長年に渡り“宿敵同士”として対峙してきたイスラエルとイラン。昨年10月のハマスによるイスラエルへの攻撃を発端としたガザ侵攻で中東情勢が不安定化する中、ついに両国が直接攻撃を行う事態となり、国際社会に緊張が走っています。全面戦争ともなれば日本への影響も避けられませんが、この先、どのような推移を辿るのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤さんが、米有力紙の報道を引く形でイスラエルのイラン本土攻撃に込められたシグナルを解説。さらに日本が両国の「繰り出す手」に学ぶべき点を考察しています。

※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:イスラエルとイランの不気味な対立

イスラエルとイランの不気味な対立

両国の間に緊張が走っています。

そもそもイスラエルとイランの対立は1979年のイラン革命からです。

イランは、革命でイスラム教強硬派が権力を掌握した後、イスラエルの排除を訴えてきました。

イスラエルを、イスラム教支配地域を違法に占拠する国と考えているのです。

当然、イスラエルはイランを自分たちの存在に対する脅威とみなし、イランは核兵器を得てはならないと力説してきました。

イスラエルはイランの中東における影響力拡大を恐れてきたのです。

さて、話は現在に戻ります。

そんな中で2023年10月におこったのがハマスのイスラエル攻撃とそれに対抗するイスラエルのガザ侵攻です。

今月2024年4月1日にイスラエル軍戦闘機が隣国シリアのダマスカスにあるイランの在外公館を攻撃しました。

イランの革命防衛隊がシリアで民兵組織ヒズボラの訓練と資金提供に関与している、そしてヒズボラはカザ地区のハマスを支援している、という理由です。

イランは4月14日未明、イスラエルに向けてドローンやミサイルを発射しました。

はじめてイランが自国領土内からイスラエルを直接に攻撃したのです。

全面戦争に発展する可能性があるのか?

国際社会は、イスラエルがどのように反撃をするのか、固唾をのんでみていました。

ニューヨークタイムズの4月19日記事抜粋をみましょう。

イスラエルのイラン攻撃:限定的な攻撃だが、潜在的に大きなシグナル

 

イスファハンの通常型軍事標的を攻撃するという決定が送ったシグナルは明確だった。

 

イスラエルは、イスファハンのウラン転換施設の防空網を突き破ることができることを示したのだ。

 

攻撃は限定的だが、イランの核開発に携わる科学者チームに対する長期的な影響は、かなりのものになる可能性がある。

 

より多くの核施設を地下深くに設置したり拡張したりする可能性がある。

【関連】イランがイスラエルを報復攻撃。なぜイスラエルはイラン大使館空爆という“挑発”に出たのか?

解説

イスラエルは、イランの核施設があるイスヌファンの通常軍事施設を限定的に攻撃したのです。

「その気になれば、核施設を直接に攻撃する事はいつでもできる」「カザ地区におけるヒズボラの活動をおとなしくさせろ」という警告です。

実際、イスラエルは1981年6月にイラクのタムーズに建設中だった原子力発電所を空爆破壊した事があります(バビロン作戦)。

イランに対するイスラエルの恫喝は十分に効果的に伝わったでしょう。

ここで日本も学ぶ点があります。

現実の国際社会においては、武力行使もコミュニケーションの一部であるという事です。

日本は我慢に我慢を重ねたうえで爆発する、という面があります。

太平洋戦争もそうでした。「我慢を重ねた交渉が決裂した→もはや戦争するしかない」という考え方です。

しかしながら、国際社会においては、コミュニケーション(交渉)、互いへの激しい非難、武力行使、戦争は連動しています。

それは達人のチェスの戦いのような要素があります。

戦っても、盤上はひっくり返さないという感じです。

歴史的に戦いに慣れているという事でしょう。

イスラエル、イランが繰り出す双方の手、口頭であれ武力であれ、そのような観点から見る必要があります。

【関連】専門家が最悪シナリオを憂慮する訳。ネタニヤフ首相が予定調和破り「核使用」決断も

 

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