莫大な赤字を積み上げ楽天グループの経営を圧迫する楽天モバイルに、浮上の可能性はあるのでしょうか。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、「楽天経済圏」を最大限に活用すれば、チャンスは十分あると考えているようです。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、8月10日の中間決算発表後に、中田敦彦さん、堀江貴文さんらと出演した“楽天の今後を考える”配信番組内では伝えきれなかったアイデアを披露。KDDIグループのやり方を見習えば、ドコモやソフトバンクのユーザーの乗り換えを促せると、具体的な方法を示しています。
楽天はポイントだけが「経済圏」ではないはず──auフィナンシャルホールディングスを見習うべき8月18日夜、NewsPicksの『緊急生配信「どうなる楽天!?」徹底分析』という番組に出演した。中田敦彦氏がMC、堀江貴文氏、元日経記者の大西康之氏、元NHKの池田信夫氏らとともに楽天についてあれこれ議論した。今回のメルマガは特別編として、番組で個人的に語るタイミングを逃した「楽天モバイル、浮上の可能性」について書いていきたい(番組全編はNewsPicksのプレミアム会員が視聴可能。番組冒頭1時間は堀江貴文氏のYouTubeチャンネルでも配信)。
3時間にわたる対談では「楽天はMVNOのままでよかったのでは」という雰囲気になり、逆境を跳ね返すのは難しいのではないかという結論になりつつあった。なかなかポジティブな話にならないなか、個人的にはまだ楽天モバイルには浮上のチャンスは残されているような気がしている。
楽天モバイルは、やはりまだ「楽天経済圏の活用」がまるでできていない。単に「ポイント」を付与するだけでは、特定の人にしかなびかない。そもそも、ポイントに興味のない人を振り向かせることはできないだろう。
議論のなかでも少し触れたが、起爆剤としては、例えば楽天モバイルのユーザーであれば、楽天銀行と一緒に使えば、預金の金利が上がり、住宅ローンの金利が優遇され、外貨預金や楽天証券の手数料が安くなるといった「金融的なお得」で、楽天経済圏を活性化できるのではないか。
すでにauであれば、auじぶん銀行で「au金利優遇」として、au回線とじぶんでんきとのセットで住宅ローンが年0.1%、引き下げられるという優遇策を展開している。また、じぶん銀行とau PAYカード、カブコム証券、au PAYとの連携で、円普通預金金利が通常、0.001%なのが最大0.2%になるといった優遇策も展開中だ。KDDIでできて、なぜ楽天経済圏で実現できないのか。
楽天モバイルが一気にユーザーを増やすには、すでに楽天銀行や楽天証券を使っているユーザーにNTTドコモやKDDI、ソフトバンクから乗り換えてもらうことだろう。さらに「通信料金の節約」に興味が無くても、金融的にお得になることには敏感なユーザーを捉えることが重要なのではないか。
楽天モバイルのデータ使い放題で3278円に響かない層でも、楽天銀行で普通預金の金利が優遇される、住宅ローン金利が下がるというだけでも引きがあるはずだ。こうした金融との連携は、そもそも銀行を持たないNTTドコモには難しく、銀行を持っていても、ヤフーとLINEでID統一ができてないソフトバンクも実現するには時間がかかる。
金融連携に対して、堀江貴文氏は「銀行や証券を上場をさせてしまったら、そうした連携もできなくなるのでないか」、大西氏は「金融はガチガチのルールがありすぎて、やれることは限られている」と指摘するが、auじぶん銀行は三菱UFJとの共同出資でもちゃんと差別化できている。
au系金融サービスはどれも業界の先を行っている感はあるのだが、いかんせん、地味で認知度が高いとはいいづらい。メディアで扱おうとしても「ぽかん」とされてしまっている感がある。楽天はもうちょっとauフィナンシャルホールディングスを見習った方がいいのではないか。いま、楽天がauのようなサービスを提供したら、話題になるのは間違いない。
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