子育てのために引っ越し・・・は日本国内でも実現が難しいというのが実情。そんななか、アメリカのカリフォルニアから兵庫県淡路島へ移住した、ベイリーさん一家。電車もデパートもない島、淡路島を選んだ経緯と理由を伺った。

ベイリーさん一家が暮らしていたのは、なんとあの人気海外ドラマ『The O.C.(ジ・オーシー)』でも有名なカリフォルニアのオレンジカウンティー。アメリカでも治安が良いとされる高級住宅街で、美しい自然もあり、都市機能も充実していて、気候も穏やかな誰もが住みたいと思う理想都市だ。

もともと奥さまのあかねさんは神戸市北区出身で、留学を機にカリフォルニア在住歴25年。3人の子どもを育てながら、アメリカで骨を埋めるつもりだったそうだが、別荘として淡路島に物件を購入したのが家族での移住を考えるきっかけに。

「淡路島の環境の良さは知ってはいたのですが、夏休みに通ううち、『ここで子育てをしたい』と思うようになったんです」とあかねさん。淡路島の子どもたちに触れたときに、今の生活の便利さと管理された安全性が本当にベストな環境なのかに疑問を抱くようなったのだそう。

「幼少期からしっかり自分の意見を持つというような自立性はアメリカの教育の方が長けていると思います。でも、家から学校までも完全に車で送り迎えが普通で、世界的にも水準の高い便利な生活文化」と語る。

そんな恵まれた状況にも関わらず、「淡路島のようなのびのびした自由さや学校に自分で歩いて通うような生活の中で育まれる自立性は育たないと感じたんです。そしてそれが私たちが子育てに求めるものだったので、思い切って決断しました」と、上の子2人が自立したタイミングで、末っ子の息子さんと約5年前に移住。

そのとき一緒に移住した子は、今や中学2年生に。現在は、淡路島での暮らしを楽しみ、「友だちと自由に遊べる環境が整っている」と話しているそう。ちなみに夫のベイリーさんは、超多忙なビジネスマンだったが、家族のために早期退職し、3年遅れで合流した。

それまで趣味だったピザ作りを職業とするため、イタリアにも修業に行き、今年10月にオープンしたのが「BAILEY’S pizzeria & cafe(ベイリーズ・ピッツェリアアンドカフェ)」。地元で食材を仕入れる際に感銘を受けたのが、農家の人々の元気さだという。

「淡路島の先輩たちは80代でも元気に農作業している。その姿に感動した。カリフォルニアの同年代にそれはあり得ないこと。そして新鮮な野菜や果物が直接農家さんから買えたりもらえたりする、この環境にも感銘を受けている。畑や田んぼで手塩にかけて丁寧につくっているのを目の当たりにして驚いた」と、食糧輸入国の日本で、食糧自給率100%を超える淡路島ならではのエピソードだ。

「カリフォルニアは一年中夏で、クリスマスでもTシャツに短パンで過ごしていたから、たまにそれも恋しくなるけれど。この季節ごとに変わる田んぼの景色がすばらしいね」とベイリーさん。世界的に人気の都市からの淡路島への移住というあかねさんの選択の結果は、家族の笑顔に現れていた。

取材・文/時友真理子