松本潤主演で、徳川家康の人生を描く大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。11月26日放送の第45回『2人のプリンス』では、家康が今川氏真と再会。そこで得られた救いと教えが、息子・秀忠にもつながっていくという奇跡のリレーに、SNSでは感動の声が広がった(以下、ネタバレあり)。

■ どうする家康、凡庸すぎる秀忠を諭す

すぐれた若武者に成長した秀頼(作間龍斗)を擁する豊臣家が、戦の準備を進めていることを憂う家康の元に、今は「宗誾(そうぎん)」と名乗る今川氏真(溝端淳平)が来訪。戦を続けねばならない苦悩を涙ながらに告白する家康に対して、氏真は「弱音を吐きたいときはこの兄がすべて聞いてやる。お主に助けられた命もあることを忘れるな」と励ますのだった。

一方、将軍となった家康の息子・秀忠(森崎ウィン)も、父に似ず凡庸すぎる自分では、豊臣家に敵わないということに心を悩ませていた。しかし家康は「自分の弱さを素直に認められる」という点で秀忠は自分と似ており、それを大事にしてほしいと諭す。さらに、「戦を求める者たちに、天下を渡すな」と鼓舞したことで、秀忠は気力を取り戻すのだった。

■ 義元の最高の後継者、王道の世を作る家康

「あなたこそ戦乱を求むる者。戦なき世などなせぬ」。第43回で石田三成(中村七之助)がぶつけた呪いの言葉は、予想以上に家康の精神的ダメージになっていたことが、この45回で判明。外国から兵器を輸入しようとするなど、ここに来て闇落ち寸前となっていた家康を救ったのが、まさかの今川氏真! 史実でも家康と同じぐらい長生きして、茶飲み友だちのようになっていたというが、こんな風にメシア的な存在になるとは思わなかった。

まず、前回の予告編でも溝端淳平とは誰も気づかなかったほど、見事な老けメイクでの再登場に「氏真様〜! お久しぶりでございますううう」「これ初見なら溝端淳平だってわからんわ」という歓喜と驚きの言葉が並び、さらに「自分が舞台から降ろさせたとはいえ、氏真が(正室の)糸と今も仲睦まじく人生を謳歌しているのを見たら、心境は複雑かも」「氏真、実はこの物語の最大の勝者なのでは」と、武将としては失格でも、人間としては理想的な余生を過ごしているという、家康とは対象的な姿に感じ入る声も。

そんな氏真が「戦はなくならん」と未だに迷いを見せる家康に、「白兎」な本性を自分はよく知っているし、辛いのならいつでも話を聞くよ! と声をかける。これは同時代を生きた家臣がほぼいなくなってしまい、於大の方が案じた「一人ぼっちになってはいけない」という状況に陥った家康にとって、思わぬ方向から来た救いの手であり、かつて今川義元が語った「王道の世を作る」という理想に今一度立ち返る機会にもなっただろう。

SNSでも「氏真から見たら、父·義元の最高の後継者は家康だったのね」「そうだよな、自分が立つ覚悟をしてた場所に家康が今立ってるんだよな」「氏真が生きていて、家康がひとりぼっちにならずにすんでいる。泣ける」「妻も息子も家臣も先逝くなか、氏真さまが生きててよかった・・・視聴者も救われるよ」「家康がなぜ氏真を庇護したのか? のアンサーに納得しかない」などの感謝と感激の声があふれた。

■ 初心にかえる家康、「王道」を秀忠に託す

そして初心を取り戻した家康は、第1回で義元に説かれた「徳をもって治めるが王道、武をもって治めるが覇道」という言葉を、若い頃の自分の分身のような秀忠に叩き込む。そうすることで、最後まで「覇道」から抜けられなかった自分に変わって、秀忠に「王道」を成し遂げてほしい・・・と伝える展開は、一番初めにそれとなく投げかけられた伏線が、ラスト目前で輝きながら舞い降りてきたかのような思いとなった。これぞロングスパンで主人公と並走する、大河ドラマならではの快感だろう。

SNSでも、「今川義元公の教えがここで! 一年見てきて良かったと、こういうところで思う」「秀忠は王道の人か! 凡庸こそが王道なり。もう英傑はいらない」「三成とのやりとりは『どっちもどっち』だったんだが、家康には秀忠という戦を求めない後継者がいた、ってのが三成との違いだった」「殿は、太守さまから教えられた王道を秀忠に託した。これで我らが殿はもう心置きなく、王道のための覇道を邁進できる」などの言葉が。

また、前回のポジティブキャラはどこに? と思えるほど深く悩みながらも「豊臣に負ける自信がある!」など、相変わらず天然な発言が炸裂する秀忠くんにも「ごめんけど、笑っちゃった。ウサギの子はウサギ」「すぐ『できない』てなるのも寝られずに考え込むのもすぐ泣くのも、元康(家康)くんそっくり」「パパなんて、戦が嫌いで逃げ出して、年下の家臣に引きずられながら戻ってきたときあったもん。私知ってる」など、今回もほほえましい声援が飛んでいた。

ドラマではどこまで描かれるかわからないけど、その後の秀忠くん(あえてこう呼びたい)は武家や公家に対して厳しい法令を作ったり、いろんな大名を改易&転封することで勢力を少しずつ削いでいくなど、まさに戦ではなく政によって周囲を制圧する「王道」を歩むことになる。そのレールを完全に敷くまで、まだ当分家康の「どうする」は続くのだが、きっと裏では氏真が愚痴や弱音を聞いてくれていると思うと、少しはほっこりできそうだ。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。12月3日放送の第46回『大坂の陣』では、家康が豊臣家に出した要求を、茶々や大野治長(玉山鉄二)らが拒否。ついには14年ぶりの大戦『大坂の陣』への突入が描かれる。

文/吉永美和子