて、個々に合ったプランを考えていきたいですね。

効率良く体を鍛え上げる「2つのポイント」

Image: Shutterstock

けがを防ぎ、効率良く運動の効果を得るために「ちょっと意識してみてほしい」と寺田さんがアドバイスするのは、次の2点。

正しいフォーム

1つ目は「正しいフォーム」です。

当たり前ですが、胸に厚みをつけたいのに脚の筋肉をよく使うスクワットをしても意味がありません。また、同じ胸筋でも上部か下部か、内か外か、同じ筋肉でも効かせたい部位を細かく分けるためにフォームは変わってきます。

また、正しいフォームは体の故障やけがを防ぐためにも大切です。

正しいフォームでトレーニングをするために必要となるのが、体の柔軟性。

今はさまざまなトレーニング法が動画などで学べますが、自分の体で再現できるかというと話は別。体が硬いことで、思ったような動きができていない人も多いそうです。

少なくとも、運動前後にはストレッチや準備運動を取り入れることを寺田さんはすすめています。運動前はトレーニング効率の向上、運動後は次の日に疲れを残さないためのリカバリーを目的に行ないましょう。

限界まで追い込む

もう1つ、筋肉をつけたい人に挑戦してほしいのが「追い込み切る」こと。

オールアウトという言い方もされますが、意味は「へとへとになる」、つまり「もう限界!」と思ってからも動作を数回続けて力を出し切ることを指します。

腕立て伏せや懸垂、スクワットなどの無酸素運動をする時、限界からあと1、2回だけがんばってみてください。

そうすることで筋肉は効率的に大きくなりますし、できる回数が増えていくことも運動を継続するモチベーションにつながります。

ただし、無茶は禁物。無理にもう1回やろうとしてフォームが崩れれば、関節や筋肉に過度の負担がかかり、けがのリスクも高まります。

重い負荷をかけて少ない回数で筋肉をつけるトレーニング法もありますが、「軽い負荷でも限界までやれば、筋肥大することがわかっているので、自宅など器具がない環境で鍛えるのであれば、回数を増やして追い込み切ったほうがいいでしょう」とアドバイスをくれた寺田さん。

まずは自分の限界を知ることから始めてみるのもいいかもしれませんね。

「鍛えられる」以外の副産物も運動の魅力

Image: Shutterstock

元々は筋トレがあまり好きではなかったと語る寺田さん。しかし、周囲からの「体つきが変わってきたね」という言葉に励まされつつ、さらには運動効果による心身の調子の良さに気づき、どんどんトレーニングにのめり込んだのだとか。

実際、寺田さんがトレーナーとして指導したお客さまからは「筋肉がついて自信がつき、仕事の質も上がった」「筋肉量が増えて趣味のゴルフでもスコアが伸び、さらに楽しめるようになった」など、「体が鍛えられた」結果以外のうれしい報告も寄せられるそうです。

運動を始めるきっかけは人それぞれですが、続けてこそ効果は表れるもの。運動を楽しく続けるためにも、心理的特性を生かした目標設定も大切なのかもしれません。

また、筋肉量が少ないために冷えや肩こり・腰痛などを感じやすい女性は、体を鍛えることで不調が減ったり、姿勢が改善されたりとメリットはたくさん。

なお、女性の中には「鍛えすぎて筋肉質になるのは嫌」と筋トレを避ける人も多いそうですが、「ちょっとやそっとじゃムキムキにはならないので安心してください(笑)」と寺田さん。

運動を始めようと思ったら、まずはパーソナルトレーナーの指導を受けながら目的に応じた運動内容や、正しいフォームを習得することが理想の体づくりへの最短距離。

でも、自己流で「歩く」ことから始めてみて、体を動かすことの楽しさを感じられたら、それぞれに目標を決めてトレーニングを始めてみるというのもいいと思います。

努力した分は必ず成果として出ます。そのわかりやすさも運動の魅力ですね。

***

後編(10月21日公開予定)では、トレーニングの効果をさらにアップさせる「栄養」と「休養」について寺田さんに教えてもらいます。それまでに、どのように体を動かしたいか? どんな体になりたいか? ぜひイメージを固めておきましょう。

▼こちらもおすすめ

新しい筋トレと栄養の教科書 1,650 Amazonで見る 1,650 楽天で見る !function(t,e){if(!t.getElementById(e)){var n=t.createElement("script");n.id=e,n.src="https://araklet.mediagene.co.jp/resource/araklet.js",t.body.appendChild(n)}}(document,"loadAraklet")

Source: ACTIVE RESET, STUDIO BAZOOKA