大阪・ミナミのシンボルの1つ「ドン・キホーテ道頓堀店」(大阪市中央区)に併設された観覧車「道頓堀大観覧車えびすタワー」。2003年の開業時にはニュースなどでもよく報道され、多くの注目を集めたが、周りの人(筆者は大阪在住)でも乗ったことがあるという人に会ったことがない(学生時代、同店でアルバイトをしていた友人も乗ったことがないそう)。

しかし先日、同店近くを歩いていると、この観覧車を撮影している観光客を多く見かけ、さらには、同店の入り口そばにある観覧車の乗り口には列ができているのを発見した。しかも、看板には「待ち時間35分」の記載があるほどの盛況ぶり。稼働していなかった時期も長年あったため、「動いている」という事実と待ち時間が発生しているほどの人気ぶりにかなり驚いた。

観覧車には七福神の1人で恵比寿様こと「えべっさん」と同店の公式キャラクター「ドンペン」が大きくデザインされたド派手な見た目が特徴で、地上77m、縦長の楕円を約12分で1周するというもの(1人600円)。約20年もの時を経て、なぜこれほど人気スポットになっていたのか。同店の担当者に詳しい話を訊いた。

◆「行列の秘密」は独自のプロモーション力?

「地元のみなさんには利用されていないこともあり、人気がないイメージがあるかもしれませんが、昔もGWなどの大型連休には人気があり、たくさんの方に乗っていただいていたんですよ」と話すのは、同店で観覧車の運営を担当する徐宗佑(ソ・ジョンウ)さん。

「関西の人はほとんど乗らないですし、稼働していなかった時期もあるので、そのイメージが強いのではないかと思います。でも、この観覧車をみなさんにもっと乗っていただきたいと思って、実は一生懸命プロモーション活動もしていたんです」と、陰ながら努力をしていたのだとか。

地元の人間はもちろん、多くの観光客が利用する「Googleマップ」を整え、ホームページにもわかりやすい特別ページを用意。

実際に観覧車に乗車していたアメリカ人ファミリーに話を聞くと、「大阪で観光する場所を探すのにGoogleマップを使っていて、マップの情報を見て来ました。子どもたちがちょっと怖がっていたけど、楽しかったよ」と、利用したきっかけを教えてくれた。

また、韓国出身の徐さんは自ら母国のテレビ番組に出演し、同店の観覧車を紹介。すると、多くの韓国人が大阪を訪れる際にはこの観覧車を乗ったり、写真撮影をしたり、さらには韓国人YouTuberが実際に訪れて紹介されるようにもなったそうだ。

「現在の客層は、だいたい日本人30%、外国人70%ほどの割合。外国人のなかでも韓国人、香港・台湾などの中華圏、欧米の方という順番です。全体では外国人の割合が多いですが、実は日本人の方にも利用いただいているんです」と、徐さん。

取材したこの日、列に並んでいた日本人高校生は、「名古屋から来ました。以前この観覧車に乗ったことがあって楽しかったので、今回友だちと一緒に来ました」とまさかのリピーターだということが発覚。そして、関東から2家族でやってきたというグループは入念に観覧車の写真を撮っている。

話しかけると、「観光雑誌に『グリコ』と並んで大きく出ていたので、遊びに来ました。これ有名スポットなんですよね?」とうれしそうに答えてくれた。

◆ 地元民2人で乗ってみた「え・・・楽しいかも」

取材をしていても、とにかく評判が良く、列に並んでいる人たちでさえ楽しそう。乗ったことがないのが勿体無い気がしてしまい、せっかくの機会なので、筆者と編集の2人で乗車してみた。

観覧車専用の入り口にある列に並び、30分ほど待つと店内3階にある乗り口に到着。観覧車乗り場の周りには、「関西の縁起物」に扮した「ドンペン」の掲示物やぬいぐるみなど、装飾もかわいらしく、また関西らしさに溢れている。

普通の観覧車とは異なり、ゴンドラは横向きで珍しい。店舗側を向いているが、乗車すると道頓堀川方向に180度回転し、大阪の街が一望できるようになる仕組みだ。安全バーを下されたり(ちょっと揺れるから怖い)、ゴンドラが回ったりと、これまで乗ったことがある観覧車とは異なる点が多く、アトラクション感満載でワクワクする。

縦にゆっくりと登っていくのも不思議な感覚で、上に上がるにつれて、だんだんと見える景色が広がっていく。「こんな看板あったっけ?」「ここにこんなお店あったんや」など、ミナミの街をじっくり見つめることで新たな発見もあった。

徐さんは、「この観覧車がみなさんの思い出の場所となって欲しい。乗り場の『ドンペン』のディスプレイなどもシーズンごとに演出を変えていきたいですし、グッズも作りたいと思っています。来るたびに変わって楽しい場所にしていきたいです。ぜひ関西のみなさんも乗って欲しい」と話す。

「道頓堀大観覧車えびすタワー」の営業時間は、昼2時〜夜8時(最終受付は夜7時半)。運休日は火・金曜。そのほか、雨天など悪天候時は運休。料金は1人600円。買い物ついでに、ぜひ一度利用してみては。

取材・文/野村真帆