ロシアのウクライナ侵攻が始まって早4ヶ月以上。多くの犠牲者を出しながら「停戦」の兆しも見えないこの間、世界の平和を維持するために活動しているはずの国連はいったい何をしていたのでしょうか。今回のメルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「虫の目、鳥の目、歴史の目」』では、著者の嶌信彦さんが、世界で評判の悪い国連の現状を解説。さらにトップである事務総長のアントニオ・グテレス氏が、プーチンやゼレンスキー両大統領と会談しながら、「停戦」の提案もできない情けなさを憂いています。

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悪評の国連事務総長の停戦案

国連の評判が悪い。ロシアによるウクライナ侵攻に対し、国連は3月2日に緊急特別総会を開き「ロシアの即時撤退」に141カ国が賛成した。反対したのはロシア、ベラルーシ、シリア、北朝鮮、エリトリアの5カ国で、中国やインドなど35カ国は棄権した。決議は日米など96カ国が共同提案した。緊急特別会合はロシアが非難決議に拒否権を発動した事を受けて行われたのだが、そもそもロシアのウクライナ侵攻に対する国連の動きが遅かったという批判も強い。

過去の国際紛争では国連事務総長が早期に仲介へ乗り出すケースが多かった。しかし、アントニオ・グテレス事務総長がロシアのプーチン氏に懸念を伝えたのは、ロシアの侵攻が始まってから2カ月以上経ってからであまりにも対応が遅かったのだ。もともとグテレス氏は、今回の侵攻を巡っても米欧の強い働きかけに背中を押され動き出したもので、米欧からは口先だけの”嫌々ながらの仲介”だと批判されていた。

グテレス氏は、ポルトガルの政治家で第114代ポルトガル首相、欧州理事会議長、社会主義インターナショナル議長などを経験し2017年から第9代国連事務総長を務めている。ただ国内では社会党党首などを歴任したが2001年の選挙で大敗してポルトガルの政治家を辞任し、その後国際機関の幹部に転身していた。潘基文氏の退任後、2017年に首相経験者としては初の事務総長に就任した。

2021年、中国の新疆ウイグルへの弾圧に対し責任を果たしていないと批判され、2022年のウクライナ侵攻に際しても国連本部から侵攻を止めるよう訴えたが、10分後にロシアの侵攻が始まった。今回グテレス事務総長は仲介役を任じてプーチン大統領、ゼレンスキー・ウクライナ大統領と会談。プーチン大統領は「親露派の要請に応じた行動であり、国連憲章に則って行われたものだ」と無視した。またゼレンスキー大統領は「プーチン大統領と会う前にキーウ(キエフ)の惨状を視察すべきだった」と述べたが、ゼレンスキー大統領との会談の1時間後にロシア軍のミサイル攻撃があった。そのためゼレンスキー大統領は「これはロシア指導部が国連を辱めようとしたものだ」と語ったほどだ。

グテレス総長は、結局、プーチン大統領に停戦の提案もできず、代わりに人道支援を870万人に倍増する原則合意を取り付けただけだった。しかし、この人道支援の具体化に関する方法もまとまっていないようで、米国、ロシア、中国など大国の利害が一致しない人道支援にも国連の無力さをさらけ出した格好だ。人道問題にすら力を発揮できない国連では、その存在価値が根本から問われよう。(初出:『財界』2022年6月8日号 第567回)

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image by: a katz / Shutterstock.com

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