なにかとビジネス業界を騒がせてきたイーロン・マスク。今もツイッターの買収などで、若者たちの間にもその名前は浸透しています。今回の無料メルマガ『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』で紹介しているのは、そんなイーロンの初めての公式伝記。彼の「今まで」が綿密な取材で明らかとなっています。
ついに登場。イーロン・マスク初の公式伝記⇒『イーロン・マスク(上)』
『イーロン・マスク(上)』
ウォルター・アイザックソン・著 井口耕二・訳 文藝春秋
こんにちは、土井英司です。
本日ご紹介する一冊は、稀代の起業家、イーロン・マスク初の公式伝記。
執筆は、『スティーブ・ジョブズI』『スティーブ・ジョブズII』を書いた米国を代表するノンフィクションライター、ウォルター・アイザックソンが担当しています。
『スティーブ・ジョブズI』
『スティーブ・ジョブズII』
アイザックらしい、丹念な取材に基づく力作。関係者のコメントと豊富なエピソードで、一瞬たりとも飽きさせることがありません。
生まれ育った南アフリカ、イーロンの人格を形作り、生涯にわたって影響を与えた奇人の父、冒険心にあふれ、いろんな意味で特別だったイーロンを支えた母、兄弟とビジネスパートナー…。
ここまでドラスティックに環境や事業、人間関係が変化する生涯も珍しいですが、それがまさにイーロン・マスクという人物なのでしょう。
本書から浮かび上がるのは、イーロンのリスクを恐れない性格と、前提を疑う力、一見無茶だけれど理にかなった要求、そして人を鼓舞する能力です。
長所が短所に転じるケースもあったようで、この上巻では、次々と去っていくビジネスパートナーや従業員、2人の妻との関係とその後の恋愛関係が書かれています。
上巻で扱っているのは、イーロンの家庭環境と幼少期、大学時代、ZIP2、ペイパル、スペースX、テスラまでの物語。
下巻では、スターリンク、オプティマスロボット(AI)、ロボタクシー、ツイッターなどに加え、ジェフ・ベゾスとの確執(第2ラウンド)、お金や子育てについて書かれています。
さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。
「手荒にしてくるやつがいたら顔の真ん中に思いきりパンチをたたき込めばいい、そうすれば二度と手荒なまねはしてこないとわかりました。(略)」
「イーロンくんは知的障害だと思われます」先生方によると、いつもぼうっとしていて話を聞いていないというのだ。「窓の外ばかり見ていて、先生の話を聞いてねと注意しても、『葉っぱが茶色くなってきてます』なんて言うんですよ」でもそれって、イーロンが正しいんじゃないんですか、葉っぱは茶色くなりつつありますよねとエロールは返したらしい
「怖いという理由で判断を変えることは絶対にしないんですよ」とピーター。「そのあたりは、子どものころからはっきりしていました」
「ビジネスの勉強をしないと、その勉強をした人の下で働くしかなくなりそうだと思ったのです」とマスクは言う。「物理学を修めて製品を開発することと、ビジネスの学位を持つ人の下で働くのは絶対に避けること、これが目標でした」
揺れがちな感情を鎮めるための方法
・帝国建設型戦略ゲームでゾーンに入る
・百科事典を読みまくる
・パーティに参加する
マスクのやり方は、ありえない締め切りを設定し、なんとかまに合わせろと発破をかける、である
「いやもう腹が立って腹が立って。腹が立つと、私は、問題の枠組みを変えようとするんです」
これは「要件」だからしなければならないと口にした技術者は、マスクにとことんやりこめられる。その要件はだれが作ったのか、と。「軍」とか「法務部」というレベルではなく、その要件を実際に作った担当者個人の名前まで押さえておけというのだ
「リスクを報告し、エンジニアリングデータを見せれば、本人がさっと判断して、責任を我々から自分の肩に移してくれる。イーロンはそういう人なんです」(ブザ)
5つの戒律
1.要件はすべて疑え
2.部品や工程はできるかぎり減らせ
3.シンプルに、最適にしろ
4.サイクルタイムを短くしろ
5.自動化しろ
イーロン・マスクは、あまりに人物として特殊過ぎて、真似できることはないだろうと思っていたのですが、意外や意外、ビジネスに使えそうな思想や原理原則、アイデアが数多く出てきて、これは使える本だと思いました。
ウォルター・アイザックソンが書いているだけあって、娯楽としても超一級の内容です。
400ページ超ですが、面白くてあっという間に読めてしまうと思います。
ぜひ、読んでみてください。
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