2023年の新車販売台数が3,000万台を突破し、15年連続世界一となった中国。新エネルギー車(NEV)の年間販売数も1,000万台に迫っていると伝えられていますが、そのNEVをめぐり、国有自動車メーカーに中国政府から注文がつけられたようです。日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』は今回、国有企業3社に対して大臣が大衆の前で激怒したことを伝える記事を紹介。そこから見て取れる習近平政権の「焦り」を解説しています。

※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです

テスラ、BYDに敵わない国有NEVに中国政府も激おこ、各社対応

東風集団は2024年3月14日、新エネルギー車(NEV)に関する新たなブランド「奕派」の初弾となるモデル「eπ007」を発表した。

中型セダンで、BEVの他、REEVも設定している。今までリリースしてきた「嵐図(VOYAH)」「猛士」と同様のパワートレイン技術ルートを採用、BEV一辺倒を避ける。

VOYAH、猛士が必ずしも絶好調とは言えない中で、もう一つブランドを立ち上げる東風、その背景には何があるのか。

「eπ007」とは

「eπ007」の価格は15.96-19.96万元、日本円で約320〜400万円。

このサイズのセダンにおいて、極めて競争力が高く、同タイプ/サイズのNEVの売れ筋の中でも、米テスラModel 3、BYD漢、XpengのP7と比べてももちろん、やはり価格引き下げ手この分野にチャレンジしている吉利(Geely)の「銀河E8」よりもさらに安い。

正直うまくいくかどうかわからないが、「奕派」では今後3年、10以上の車種をリリースしていく。国有メーカーのこうした極めて激しい「巻き」は、中国政府からのプレッシャーのすさまじさが挙げられる。

大臣が企業を叱責

国有資産監督管理委員会の張玉卓は2024年3月5日、全人代の記者会見で、一汽、長安とともに東風を名指。

「これら国有の何社のNEVの成長は極めて遅い。テスラにも、BYDにも敵わない。我々は政策を調整して、これら中央企業3社のメーカーに対して、NEVを単独の成果指標とする」と宣言した。

中国において、大臣クラスが、国有企業に対して、大衆の面前で非難するのは極めて珍しい。中国政府にも国有資産のバリュー維持・増加に対する危機感があるのだろう。

また、これに続き、同委員会の苟坪副主任も、「同委員会は今後、中央企業のNEV発展において存在する差や不足な点に対して、大規模なリソース投入を検討している」とも語った。

なぜこの3社だけ?

一汽は紅旗を主軸にしてNEV転換を進めているが、長安は阿維塔(AVATR)、深藍(DEEPAL)、啓源のNEVブランドをリリース、DEEPAL、啓源は相応に売れ始めている。

東風を含め、大分速いテンポでNEV化を進めているようにも見えるが、なぜこの3社だけが標的になっているのか不明。

NEV化に成功している広汽はともかく、上汽はうまくいっているとは言い難い。北汽は財務的には壊滅的、との見方もある。

長安が倒産寸前の高合(HiPhi)に出資する、というのも、国策的な意味合いが強い可能性がある。

出典: https://mp.weixin.qq.com/s/F8jSLAXQzP9kgAtLFK7BAw

※CHINA CASEは株式会社NMSの商標です。

image by: Robert Way / Shutterstock.com

MAG2 NEWS