愛する人を自分のものにするため、凶行を繰り返す女性の姿を描いた映画『リカ 〜自称28歳の純愛モンスター〜』。2019年10月にドラマ版がスタートし、誇大妄想と超人的パワーを持つ主人公・リカに扮した高岡早紀の怪演が話題となった。今回の劇場版では彼女の狂気性がさらにエスカレート。自分の行方を追う刑事たちを翻弄しながら、運命の出会いをつかみとろう突っ走る。今回は同作のことだけではなく、発売したばかりのエッセイやブログの話題もまじえて高岡に話を訊いた。

取材・文/田辺ユウキ 写真/木村正史

「『私は私だから』と考えられるようになった」

──常軌を逸する行動を起こしてまで、愛を手に入れようと突き進むリカ。彼女の狂気性もふくめて、演じていておもしろい役だったのではないですか。

怖いほどピュアですよね。自分が欲している愛に対して、なんのブレもなく突き進んでいく。私自身もある意味、リカの気持ちと同じように突き進んでいきやすいところがありますし。自分と重なる面も含めておもしろかったです。

──ピュアすぎるがゆえに、凶暴性がふくらんでいくという。

凶暴性は確かにリカの本質。だけど誰だって恋愛において一歩先へ踏み込めば、リカのようになる可能性はある。嫉妬心はその象徴ではないでしょうか。実はみんなギリギリのラインを生きているのかもしれない。凶暴ではあるけどそんなリカに共感できるのは、誰もが実は思い当たることが多かれ少なかれあるのだと思います。

──リカを逮捕しなければならない刑事・奥山(市原隼人)も、彼女の求愛を前に惑わされていきます。

奥山はまるで、自分が間違っているような感覚になっていきますよね。

──リカはいろんな人を惑わせていく。そういえば高岡さんはエッセイ本『魔性ですか?』で、ご自身がかつて人を惑わせるという意味で「魔性の女」と呼ばれていたことに抵抗があったと書いていますね。

私の場合「魔性」という言葉のもともとの意味とは違う表現をされていた気がします。悪い意味で「人を惑わす女」と表現されていた時代があったと思います。そのときは「嫌だな」と気にしていましたし、現在もそう呼ばれて受け入れているわけではないんです。だけど私のことをそう感じているなら、それでも良いかなって。どう言われても「私は私だから」と考えられるようになりました。でも決して開き直っているわけではないんです。

──本にも、そうやって言われることについて「傷つくことは傷つく」と書いていますよね。

そうなんです。だけどどんなことを言われても、自分の人生や毎日を「楽しい」と感じていれば、そんなことはあまり気にしなくなるもの。「魔性」という言葉は「高岡早紀」という女優が言われることであって、私は「高岡佐紀子(本名)」として人生を楽しみたい。そうやって俯瞰で物事を見るようになりました。むしろ「高岡早紀」に対して、「がんばれ」と言える立場になってきました。

──YouTubeの映画公開記念番組『リカの部屋』では、取材記者のなかに「高岡早紀は怖い人ではないか」と先入観を持ってインタビューに来る人が多いとも語っています。

リカのような役をやっているから仕方がないですよね(笑)。それにどんな仕事でもそうかもしれませんが、経歴が長くなると、「この人は怖い」と印象づけられることもあるはず。そういう先入観も、こうやってお話をするなかでちょっとずつ変わってくれたら良いかなって。そのまま「高岡早紀は怖い」と感じたなら、それでも良いですし。

「人って誰かと一緒に過ごすことが大切」

──でも高岡さんのブログを読めばお人柄が分かりますよね。プライベート感が満載ですごくハートフルですし。特に子育てについての話がおもしろいです。ちなみに『リカ』では、「親が子どもに愛情を注ぐことの必要性」についての言及もあります。

私は、「子育てをさせてくれてありがとう」という気持ちでいっぱいです。子どもの存在が私の人生を豊かにしてくれました。それに毎日、いろんな勉強をさせてくれています。これは子どもの話に限らず、やっぱり人って誰かと一緒に過ごすことが大切。「この人はなにを考えているのだろう」と想像して生きることになりますから。私だけの考え方では物事や世界がまわらなくなる。さまざまな人の意見を聞くことでいっぱい発見ができる。それが女優という仕事にも生かされます。

──ブログでは、お子さんの話にじっくり耳を傾けながら高岡さんの姿が伝わってきます。

でも私も子どもたちも、お互いの話をちゃんと聞かないこともありますよ。たとえば習いごとをしている娘を車で迎えに行って、「今日どうだった?」と聞いたら、「んー」って不機嫌そうに答えてきたりするんです。「そういえばあれはどうなったの?」と尋ねても、無反応だったりして。

──思春期って感じですね(笑)。

こちらもしつこく言っちゃうともっと機嫌が悪くなるから、「もういいや」と黙々と運転し始めるんです。そうすると娘が「せっかく迎えに来てくれたのに、ちょっと悪いことしちゃったな」という気持ちになるのか、「ねえ、ねえ」と話しかけてくるんです。

だけど次は、私が大人げないところが出ちゃったりして。「あ、あとでねー」と言ってしまい、「あ、やっちゃった。ダメだ、ダメだ。こういうときは『どうしたの?』とちゃんと聞き直してあげなきゃ」と反省します。いろんな世代と共存することで、自分ひとりでは得られない感情をつかむことができます。

──そういう感情が女優業にも活かされているんですね。ちなみに、『リカ』は「運命」がテーマでもありますが、高岡さんはこれまで女優のお仕事で運命を感じたことはありますか。

女優の仕事自体が運命です。今年も『リカ』や、朝ドラ『おかえりモネ』などテイストの違う作品に出演させていただきますし。そういう巡り合わせはとても不思議。そしてその一つひとつが運命的だと思います。これからどんな運命をたどるか分からないけど、作品や人との出会いを大切にしながらいろんな場所へ向かっていきたいです。

映画『リカ 〜自称28歳の純愛モンスター〜』は6月18日より公開中。