今から100年以上前の19世紀後半に、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を追求したウィリアム・モリス(1834〜1896)。芸術家として活躍し、詩人、作家、社会運動家としても知られる彼の展覧会『ウィリアム・モリス 原風景でたどるデザインの軌跡』が、6月26日より「奈良県立美術館」(奈良市登大路町)でおこなわれる。

ウィリアム・モリスと言えば、「モダン・デザインの父」とも称され、今なお愛される美しい壁紙や、織物、建築、出版の仕事が有名だ。彼はなぜ、こうした事業に邁進したのだろう? その理由は、世界に冠たる大帝国として繁栄していた18世紀後半の彼の祖国・イギリスの状況下にあった。産業革命が進んだ当時、さまざまな品物が大量生産されるようになったが、その反動として多数の粗悪品が出回ることに。

モリスはそうした状況に反旗を翻し、職人の手仕事に重きを置いた「アーツ・アンド・クラフツ運動」を先導。この理念は「モダン・デザイン」の源流であり、彼の精神は現代にも脈々と受け継がれている。

「住まい」「学び」「働いた場所」など、その時々の環境と深いつながりをもったモリスの制作活動。本展では、そんなモリスの作品(壁紙、織物、書籍デザインなど)45点と、彼の仲間たちの作品(壁紙、椅子、タイル、ランプなど)35点、資料映像などを出展する。

また、大阪芸術大学教授の写真家・織作峰子が撮影したモリスにちなむ風景写真21点も展示され、モリスの生涯と軌跡が分かりやすく紹介される。インテリアのヒントがいっぱい詰まった展覧会となっており、部屋の模様替えを検討中の人にもおすすめしたい。期間は6月26日から8月29日まで、一般1200円。

文/小吹隆文(美術ライター)