オリンピックコーチングスタッフ・早川大輔に日本のスケートボード界の“今”を聞く

2020年東京オリンピックの正式種目に決定したスケートボード。すでに2年後に迫っているけど、まだまだわからない事でいっぱい!

そんな疑問を一挙に解決すべく、自身のブランドHIBRID Skateboardsの運営&ライダーをはじめ、SKATE HARD Inc.の代表取締役を務める傍ら、オリンピックコーチングスタッフとしても活躍する早川大輔さんにオリンピック開催からDamn Am日本初開催の経緯まで、内容盛りだくさんでインタビューを行いました!

これを読めばスケートボードの今が見えてくる。

東京五輪新種目・スケートボード

_まず、どこから“五輪でスケートボード”という声が上がったんでしょうか?

「IOC(国際オリンピック委員会)の決定なんだけど、誰が(スケートボードを取り入れようと)言い出したのかは謎です。僕はわからない。でもスケーターじゃないところから声が出たと思っていて、それに対してリアルなスケーター達が“ちょっと待てよ”と声をあげたんだけど、いろいろ調整が困難で…というのが現状です」

_ルールはどうなるんでしょう?

「ルールはWorld Skateのオフィシャルサイトに公表されていて、ストリートはストリートリーグスケートボーディング(以下SLS)とほぼ同じで、パークの方はバンズパークシリーズとほぼ同じです」

_各国何人づつ選出されるんでしょうか?代表選手の選考基準は?

「枠はストリート男女20人ずつ。パーク男女20人ずつ。でも、その枠をどこの国がどのくらいの割合でもらえて、ライダーをどう選考するのかというのがまだ明らかじゃなくて、オフィシャルでの発表もまだ出ていない状態です。

選考に関して噂されているのはワールドランキング。世界的な規模で行なわれている大会にポイントを付けていって、その獲得ポイントの累計でワールドランキングを出して、その上位から国ごとに入れていくという形がわりと濃厚」

_ワールドランキング方式だとしたらスノーボードに似てますね、長野五輪の際はスノーボードが裏で揉めましたが、五輪競技決定までの流れを見ていると、スケートも同じような道を辿るのではという感じもしてしまいますが?

「それを踏まえてのスケートボード委員会の設立などがあるんだけど、それは僕らのできる範囲での話であって、僕らよりもっとでかい組織が長野の時と同じような事をやっていたら、また問題になるのかなっていう雰囲気はある。

でも、それは本当にしたくないからみんな頭使っているんだけど、どうしても…難しいね。ぶっちゃけスノーボードもスケートボードもオリンピックでやるのなら “そういった部分”を理解してから競技にしてくれれば全然いいのにって思う」

スケートボードの方が純粋だと思う

_2020年以降でスケートボードは変わると思いますか?

「毎日、常にスケートボードは進化し変化していく。そのスタイル自体は変わらないですよね。それはオリンピックだろうがなんだろうが変わらない。オリンピック種目になったこと自体もスケートボードが変化している証拠だから」

_ストリートが厳しくなるのではという声もありますが?

「ストリートは元々やりづらいじゃん、そんなの心配してる奴って本当に滑ってんの?って思うし、滑ってるやつらはそんなの関係なく滑ってるはずだから、何言ってんの?って思う。他人に迷惑をかけない、他人の物を壊さないってのはスケートボード関係なく守るべき事」

_オリンピックはスケートシーン全体にどんな影響を与えると思いますか?

「沢山の人に考える機会を与えたね、あとビジネスになるって思う人たちが増えると思うけど…スケートボードは本来、金や政治とは遠いものだからね。

オリンピックってスポーツの祭典みたいな感じだけど、実際はお金と政治がすごく関わっていて、どっちの方が純粋かって言ったらスケートボードの方が純粋だと思う。そこら辺はオリンピックくらいじゃ変わらないんじゃないかな」

_今の日本のスケートシーンは世界から見て先進国?後進国?

「後進国だね。まだ全然足りないと思う。一昔前は10年15年の遅れがあるなんて言われてたけど、今だって10年くらいの遅れはあると思う。個人レベルで見たらユウト(堀米雄斗)とか海外で活躍出来てる人間がいるけど、全体のシーンで見ると考え方から全てが遅れてる。

そこは若いライダー達が頑張ってもなかなか埋まらないと思う。スケートボードを20年30年とかやってきて業界にどっぷりの大人達がさらに意識を変えていけば変わるはず。SNSを始め、メディアは海外のニュースをコピペでしょ?もっと日本の話題が増えるといいよね」

_オリンピックで注目すべきスケーターは?

「今注目されているユウトやダイスケ(池田大亮)とかケヤキ(池 慧野巨)や白井空良、もちろん他にもみんな応援してるんだけど、ここからの2年で全く知られていない若い子が、いきなり凄い事になる可能性がたくさんあって、実際にまだ頭角を現しきれてない12〜13歳位のヤバい子達がいるから、そいつらがどこまで上がってくるのかがすごく楽しみ。

アオリ(西村碧莉)はもちろんだけど、追いつこうと女の子たちもすごく頑張ってるよね」

_元々スケートボードのオリンピック競技化について賛成?反対?

