昨年の記事『北朝鮮に国民を射殺されても雲隠れ。韓国大統領「空白の数十時間」』でも伝えられていた西海公務員射殺事件の全貌が明らかになろうとしています。文在寅元大統領を起訴するための包囲網はどう張られていくのでしょうか。韓国在住歴30年を超える日本人著者が発行するメルマガ『 キムチパワー 』が現状を解説しています。  

西海公務員射殺事件で徐勳が拘束。狭まってきた文在寅包囲網

本メルマガ2020年9月28日号(#284 黄海上で韓国の公務員A氏が北によって射殺さる)でお伝えした事件がいよいよその全貌が明らかになろうとしている(まだまだ時間はかかるかもしれないけれど)。

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この事件は、2020年9月21日に西海(黄海)上で、韓国の公務員A氏(=イ氏)が漂流しているところを北朝鮮軍によって射殺されて遺体を油で燃やされるという想像を絶する痛ましい事件で、問題は公務員イ氏を韓国側が救出できる時間的余裕が少なくとも3時間から6時間はあったのにその間、韓国側がなんの処置もせずにただなるがままに放っていおいた点にある。

なぜ放っておいたのか。結論からいうと、当時大統領だった文在寅(ムン・ジェイン)が21日から22日にかけてズームでのUN演説をひかえていたためにやっかいな北朝鮮との問題が起こっては困る、北との平和コスプレを演ずる必要があったためにイ氏に「越北(北朝鮮に逃げていく)」という汚名を着せて事件を処理しようとしたことがこの問題の本質である。

文在寅から関係部署にいろいろの指示が出ていたはずで、各部署の長官らは上からの指示を受けて単にそれを実行しただけというのは調べる前からわかっている事実。各長官級の連中の中で一番核心的な役割をやったと思われる徐勳(ソ・フン)が拘束されたというのが今回のメルマガの内容である。中央日報をベースにお伝えしたい。

西海公務員射殺事件と関連し当時の対北朝鮮安保ラインの最高責任者とされる徐勳(ソ・フン、68)元大統領府国家安保室長が拘束された。ソ前室長はイ氏が殺害された翌日未明、関係長官会議で国防部・国情院(国家情報院)に関連情報を削除するよう指示(職権乱用権利行使妨害)し、海洋警察庁などが「自主越北」として発表するようにした疑い(虚偽公文書作成および行使)を受けている。

12月3日、金ジョンミン=ソウル中央地裁令状専担部長判事は、検察が先月29日に請求したソ前室長に対する拘束令状を発行した。刑事訴訟法第70条によると、裁判所は被疑者が罪を犯したと疑うほどの相当な理由がある時、拘束令状を発行する。裁判所はまた、ソ前室長が証拠を隠滅したり逃亡する恐れがあるという点も認めた。

検察は前日開かれた令状実質審査で、計4時間50分余りを割いてソ前室長の拘束の必要性を主張した。ソ前室長の弁護を担当した李碩洙(イ・ソクス)弁護士によると、検察は最近、文前大統領が国会で立場文を代読するよう指示したり、ソ前室長側が容疑を頑強に否認している点を挙げ、証拠隠滅の恐れがあるという点を強調した。同日の令状審査(逮捕状を発行するかどうかの審査)は計10時間10分余り行われ、歴代最長記録を塗り替えた。

先立って検察は、ソ前室長がイ氏の殺害・焼却事実を隠蔽しようとするなど刑法上職権乱用疑惑があると見て令状に記載した。国防部と国情院はイ氏死亡翌日の2020年9月23日午前1時、関係長官会議が終わった直後、軍情報関連報告書計106件を削除したが、検察はソ前室長の指示があったと見ている。当時、国防部は午後1時30分頃、北朝鮮に送った伝達文で「行方不明者が発見されれば、韓国側に知らせてほしい」とし、前日すでに殺害・焼却の事実を認知したという点を除外した。

また、海洋警察がイ氏を自主的に越北と結論付けたことについては、ソ前室長に虚偽の公文書作成および行使の疑いがあると見ている。監査院によると、(2020年)9月24日、安保室は国防部に合同参謀の初度判断(自主的に越北)内容をもとに総合分析結果を作成、報告するよう指示した。

前日の23日には、安保室が海洋警察関係者にメールを送り、「船舶閉鎖回路(CC)テレビの死角地帯で靴を発見(イ氏が靴を脱いで海に飛び込み自分から北に行こうとしたと見せかけるため)し、家庭不和のため地方で一人暮らしをやっているとの2つの内容(事実でないようだ)を反映した報道文を配布するか、記者たちに自然に知らせるやり方で伝えよ」と言い、イ氏の自主越北説を裏付けるような気流を作ろうとした。

検察関係者は「安保室は被害公務員の死亡・焼却と関連した軍・海警の対応措置と被害公務員が越北したという趣旨で発表したことに核心的な役割を果たした」とし「ソ前室長は安保室をはじめ国防部・海警業務遂行の最終決定権者であり最終責任者」と話した(しかしそのまた最終責任者は文だろう)。

ソ前室長は前日、裁判所に行くとき取材陣の質問には答えなかった。ただし、ソ室長出席に合わせて裁判所を訪れた民主党議員たちは「当時判明した内容とファクトは全てそのままだが、政権が変わり解釈だけが変わった」とし「尹錫悦政府、監査院、検察が組織的に政治攻勢をし安保攻撃をしている」(キム・ビョンジュ民主党議員)と批判した。

被害者であるイ・デジュン氏の実兄、李レジン氏も現場を訪れ、文元大統領を厳しく批判し対抗した。文元大統領が前日、「安保事案を政争とする分別のない処置に深い憂慮を表する。度を越えないにせよ」という立場を示したことに対してだ。

李レジン氏は「(文在寅は)国家安保と軍事機密云々と言っているが、現実は海上警戒作戦の失敗ではなかったか」とし「諜報認知後、国家がすべきことは遭難放送と送還要請が先でなければならなかった。しかし、彼らは越北の根拠づくりに血眼になっていた」と述べた。

法曹界は、ソ前室長の拘束が検察捜査の最終段階を示すシグナルと見ている。公安捜査の経験が豊富なある部長検事出身の弁護士(50)は、「今回の事件の場合、検察が捜査を終える段階で拘束令状を請求したケースとみられる」とし、「拘束期限が到来する20日以内にソ前室長とともに、金弘煕(キム・ホンヒ)前海洋警察庁長、徐旭(ソ・ウク)前国防部長官を起訴するものとみられる」と述べた。勿論最終的には文在寅となることは明らかである。

(無料メルマガ『キムチパワー』2022年12月3日号)

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