日本人の若い女性に人気のワーキングホリデー(ワーホリ)。1年間の期間限定で入国し、海外で農業の仕事をするというのがメインになっているようです。しかし、日本と海外はあまりにも異なる事が多く、危険もつきもの。今回の無料メルマガ『出たっきり邦人【アジア編】』では、オーストラリア・シドニー在住のマイさんが日本人女性へ向けて注意を促しています。

狙われているらしい日本人女性

今回は注意喚起。ちょっとでも多くの人に知ってほしいこと。

日本人女性は狙われているらしい。

なんでも、ファームジョブに行って、そこでオーストラリア人や他の国の男性から性的なことをされるケースが増えているのだそうだ。だから気をつけてくださいねーと大使館から在住者向けにメールがきた。ああ、やっぱり、と、元若い娘だった私は思う。

まずファームジョブ。これは果物や野菜の収穫期に、農家でバイトして収穫のお手伝いをする。オーストラリア全体が人手不足な昨今、第一次産業のそれはとても深刻で、繁忙期前にはよく広告が出ている。どこそこの農場でフルーツピッキング、期間いつ、泊まり込み何人部屋、みたいなもの。その働き手はもちろん若い子が多く、ワーキングホリデービザの外国人が多数を占める。

ワーホリは、1年間の期間限定で入国滞在できて、条件さえ守れば働くこともできる。一箇所でずっと働くことはできず、最長3ヶ月程度というもの。数日から数週間と決まっているファームジョブはピッタリ。豪政府も農業や過疎地の人手不足をワーホリで補うことを期待し、88日農業など第一次産業で働けばビザ延長可能という決まりがある。

日本の若い子、ファームジョブに行くのである。日本人社会の掲示板にもよく募集広告がある。

私、若い頃も行ったことない。なんでかと言うと、私が若い頃はオーストラリアの物価は日本よりも大体安く、生活は今よりも楽だった。そしてファームジョブはちょっと不安だった。知らん人々とドミトリーみたいなところに泊まり込んで衣食住を共にする。シャワートイレ睡眠の無防備なところを共有するには、ちょっとばかり心細い。

良い人に恵まれたら良い経験だけど、運が悪けりゃ暴行されて身包み剥がされてもおかしくない。なんたって、場所が人里離れた田舎なのだから、なんかあってどっかに駆け込もうにも現場脱出がかなり難しいのだ。若い女が行くもんじゃないわねと、妙に警戒心が強かった私は思ったものだ。

今の子が行くのはなぜか。

金がないから。金ないけど若いうちに海外体験をしてみたいから。そして警戒心が低いから。

想像して?と言いたい。

世の中悪意に満ち溢れた人間もいるし、そこまで悪意じゃなくとも、ちょっとイケるかもって言う程度の助平心が暴走してしまうことって時には起こるんだよ?特に今は、対日本人で助平心を爆発させてしまう男が増えている。なぜか?それは日本人ならちょっと相手してくれるかも、って誤った思い込みをさせてしまうような話が巷間に流布されたから。

しばらく前のことだけど、女性ジャーナリストを名乗る方が、「日本で生まれ育ったら女性は日々性暴行(強姦)されていて、通報しても何も変わらない」とBBCで喋っているのを見た。

そりゃ愕然とする。そんなわけない。満員電車が多いから、若い子が触られることは正直起こり得ると思う。それももちろん許されないことだけど、性暴行が頻発する、警察が何もしないなんてのは嘘だ。その女性ジャーナリストはもしかしたら個人的に辛い体験をしたのかも知れないけれど、個別の事情を一般化して喋り過ぎていた。

そう言うイメージがつくと、被害に遭っても通報しないだろうと思われたりする。あるいは日本人女性はそれほど気にしないのかも知れないと思われる。そんなばかな、と思うけど、人は自分の聞きたい情報を聞いて信じたいことを信じる。

私が20代だった頃、日本のアダルトビデオは世界的に有名で、たまにお酒の席で「日本の女の子はああいうことをしてくれるのか」と聞く男は存在した。

そういうことを口に出してしまうのはあまり賢い人ではない。育ちも悪い。でもまあまあどこにでもいる若い男の子。私の返しは決まって「プロが契約し金を受け取って行っているサービスを、普通の女性が無償でやるわけないよね?あなたにあんなことをする女性は存在しない。プロに依頼して対価を支払ってマナー良くサービスを受ける以外にはね。そして普通の女性である私にそんなことを聞くのも失礼な話」というものだった。

まあそれで普通は相手が謝る。気まずくなることもある。でも明確に怒りを示さないと、彼らの思い込みは変わらない。私が曖昧に笑って済ませたら、次の誰かがまたきっと嫌な思いをする。そう思って、拙かった英語で一生懸命に言い返した時のことを思い出した。

性暴行は残念だけど人間が集まれば起き得る。耳を塞ぎたくなるような暴行事件のニュースは時々報じられるし、ニュースにもならない事件は無数にあるのだろう。でも、日本が諸外国と比べて性暴行発生率が高いのかと言えばそうではない。現実を無視して、日本人が日常的に性暴行をし被害者が泣き寝入りするような印象をつけられたらどうなるか。日本人を狙えばいいんだという思考に辿り着くに決まっている。

やる方だって捕まりたくはないし、なんなら相手に嫌がられたくないくらいなのだ。軽く応じてほしい、軽い相手がいてほしいという馬鹿みたいな願望を持っている若い男性は多い。やられた側への影響を考えられないほど思慮が浅いからそうなる。BBCであんな取り上げられ方をした影響は大きい。本当に、日本国から抗議してほしいと思う。

日本の若い女の子は、ちゃんと自衛してほしい。隙があればいけるかもという目で見られているのだ。ファームジョブなんて身の安全が確保できないのなら行かないでほしいし、行くなら酒を飲まない、自分の飲食物から目を離さない、寝室に異性が入れない作りのところを選ぶとか、信頼できる複数名で参加するとか気をつけてほしい。

海外生活で奔放になる人も中にはいるのだろうけれど、それと狙われ襲われるのは全然違うことだ。そして被害に遭ってしまったら勇気を出して警察に届けてほしい。海外にいて、おとなしいとレッテルを貼られるのは怖いことだ。異国にいる以上、攻撃されたら反撃する覚悟を持って。

せっかく若くして異国を訪れる機会に恵まれた若い人たち、どうか楽しく有意義に過ごせますように。

著者/マイ@シドニー(「番外編 アジアから出戻って」連載)

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