「賛成でも反対でもないです。でも、スケートボードを知らない人たちに任せて世間の人に“スケートボードってこんなものかぁ”って思われてしまう事だけは嫌だ。

だったらそれをチャンスに変えて、何とか良い大会にしたいし、ここで一気に日本人のスケートボードを本当に世界レベルにする事が出来れば“オリンピックやってよかったじゃん!”って言えるようになると思ってる」

Damm Am日本初開催の舞台裏

※左からBrian Schaefer・早川大輔・Paul Zitzer

Photo by https://www.instagram.com/bartjones/

SKATE HARD Inc.

_日本人ライダーをDamn Amに挑戦させるようになった経緯について

「すごく単純な理由で、ユウトがAKI秋山氏のRootsからHIBRIDのライダーになった時に“何したい?”って聞いたら“アメリカでプロになりたい”っていうから、じゃあアメリカのTampa Amに出て名前売るのが手っ取り早いだろうってなったけど、いきなり出られるワケじゃないからどうしたらいいか調べたらDamn Amで10位以内に入ればTampa Amに出場できるってわかったから“じゃあ出るか!”って。それが5年前」

ギリギリまでやった

_5年でSLS優勝ですか

「そう、夢あるよね(笑)でも、それに近いところまでは行くと思ってた。今年ダメなら来年でもいいやみたいなのはなかったし、毎回“今しかない”と思ってやってたから当時は結構焦ってた。自分の至らなさのせいで家族にも迷惑かけたけど、一緒にユウト達を応援してくれて感謝しかない」

_Damn Am日本初開催の経緯を教えてください

「最初はユウトが中学生の時にお母さんとアメリカに行ってDamn Am出たんだけど50何位とかで予選落ちして、その次のDamn Amにコンテスト強かったダイスケとケヤキを含めた3人を連れて挑戦することになるんだけど、その時のDamn Amで3人がいい成績出して、その年のTampa Am行けることになって連れていったのがきっかけ。

そこで初めてBrian Schaefer(SPoT Tampaの創設者)とPaul Zitzer(Damn Amのボス)と会う事になるんだけど、俺はすげー緊張してるし、話したいこと全部伝えるほどの英語力もないから、朝子供達が起きる前に言いたいこと全部英文でA4くらいの紙に書いた手紙を渡したらその場でバーって読んでくれて“おー!まじか!”っていう雰囲気になって“Damn Am Japanやろうぜ”って言ってくれたの。それが4年半くらい前。

それからも毎年Damn AmやTampaに行ってるから、会えば毎回「Damn Amジャパンどう?」って言われて、メールも来るのよ。でも、ぶっちゃけ日本人のレベルとDamn Amやる施設と環境が追いついてないと思ってたから“ちょっと待ってくれ”って3回スルーした。

その間もずっとライダー達はDamn AmやTampa Amに挑戦してて、そんな彼らを見て下の子たちも“あのレベルに近づこう”と頑張ってアメリカを見るようになってきて、ライダーのレベルは上がりAJSAのコンテストでも皆凄いことやるようになった。

じゃあ、次は会場どうしようかって思ってたらオリンピックが決まった波で東静岡に良いパークが出来た(東静岡アート&スポーツ/ヒロバ)。そんな感じでどんどん駒が揃ってきたから“もう今年やれるよ”ってポールにメールしたら話が転がりだして始まったって感じ。

借金してでも今年やらなきゃだめだと思った

_苦労したエピソードはありますか?

「何もかもいつものDamn Amのレギュレーションでやる為に大きいスポンサー見つけて大きなお金を動かすために法人で会社も作ったんだけど、実際Damn AmやTampa Amに行ってポールやブライアンと話して雰囲気がわかっていて、駒が揃っているから出来ると思っているのが俺だけなわけ。

だからそれを“出来る!”と周りの人間に伝えるまでに凄い時間かかって…。スポンサー決めるのと同じくらい“出来る!”と伝えるのが大変だった。でも俺は自分で何百万か借金してでも絶対今年やらなきゃだめだと思っていて、その熱意を伝えるのが一番大変だったかな。

_最後にスケートボードを始める人達に伝えたいことはありますか?

「とにかく楽しいからおもいっきりやってくれ。あとは親御さんにかな。

子供が本当に楽しんでるかどうかを判断して、背中を押してあげるんだったら喜んで見てられるんだけど、やっぱり“オリンピックに出したいから”とか“スポンサーつけば物がもらえる”とか“お金が入る”とか、スケートボードが好きっていう理由以外で続けるようであれば、他に熱中出来る事をやらせてあげた方がいいって思う。

そんな理由でスケートボードやっても続かない、何よりつまらないと思う。夢見るのは自由だけど、そこは履き違えないでほしいな」

全てが本音で真実

スケートボードの方が純粋と語り、情熱でDamn Am日本開催を実現した早川さんの口から出てくる言葉は全てが本音であり真実だった。決してオリンピックに対して熱くなるのではなく、あくまで冷静に客観的に、そしてスケートへのリスペクトを忘れずに挑む早川大輔の今後に期待したい。

 

取材・文 小嶋 勝美

スケートボードを趣味としており、ライターとしてスケートボード関連の記事を執筆。

約10年間芸人として活動後、現在は放送作家としても活動中。

SLIDER(スライダー) Vol.35 (2018年06月30日発売)
Fujisan.co.jpより


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