神戸・北野に地元の魚屋が手がけるデリ専門店「SEA SPICE(シースパイス)」(神戸市中央区)が、12月1日にオープンする。プロの目利きで選ばれた水産物を使ったデリカテッセンやサンドイッチは、魚好きからの注目を集めそうだ。

■ 「海鮮ショップ」らしからぬ佇まい

ケーキショップのような明るいデリ専門店を開業したのは、神戸市北区で40年続く魚屋「魚秀」の2代目・松島紘生さん。毎朝5時に「神戸市中央卸売市場」に出向いて食材を仕入れ、イタリアンやフレンチで腕を振るってきた橋間寿人シェフが調理するという。

メニューは仕入れによって変わり、取材日には「ふぐとひよこ豆のトマト煮込み」「真牡蠣とブロッコリーのアヒージョ」「わかさぎと青パパイヤのエスカペッシュ」「オイルサーディンのサンド」(惣菜類100g・450円〜/サンド600円〜)などが並び、料理に使うアンチョビやスモークサーモンもキッチンですべて手作り。

「素材からこだわって作るので、いい仕上がりになりました。アンチョビは、これまで出合ったなかで1番おいしいと思います」と、橋間シェフは胸を張る。

さっそく記者も「たけのこ芋とアンチョビのポテト」をいただいてみると、アンチョビは塩辛すぎずやさしい味わい。淡路産「たけのこ芋」の独特な香りとホクホク感が組み合わされて、珍しい食材との出会いも楽しく、魚が苦手な人も新しい味覚に驚かされるだろう。

■ 魚ばなれの原因は「調理が面倒」

水産庁の「水産物消費の状況」(令和3年度)によると、魚介類の1人(1年当たり)の消費量は減少傾向にあり、魚を購入しない理由は「家族が肉を求める」「肉より高い」「調理が面倒」から。だが、魚肉たんぱく質などが摂れる魚を「健康に配慮したいから」という理由で購入したいと回答した人は、75.7%もいるという意外な結果も。

そんな「魚を摂りたい」消費者にとっては、同店のデリカテッセンは手軽に購入できて重宝されそう。松島さんは「みなさんに魚を食べていただきたいですし、僕たちが選んだ魚がすごくおいしいことを知っていただきたいです」と話しており、今後は店の奥にある水産加工場を用いて、「金目鯛のアクアパッツァ」などの冷凍商品も販売していきたいとのこと。

「野菜も神戸の契約農家さんから入れていただいているので、近海の魚にうまく織りまぜながら、神戸のお土産屋さんとしても利用していただけるようにしたい」と意気込む。12月のオープンに向けてECサイトも準備中。営業時間は朝9時〜夜7時、火曜定休。

取材・文/太田浩子