Zホールディングス傘下のPayPayは、8月1日から他社のクレジットカードによる決済が不可となり、携帯料金合算払いにもチャージ手数料が2回目から発生すると発表。「PayPay改悪」がトレンド入りしました。連休の谷間の5月1日に発表してやり過ごす目論見が外れたと見るのは、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さん。今回の発表でPayPayは本格的な回収期に入り、d払いのドコモやau PayのKDDIとは違うソフトバンクの狙いから、今後もサービスが改定される可能性があると伝えています。

PayPayが8月1日より他社クレジットカードの決済を停止──大盤振る舞いから黒字化に向けた回収期に突入

PayPayは5月1日、今年8月1日以降、PayPayカードおよびPayPayカードゴールド以外のクレジットカードを利用した決済ができなくなると発表した。また、7月初旬以降にはクレジットカードの新規登録は停止となり、これまで登録されていた他社クレジットカードは8月1日以降、登録が解除されるとしている。

この発表を受けて、ネットでは「PayPay改悪」と、ちょっとした騒ぎに発展した。PayPayとしては、Zホールディングスの決算会見を4月28日に終えつつ、大型連休の谷間である5月1日に発表して、なんとか騒ぎにならないようやり過ごしたかったのかも知れない(もちろん、開始日の3ヶ月前というのもあるだろうが)。

しかし、大型連休の谷間でネタがないけど、記事を書かなくてはいけないメディアが大げさに反応。これによってSNSで大きく拡散された模様だ。

ただ、自分のTwitterも、何も特にコメントを付与していない、単にPayPayからのお知らせをツイートしただけのつぶやきに対して12.1万件のインプレッションがあったことからも、世間の関心は高かったものと思われる。

とはいえ、どれだけのユーザーが、他社クレジットカードを登録して決済していたのか、かなり未知数な感はある。単にネットが騒いでいるだけで、PayPayとして影響は軽微なのかも知れない。

当然、これまでPayPayは他社クレジットカードの決済に対して、決済手数料を負担していたと思われるので、今回の改定は当然の流れだろう。これまで、サービスの拡大を図ってきたPayPayも、いよいよ本格的に回収期に入ってきたようだ。

実際、ソフトバンクとしても、PayPayを軸に金融事業を立ち上げている。PayPayは決済額も低く、手数料ではさほど稼げないようなので、アプリによるユーザー接点、店舗を繋げ、クーポンによる購買行動を上げるというマーケティング的な位置づけが強くなってくるだろう。

一方で、クレジットカードによる決済で手数料を稼ぎつつ、解約抑止に繋げたいというのがソフトバンクの本心と思われる。

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PayPayが広く普及したおかげで、割り勘をするのが本当に楽になった。コロナ禍が落ち着き、飲み会をする機会が増えたが、誰かが代表してお金を払いつつ、あとはPayPayで回収するというのが当たり前になっている。

あとはPayPayがどれだけ、ソフトバンク回線ユーザー以外にも、いまのサービスを提供し続けられるかが注目と言える。今回のようにPayPayカードもしくはPayPayカードゴールドを所有していれば、いまのサービスを継続できるといったように、ほかの自社サービスを使うユーザーのみ優遇していくようになると、他社回線ユーザーがそっぽを向きかねない。

d払いやau Payなどは、表向きはオープンな姿勢だが、やはり、自社回線ユーザーを意識した内向きな姿勢が見えている。どちらかというと「スマホ決済は、通信料金の支払いで溜まったポイントを消費するためのひとつの手段」に過ぎない。NTTドコモやKDDIは、必ずしもd払いやau Payが儲からなくても、回線ユーザーを囲い込めればOKみたいな感覚だ。

一方で、ソフトバンクはPayPayをオープンに展開し、上場を視野に入れていることもありPayPayが単独で儲からなくては困る。PayPayは黒字化を急ぐためにも、今後も何かしらの改定をしてくる可能性が高い。その際、どこまでユーザー離れを食い止められるかが勝負と言えそうだ。

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image by:slyellow/Shutterstock.com

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