先日掲載の「中国に警戒せよ。スパイ防止法を整備しファイブ・アイズに参加すべき日本」でもお伝えしたとおり、イギリス最大級の空母「クイーン・エリザベス」のアジア展開を発表したジョンソン政権。英国の他にも、欧州各国海軍のアジア派遣の動きが報じられていますが、その裏にはどのような事情があるのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、地政学をオセロゲームに例え、世界の現状を簡潔明瞭に解説。その上で、欧州の大国がアジアへの関与を強めている理由を詳説しつつ、我が国が取るべき進路を提示しています。

【関連】中国に警戒せよ。スパイ防止法を整備しファイブ・アイズに参加すべき日本

地政学オセロゲーム【黒】が優勢で起きているリアクション

イギリスは、主力空母クイーン・エリザベスとその打撃群を、はじめてアジアに派遣する予定です。イギリスの主力空母クイーンエリザベスとは?Aflo5月21日から。

排水量6万5,000トン、総工費30億ポンド(約4,627億円)の空母には、英海兵隊一個中隊を含む3700人の将兵が乗っており、英空軍と米海兵隊のF35Bステルス戦闘機18機が搭載されている。

では、その「空母打撃群」の陣容は?

同空母は、6隻の随伴艦と1隻の潜水艦で編成される打撃群
(同上)

日本、インド、シンガポール、韓国を訪問する予定です。

同打撃群には、米海軍からミサイル駆逐艦1隻と、オランダ海軍からフリゲート艦1隻も加わる。
(同上)

打撃群には、米軍、オランダ軍も加わると。最近は、この手の動きが多いです。フランス軍もドイツ軍も、アジアへの関与を強めています。日経新聞3月3日。

欧州主要国がインド太平洋地域への艦艇派遣を拡大する。フランスがフリゲート艦を展開し、英国やドイツも計画を進める。

なぜ欧州の大国は、アジアに海軍を送るのでしょうか?

新型コロナウイルス発生や香港の統制強化で不信を高めている中国への警戒がある。日本も安全保障面で協調を深める。
(同上)

「対中国」なのですね。

地政学オセロゲーム、赤と白

冷戦時代、共産主義陣営は、「赤」で示されました。日本でも共産主義者のことを、「アカ」と呼びました。どこかの国が共産化されることを「赤化」と呼んだ。共産主義とは何でしょうか?一言で言い表すことはできません。ただ、「どういう政治体制、経済体制なのか」は簡単に書くことができます。

政治体制 = 共産党の一党独裁 経済体制 = 私有財産(民間企業も)を否定し、国がすべてを支配する

だから、共産主義国家に民間企業はなく、社会人はすべて「国家公務員」だった。

「赤化」は、ロシア革命で誕生したソ連から、全世界にひろがっていきました。東欧、中国、北朝鮮、ベトナム、ラオス、カンボジア等々。こちらの地図をごらんください。(右下の地図)

● 社会主義国(Wikiwand)

いろいろな色があります。しかし、白以外の国々はすべて、「かつて社会主義だった国々」なのです。ものすごい数ではないですか?地政学の祖マッキンダーは、

「ユーラシア・アフリカ大陸」 = 「世界島」

と呼びました。そして、世界島の心臓部が「ハートランド = ロシア」です。

マッキンダーの地政学によると、「ハートランド」(ロシア)を征する者が「世界島」を支配し、「世界島」を征する者が、「全世界」を支配する。

というわけで、ハートランド(ロシア)を支配した共産主義者たちは、世界島(ユーラシア・アフリカ大陸)を真っ赤に染める一歩手前までいった。まさに、「世界制覇までもう少しのところまでいった」といえるのです。

しかし、幸い1991年12月、共産主義教の総本山ソ連が崩壊しました。先ほどの地図、「共産主義だらけだな」と思ったでしょう?しかし、頭の中で、世界最大国家ソ連を「白」にしてみてください。共産主義の版図がメチャクチャ減ったでしょう?実際、ソ連は15の独立国家に分裂し、それぞれ「民主主義国」を目指すことになった。さらに東欧も、全部民主主義を目指すことになった。

ソ連崩壊で、民主主義、資本主義の優越性が確認され、共産主義教は、流行らなくなりました。ソ連崩壊直後、世界の人々が、「歴史の終わりだ!」と喜んだものです。しかし…。

30年後、ユーラシアは【黒】に染まる

ソ連崩壊から、今年で30年になります。世界地図は、民主主義の国だらけになったのでしょうか?いえいえ、そうはなりませんでした。「ソ連モデル = 赤」に代わるモデルが登場した。そう、中国モデルです。

中国モデルとはなんでしょうか?

政治体制 = 共産党の一党独裁

これは、ソ連と変わりません。

経済体制 = 国家資本主義

ここがソ連と違いますね。この体制では、中国政府が、企業を支援し、世界で営業もするのです(たとえば、ファーウェイ)。しかし、共産党が最上位で、企業はその下という力関係がはっきりしています。アリババの創業者ジャック・マーといえども、政府を批判すれば、何か月も行方不明になってしまう。そして、この国では、法律はあまり関係ありません。基準は、「習近平に従うか従わないか」だけです。

中国モデルを【黒】としましょう。

まず、ロシアは、中国の事実上の同盟国です。その他、ベラルーシ、イラン、北朝鮮。最近ではミャンマーで国軍が民主派を大量虐殺しています。つまり、ミャンマーは、【黒化】している。

もう一度先ほどの地図をみてください。ロシアが中国と手を組んだことで、赤かった部分のほとんどが、黒くなっている。マッキンダーの認識によると、

ハートランド(ロシア)を征するものは、世界島(ユーラシア・アフリカ大陸)を支配し 世界島を征する者は、全世界を支配する

そう、中国は、ハートランド(ロシア)を事実上支配することで、世界島支配、全世界支配への道を開いているのです。少なくとも、マッキンダー地政学を知り尽くした欧米のエリートにはそう見えます。

なぜ、欧州の大国がアジアへの関与を強めているのか?かつて、西のランドパワー・ナチスドイツが世界支配を目指した時のように、ハートランド・ロシア(ソ連)が世界支配を目指した時のように、東のランドパワー・中国が世界支配を目指している。「これを今止めなければ、全世界は大変なことになる」という危機感がある。だから、イギリス、フランス、ドイツは、アジアに海軍を派遣するのです。

日本は、どうすべきでしょうか?こういう大局を知り、「対中大同盟」に参加すべきです。現状すでに参加していますが、正しい「認識」と「自覚」をもって参加すべきです。「対中大同盟」に参加すれば、日本の勝利は確実。しかし、ウイグル人100万人を強制収容し、ウイグル女性に不妊手術を強制し、事実上の「民族浄化政策」をしている中国につけば、負けは必至です。

第2次大戦時、日本は、ユダヤ人を大虐殺していたナチスドイツについて負けました。菅総理は、同じ過ちを繰り返さず、はっきりとアメリカ側についてください。

image by: 防衛省 海上自衛隊 − Home | Facebook

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