バナナやリンゴ、カメラにトースター・・・身近にあるものをモチーフにしたぬいぐるみやポーチ。それを集めた写真がツイッターに投稿されると、「これ、ウチにある!」「持ってた」「懐かしすぎる〜」など話題となった。そのポップなビジュアルから海外のブランドと思いきや、手がけている「グラディー」は、1991年に東京で創業し、現在は京都に本社を置く日本の雑貨ブランドだ。

「世の中にあるものをなんでもぬいぐるみにする」という精神で、30年にわたり商品を作り続けてきた同社。現在ではオンラインでの販売が主で、なかなか店頭で見かける機会がなくなった「グラディー」の商品だが、海外を中心に今も売れ続けているという。同社の創業者でデザイン・開発を手がけてきた佐沢一馬さんに、「グラディー」の現在について話を訊いた。

■ 「ほかにはないデザイン」のアイテムが占めていた90年代の雑貨店

──「ぬいぐるみ」が主力商品ですが、創業時は陶器を扱っていたとか。そこからどうやって今のようなグッズを作るようになったんでしょうか。

弊社を起ち上げた90年代初頭は、テディベアブームの真っ只なかでした。私自身、クマが好きだったいうこともあり、当初の1〜2年はクマのマグカップを主に扱っていました。そこからテディベアを作るようになり、次第に今のようにぬいぐるみを手がけるようになったんです。

90年代後半までは、シンプルなぬいぐるみが人気だったのですが、ある時期から売り上げが下がっていきました。そこで、ぬいぐるみにポーチ機能を付けてみると、また売り上げが回復しました。ただ、最近はぬいぐるみブームが再来していると実感しています。

──はじめはシンプルなテディベアも作っていたんですね。グラディー商品は独特なビジュアルが特徴的ですが、佐沢さんがお一人でデザインされているとか。以前からデザインやものづくりがお好きだったんですか?

昔からアメリカの人形やおもちゃが好きで、よく集めていました。それに企業のノベルティやグッズを見るのも好きでしたね。うちの商品も「架空の企業が作っているノベルティ」をイメージしてデザインしているものもあります。

現在の雑貨屋といえば、有名なアニメやゲームのキャラクターといった、すでに確立されているキャラクターのグッズが売り場を占めていますよね。でも私は昔から、B級感や場末感のある「何コレ?」と思われる商品のほうが好きで、そういう商品を目指していたんです。

──なるほど。グラディーさんは、ほかにはないモチーフをグッズ化していると思うのですが、なにかこだわりがあるのでしょうか。

うーん・・・。ぬいぐるみを作っていた当時は、ほとんどのデザインが「ほかにはないデザインやモチーフ」ばかりだったと思います。今でこそ、文房具や果物をモチーフにしたぬいぐるみも多いですが、当時はそのようなぬいぐるみは少なかったと記憶しています。

例えば、クマにウサギの耳がついたフードをかぶった「うさくま」。こういったデザインは今でこそよく見かけますが、当時はうちが先駆けだったと思います。「特許でも取っておけばよかったかな・・・」なんて、今になって思ってますね(笑)。

──フード付きのぬいぐるみ、今では定番のデザインですが、グラディーさんが元祖だったんですね! ちなみに「うさくま」はSMAPの『夜空ノムコウ』(1998年)のPVにも登場したとか。当時は反響も大きかったのでは?

2016年、SMAPが解散した際に再販したのですが、PVが公開された頃よりそのときの方が反響は大きかったですね。今はネットやSNSの影響で、PVに登場したアイテムはすぐに特定されますが、当時はそうではありませんでしたし、そもそもPVに出ているぬいぐるみが弊社の商品だということも浸透していなかったようです。どちらかというと、漫画『ご近所物語』(矢沢あい)に描かれた影響のほうが当時は大きかったです。

──そうなんですね。その当時は「グラディー」というブランド名は知られていたんですか?

