国産初のジェット旅客機として開発が進むも、今年2月7日、三菱重工が事業からの撤退を正式発表したMRJ。なぜ同社の夢は潰えてしまったのでしょうか。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』ではWindows95を設計した日本人として知られる中島聡さんが、知人であるボーイング社のエンジニアから直接耳にしたという、新たな飛行機の「型式証明」取得の困難さを紹介。彼らが三菱のMRJプロジェクトを「失敗して当然」と見ていた事実を明らかにしています。

プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

私の目に止まった記事:三菱航空機による国産初のジェット旅客機、MRJの開発の失敗

● MRJ計画失敗、技術者が「謙虚さに欠けていた」 元社長が激白 破綻の原因はたった1枚の書類

三菱航空機による国産初のジェット旅客機、MRJの開発の失敗に関する記事です。このことは、以前にもメルマガで触れたことがありますが、当時、たまたま私の知り合いがボーイングのエンジニアをしていたこともあり、ボーイング側から見たこのプロジェクトの危うさに関しては良く知っていました。

彼によると、新たな飛行機の「型式証明」を取るのは非常に困難で、そのプロセスに精通したボーイングですら、767と777の間には13年、777と787の間には15年の月日をかけています。ボーイングは、1967に型式証明を受けた737をマイナーチェンジしながら新たなモデルを今でも導入していますが、それは、単に「全く新しい飛行機の型式証明を取るのはとても難しいから」というだけの理由で、無理やりこじつけでマイナーチェンジに見せかけているだけだそうです。

ボーイングの737 Maxがセンサーとソフトウェアの不具合で墜落事故を起こし、しばらく飛行が禁止になっていたことがありますが、あの事故の根本原因は、新たな型式証明を取るのを嫌がったボーイングが、無理やり大きなエンジンを737につけたためにバランスが崩れ、ソフトウェアによる制御が必要になった点にあります。

型式証明を取るのにそれほど苦労しているボーイングから見れば、飛ぶ飛行機さえ作ってしまえば型式証明を取るのは難しくない、という姿勢でスタートしたMRJプロジェクトは、失敗して当然だったそうです。

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● EVの急速充電規格争い「テスラ勝利」に大反論

日本初の急速充電方式であるCHAdeMO協議会を立ち上げた姉川尚史会長に対する東洋経済によるインタビューです。CHAdeMO協議会の立ち上げに東電が関わっていたとは知らなかったので、色々と勉強になる記事です。

TeslaのNACSが米国でのデファクト・スタンダードになってしまったのは、Teslaがどの自動車会社よりも先に莫大な投資をして充電ネットワークを充実させてしまったからだ、という点に全く興味がないのか、あえて無視しているのか分かりませんが、典型的なサラリーマン経営者的な発言だと感じました。

NACSの強みは、支払いのためのユーザーインターフェイスなどが存在しなく、単にプラグを自動車に差し込むだけでチャージが始まる便利さがあります(記事中では「プラグアンドチャージ」と表現)。それを利用するためには、GMやFordのオーナーも、Teslaアプリをダウンロードして、クレジットカードと自動車の情報を登録する必要がありますが、それを「自社の顧客情報をテスラに渡さなければいけなくなる」とネガティブに捉えている点は評価に値します。

(『週刊 Life is beautiful』2023年9月5日号の一部抜粋です。続きはご登録の上お楽しみ下さい。初月無料です)

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