京都の由緒あるお寺で、いま驚くべきものが売られていると話題になっています。今回のメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では、 お寺で売られているもの、そしてその人気の秘密を分析しています。
由緒あるお寺が、1日30食限定のラーメンを売る理由京都府宇治市に、1669年建立のお寺「宝蔵院」があります。
このお寺の本堂に、毎週木・金・土曜日になると、各地から人びとが集まってきます。
その中には、訪日外国人もチラホラ。
1日30食限定のラーメンを食べるためです。
本堂横に設置されたテントでラーメンは作られ、本堂で食べることができます。
ラーメンは1種類のみ。「寺そば(ヴィーガンラーメン)600円」。
季節により、味が変わります。
春は淡口しょうゆ味。夏は塩味。秋は濃口しょうゆ味。冬は豆乳味噌味。
本職のラーメン屋さんではないので、“振る舞い”のような簡単なものかと思いきや、かなり本格的な作り方をしています。
だしには、昆布、椎茸、大根、牛蒡、玉ねぎ、白いんげん、じゃがいも、にんじん、玄米、トマト、生姜を使い、幻の香辛料と言われる「馬告(マーガオ)」も入れています。
「馬告(マーガオ)」とは、台湾で古くから使われてきたもので、辛味と苦味にプラスして、レモングラスの香りが特徴です。
ラーメンのトッピングは、お寺らしく、お釈迦さまの身体を表す5色の具材を使用しています。
黄色いとうもろこしは、身体。青いわかめは、髪。赤い糸唐辛子は、血液。白いきくらげは、歯。黒っぽいメンマは、袈裟。
また、当然のことですが、お寺なので、動物性の食材は使わず、すべて植物由来のものです。
いわば、精進料理なのです。
動物性のものを使わずにラーメンを作るのは、かなり難しいことですが、お客さま(参拝者)には好評です。
では、なぜお寺でラーメンを売ることになったのでしょう。
このお寺には、約6万枚の「経版木」が保存されていて、そのうちの約5万枚は、国指定の重要文化財になっています。
初代住職の鉄眼(てつげん)が1681年に完成させたもので、『鉄眼版一切経版木』と呼ばれ、そこに使われている書体やレイアウトは、現代でも広く普及している明朝体と原稿用紙のルーツになったとされています。
それほど貴重なものですが、年数が経つごとに傷みも進んできたため、より一層の保全保護が必要になってきました。
その費用の一部を捻出するために、ラーメンの販売を思いついたのです。
ラーメンは若い人たちにも注目されやすいので、お寺や版木への関心を高める狙いもあります。
いまお寺離れも進んできているので、少しでも興味を持ってもらうことで、仏教文化の衰退に歯止めを掛けたいのです。
ラーメンは、幅広い層の人たちの関心を集めるためには有効な手段だと言えます。
多くの人が注目してくれます。
お寺とラーメンは、異質な組み合わせかもしれませんが、それ故に話題性もあり、注目度も高くなります。
また、お寺であるという特性を逆手に取り、精進料理としてのヴィーガンラーメンを完成させたのです。
ラーメン界の常識を覆したことも、ユニークな取り組みとして、取り上げられるようになった要因です。
“ラーメンでお寺が集客する”。
非常に面白い事例ではないでしょうか。
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