雑貨好きの方にはそこそこ有名ブランドでしたが、一般的に知名度はあまり高くはなかったと思います。SNSでの反響を見ても「あのぬいぐるみを作っていたのはグラディーって会社だったのか」という声も見かけましたし、日本のブランドじゃないと当時思われていたかもしれないですね。

■ 海外から大人気! 日本の「カワイイ」雑貨

──一見すると、海外ブランドのように見えるかもしれません。そういえばグラディーさんは海外での人気が高く、SNSのフォロワーも海外の方が多いんですよね。

海外では昔から人気が高く、海賊版が製造される商品もあるほどでした。国内だけで販売していた頃から、台湾やシンガポールなどのアジア圏や、イギリスやフランスなど海外からの問い合わせも多かったです。今はネットショップも海外からの利用客はとても多いですし、多くの商品を中国の代理店に卸しています。

本社を東京から移転したときや関連会社の倉庫を整理した際、昔の商品がたくさん掘り出されたんですが、中国の取引先からは「出てきた分はすべて欲しい!」と言われて。やっぱり、中国は買い物の規模がすさまじいなと痛感しました。

──すごい熱量ですね・・・。なぜそんなにも海外で支持されるようになったのでしょうか?

海外には日本の「カワイイ」ものが大好きなコレクターがいるらしく、そういう人たちがSNSなどにアップすることで、問い合わせが急増します。なかには「どこから?」と懐かしくなるくらい過去のレアグッズを持っている方もいますね。それから、以前はニューヨークなど海外の展示会にも出展していたんですよ。アメリカにもファンの方は多いと思います。

再販リクエストが寄せられることも多いですが、当時とは製造工場が変わっていることもあり、まったく同じものを再現することはとても難しいです。

──リクエストがあれば、復刻や再販にも対応しているんですか?

現在は、過去の商品の復刻やアレンジをして再販することが多いです。お客さまからのリクエストはなるべく受け入れたいのですが、商品化にはある程度の製造数が確保されていないといけないので、おのずと注文数が多い中国のお客さまからのリクエストが通ることが多いです。

正直なところ、以前の商品の復刻が望まれていることが多く、新しいものへのチャレンジはなかなか難しいのが現状です。そんななか、今年3月に自己紹介のようなツイートをしたところ、予想外に拡散されて。それをきっかけに、SNSの運用にももっと力を入れていくべきなんだろうなと感じました。

■ 雑貨屋が激減…ネットショップ中心の販売に

──グラディー商品は、以前まで雑貨屋にも並んでいたんですよね。なぜ、今はオンラインショップ中心での販売になったんでしょうか。

1990年代は「雑貨ブーム」だったこともあり、「キデイランド」「ザ・キタノショップ」「エイム」など多くの雑貨屋さんで扱ってもらっていました。サンリオさんの西銀座の直営ショップにも卸していたこともありました。

いろいろと要因はあると思いますが、景気の悪化や100円ショップの台頭のため、雑貨屋の売り場が縮小したり閉店が相次いだのが大きかったです。そこから、実店舗でお客さまに触れてもらう機会は激減しました。

──たしかに、街の雑貨屋は年々少なくなっている気がします。国内の実店舗でグラディー商品を手に入れるのが難しい現在ですが、今後の展望があれば教えてください。

そうですね。やはり、グラディーという雑貨ブランドをもっと国内の若者にも知ってほしいです。グラディーのグッズは、人とかぶらない、クセのあるものが多いんです。だからうちのグッズで固めると完全な「カワイイ」の世界になってしまう。最近はシンプルなデザインが流行っているので、そういう世界観が苦手な方もいるのだろうなと思います。

しかしながら、たとえばおしゃれな人がうちのポーチを1つ、身に付けたり使ったりすると「外しアイテム」としてギャップを演出できるはず。そういう使われ方も良いのではと密かに思っていますね。

日本の人たちは海外のかわいいものに目を奪われがちですが、海外に頼らずとも日本には以前から、世界中にアピールできるくらいのカワイイものを自ら作り出すカルチャーがありましたし、日本人はカワイイ愉快なものを作るセンスを持っています。今は景気がへこんで元気がない日本ですが、従来のカワイイ雑貨のカルチャーに誇りを持って、元気を出して欲しいです。

街の雑貨屋が減ってしまった現在は見かける機会が少なくなったグラディー商品の数々。30年前に起こった雑貨ブームを経た現在、海外で熱狂的なファンに支持されていることが分かった。バナナやカメラのぬいぐるみやポーチに懐かしさを覚えた人には、オンラインショップをのぞいてみることをおすすめする。

取材・文・写真/つちだ四郎