【中学野球部の丸刈りを考える】指導者に問う「野球人口減少しても丸刈りにこだわりますか?」

中学の軟式野球部員数が年々減少傾向にある。中学体育連盟の統計によると

《軟式野球部新入部員数》

平成28年 25,870人

平成29年 24,599人

平成30年 23,809人

この人数は3年ともサッカー部より低い。野球は中学から硬式球を扱うクラブチームに所属する子もいるので競技人口としてはもう少し多いと思う。またそこに少子化の影響もあるだろうが、近年人気の卓球部は3年連続で約1,000人増えているので安閑とはしていられないはずだ。

実は高校野球部員も急激に減っていて、平成26年度まで毎年約6万人の一年生が入部していたが平成30年度は約5万人に落ち込んだ。野球競技人口の減少については、「公園などで野球ができる場所が減った」「スポーツが多様化した」などいくつか考えられるのだが、近年「丸刈りが嫌だ」という少年が増えたデータが出たという。

春夏合計8回の甲子園出場を誇る新潟明訓高校野球部は、今年4月から「丸刈りをやめて髪を伸ばす」ことを決めた。これまで頭髪は自由だったが丸刈りを辞めることで「髪が長くても野球ができる」ことをアピールする意図があるとのこと。

そこで、中学の野球部でも同じ丸刈り問題があるのではないかと思いリサーチしてみた。

丸刈りはただの精神論

まず、なぜ野球部といえば丸刈りなのか?

明確な正解はないが、“昔からの流れを引きずっているから”が適当だろう。昔の男子は丸刈りが普通だった。軍隊まがいの精神論や根性論の名残、伝統、そんな理不尽なイメージ操作と雰囲気もあって、今も「野球=丸刈り」が続いているのだろう。

気合とかチーム一体感の表現と唱える指導者もいる、メンタル面の効果は計り知れないところはあるが、はたしてそれを児童は納得しているのか? 校則範囲内の髪型の運動部だって根性も気合も一体感も出して戦っているはずなのに、野球はそれを丸刈りに頼らなければならないのか? 揚げ足取りかもしれないがそんなふうにも思ってしまう。今や丸刈りは古き悪しき伝統だろう。

 

あるアンケートで、野球指導者は「丸刈りを強制はしていない」と答えた人は多かったそうだ。しかしそこには裏がある。私も野球経験者だが、監督から「部員は丸刈り」と命令されたことはないけれど、逆に「強制じゃない」と言われたこともなかった。ところが「伸びてるから切ってこい」と言われたことはある。これが言い換えて丸刈り強制になっているのかもしれない。しかも、先輩が丸刈りなら後輩も丸刈りにせざるを得ない。結局、丸刈りは規則じゃなくても規則的なわけだ。

児童は長髪なので

今の丸刈り事情はどうなのだろう? リアルに見てみようと独自に足を運び、地元Z県の野球少年の頭髪について調べてみた。知り合いが学童野球チームの指導者なので話を聞いたり、いくつかの学校の練習を見学に行くなどした。全ては個人的なリサーチなので全国的な統計ではない。

小学生の学童野球:だいたい自由。丸刈りのチームもあるが少数。

中学野球部:ほぼ丸刈り。髪型自由の学校もあると聞いたが確認できず。

高校野球部:ほぼ丸刈り。髪型自由の学校はテレビ中継で数校見たこと有り。

学童野球の監督をする知人によると「丸刈りは子どもに強制したことはなく、うちのチームは数年前から殆ど居ないが丸刈りの子は自主的にやっていた。同地区に全員丸刈りのチームもあるけど昔からの風潮だろう」とのこと。

ということは少年野球で丸刈りはかなり珍しいわけだ。

そして一番気になったのがこのあとである。

「中学の野球部が丸刈りなので、野球は好きだけど入りたくないという子は多いという話しはよく聞く」。

ここに最大のハードルがあるのではないだろうか? こういう声があるということは、やはり中学野球部は丸刈りが主流という事情が伺える。どうやら年配の指導者ほど精神論が好きなのか丸刈りチームが多く、某中学のベテラン監督は長い間その信念を曲げないが今や部員も少なくチームは弱いという。

子どもほど“はじめての丸刈り”には抵抗があるはず。丸刈り経験のない子どもにとって長い髪がない人生は初めてになるので、似合うかどうか、ダサくないか、とバッドイメージが先に立つに違いない。そうなると野球のために3年も続く丸刈り生活を決断するのはやっぱり嫌かもしれない。他のスポーツ部が頭髪自由ならなおさらだ。

 

地域で脱坊主!

危機感をいち早く察し動いたのは野球機関ではなく中学校体育連盟(中体連)の、しかも地方からだった。埼玉県川口市の中体連は2年前、正式に「強制的な丸刈りを禁止する」規則を作り、更に「野球人口増加プロジェクト」を発足させて取り組んでいる。きっかけはある中学で野球部員が足りず廃部になったことだった。

更に今年3月、高知県中体連・軟式野球専門部でも「丸刈りは暗黙の了解だが、それが入部の妨げになっている」として“脱・坊主”を宣言した。

また、中体連からの通達はなくとも、長野県のとある中学でも頭髪自由を促したと聞いた。ニュースにならないだけでこの動きは少しずつ全国に広がっているのではないだろうか。 

頭髪自由で強くする

おそらく丸刈りの掟はすぐには減らないだろう。だから丸刈りを逆に利用する手もある。頭髪自由をアピールしてもよいのではないか。

進学の際「あそこは強豪校だけど丸刈り、この学校は丸刈りの強制はしていない」と聞いたら後者を選択する児童は少なくないと思う。頭髪自由をきっかけに有望選手が集まり強くなる学校が出てくるかもしれない。そして大会で優勝でもすれば「丸刈りじゃなくても勝てる」と、イメージも変わるに違いない。

頭髪は自由を明言してあげて

断っておくが、決して「丸刈りは完全に悪だ! 丸刈りを禁止にしろ!」と言いたいのではない。

丸刈りは涼しい、バリカンがあれば散髪代がかからない、使うシャンプーの量が少ない、ドライヤーも使わない、好青年に見られやすい等、メリットだっていっぱいある。「野球小僧といえば坊主頭だ!」と誇りを持って丸刈りにしている児童だっているはずだ。

だから、せめて「頭髪は自由」(※校則に従って)にしてほしい。そしてこれを顧問の口から部員に伝えてほしいのだ。強制しないことを言わないと児童は怖くて躊躇する場合がある。

そして逆に丸刈りを禁止にしてもいけない。禁止にまですると、もし高校の野球部が丸刈り強制だとしたら拒絶感が出てしまう。

とにかく丸刈り“強制”は野球発展のためにならない。

指導者さんに問いたい。丸刈りが野球人口を減らす原因になっています。それでも選手に頭髪の自由を明言しませんか? 野球の未来が不安になりませんか?

そしてあなたも野球少年時代を振り返ってみて下さい、丸刈りが嫌じゃなかったですか? 野球部活動が終了したあと髪を伸ばしませんでしたか? 

週刊ベースボール 2019年1/28号 (2019年01月16日発売)
Fujisan.co.jpより


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