昭和、平成、令和と3世代にわたる女性の人生を描く、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK朝ドラ)。1月26日放送の第60回にあんこのお菓子「回転焼き」が登場し、放送後のツイッターでは「回転焼き」がトレンド1位に。それぞれ地域で異なる呼び名が話題となった。

■ 今川焼き、大判焼き、太鼓焼き・・・さまざまな名称が存在

回転焼きとは、あんこやカスタードクリームなどの具を、小麦粉、卵、砂糖などを使ったほんのり甘い生地で包んで焼く、円盤状の焼き菓子のこと。全国的に愛されているものの、名称は統一されておらず、「今川焼き」「大判焼き」「太鼓焼き」など地域や店舗によってさまざまだ。

方言学の研究者で「回転焼の名称に関する調査」などの研究をおこなっている、奈良大学教授の岸江信介氏によると、以前約6000人にアンケートを採った際、全国で100種以上の呼び名があることが判明したというから驚きだ(SAVVY3月号『おやつ図鑑』より)。

このお菓子のはじまりは、江戸時代に江戸・今川橋(現在のJR神田駅付近)にあった店が売り出した「今川焼き」だと言われているが、もっとも全国に根付いているのは「大判焼き」という呼び方。作家・獅子文六の連載小説『大番』(1956年〜)の舞台である愛媛の「松山丸三」というメーカーが、小説のタイトルに倣って回転焼きを「大判焼き」という名前に変え、製造機を販売したところ大ヒット。そこから全国規模で広がったからと推測される。

「販売している店の暖簾や看板に書いている名前で、そのまま呼ばれることが多いですね。回転焼きや大判焼きは祭りの屋台などを中心に全国に広まったんだと思います。回転焼きは、生地を回転させる焼き方が由来ですが、『太鼓焼き』のように形が由来のもの、そして店名が由来となっているものもありますよ」と、岸江氏は話す。

■ 創業当初は「回転焼」の名称で販売されていた「御座候」

店名由来の代表が、兵庫や大阪で呼ばれる「御座候(ござそうろう)」だ。兵庫県姫路市が本社の「御座候」の販売促進担当に聞くと、「御座候」はあくまで屋号で、昭和25年の創業当初は「回転焼」の名称で販売していたそう。しかし、店を訪れた客から「御座候ください」と注文されるようになり、商品名も「御座候」に変更したという。

名称が変わった明確な時期は不明。しかし、昭和30〜36年頃に撮影された「光源寺前本店」(昭和46年に閉店)の写真に「名物 御座候 1ヶ十円」という表記があり、昭和30年代には御座候となったと推測できる。また「昭和30年代の後半ごろ、姫路を訪れたバスツアーでガイドが観光客に『姫路名物・御座候』と紹介していた」と、当時を知る社員の証言も残っており、すでに名物として浸透していたようだ。

兵庫、大阪を中心に、現在では北海道から四国まで78店舗を展開する「御座候」。ちなみに、「お買い上げ賜り ありがたく御座候」というお客への感謝と、「私が焼いた回転焼で御座います」という商品への自信と誇りを込めて、「御座候」という店名になったとか。

■ 全国で愛される「回転焼き」

そんな「御座候」で修業した滋賀の店主が、「歌舞伎の人気演目『暫』の主役みたいに、お客さまから愛されるものになりますように」と思いを込めて名付けたことから、滋賀では「しばらく」という呼び名が定着。

ほかにも、和歌山では「太鼓焼き」、広島では「二重焼き」、山形では「あじまん」、北海道では「おやき」・・・とさまざまで(『あさイチ』では回転まんじゅう、あまたろう、などの名前も!)、各エリアとも呼び名の混在が見られるが、岸江氏は「その土地土地の名前で呼ばれ残っているのは、それだけ愛されている証拠。どれもおいしさは変わりません」と話す。

27日放送の朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第61回では、ヒロイン・るい(深津絵里)が幼い頃に母・安子と一緒に作ったあんこの記憶をもとに、京都で回転焼き屋を開く様子が描かれる。これを機に、それぞれの地域で売られている回転焼きがどんな名称で呼ばれているか、改めて意識してみては。

取材・文/Lmaga.jp編集部、「御座候」取材/つちだ四郎